第75話 一緒に食べよ?
戦艦『朱雀』の中央デッキ上面に、GV3Xを乗せた空中移送機が着陸した。
中央デッキ下部の格納庫に機体を降ろす。コクピットから出てくる御堂と入鹿を、整備班の興田大尉が出迎えてくれた。
「あれ、嬢ちゃんも一緒か?」
御堂が来るとは思っていなかったようだ。少し困ったような顔をしながら、保温バッグに入った包みを入鹿に手渡した。
「食堂の特別日特製『うな重弁当』は、もう完売でな。坊ちゃんが来るのはわかってたんで、一個だけ確保しておいたんだが……」
完売したため、食堂も今日は早じまいしてしまったと言う。御堂は不満で、頬を膨らませる。
入鹿は興田大尉に礼を言い、受け取った包みは御堂に渡した。
「貴女が食べて下さい。僕は相楽行政官のところへ行ってきます」
「半分ずつ、一緒に食べようよ」
御堂の提案を聞こえないフリをして、入鹿は一人で司令官室へ向かった。
月夜見は戦艦『朱雀』を留守にして、不死鳥京にいる。残った刀自古の役目は、ルージュピーク演習場の現場の動向を月夜見へ報告すること、そして入鹿と御堂の監視あるいは監理である。
同盟議会での『ルージュピーク侵攻部隊の指揮権を第3戦団に委ねる』議決を、入鹿は刀自古から知らされた。
第2戦団では、ハッキングを警戒して敵勢力が設置した通信インフラへの接続は禁じられている。そのためナーガオウ州で放送しているニュースも視ていない。
工廠施設で行われたデモ隊の抗議活動は、中央管制塔や南管制塔では行われなかったと言う。
「上級将校のいない小部隊への揺さぶりだったわけですね」
ある時点で、デモ隊と報道機関が急に引き上げた理由もわかった。
「太后様がお怒りになりまして……同盟議会の議長は、安全保障局に逮捕されました」
帝の私兵である近衛軍を制限する権限は議会にはない。不当な決議をする議長が逮捕されるのは当然と言える。
「議長の逮捕に怖じ気づく連中なら明日は来ませんね」
そう言いながらも、黒幕が直接動くのを警戒しなければならない。相当に急いで成果を出そうとするはずだ。
入鹿が夕食を取り損ねたのを知ると、刀自古は冷蔵庫にある食材で調理を始めた。
「明日の朝食用の食材しかありませんが、どうぞ」
スクランブルエッグとベーコン、それにサラダを焼きたてのトーストに添えて入鹿の前に置く。スープは煮込む時間がないのでインスタントを用意した。
「お手数をおかけします」
刀自古に礼を言い、用意された食事を食べ始めたとき司令官室の扉が乱暴に開かれた。御堂だった。
「遅い!何時までダベってるのよ!」




