第69話 施設攻防戦、犠牲
ジークフリード型重甲機兵の腰部には、鼠径部分の素体間接構造を保護する3枚のスカート型草摺装甲が取り付けられている。
GV3Xの剣は、草摺装甲を貫いて右鼠径部上の腰部フレームを砕いていた。
「まず、一つ!」
左脚が巨体を支えられなくなった機体は、糸が切れた操り人形のような挙動で倒れ込んだ。17メートルの巨体の重量は100トンだと言われている。発着路のアスファルトを通して、GV3Xのコクピットにも振動が伝わった。
象徴機であるA級ジークフリードの撃破……山本機と新藤機が交戦していたB級機体も動きを止めた。
GV3Xのバックパックから、敵側へ投降を勧告する信号弾が打ち上げられた。
(お願い、これで終わりにして!)
御堂の闘争心や昂揚は、もう静まっていた。できるなら、これ以上『誰かが死ぬかも知れない』戦いをしたくない……そう思っていた。
数秒の静寂。
A級ジークフリードの胸部装甲が展開して、コクピット部分が露出する。
(……良かった)
御堂は、パイロットが投降するのだと思った。しかし、A級ジークフリードの右腕が持ち上がり、ロングソードの剣先を再びGV3Xへ向けてきた。
(え?)
しまった! 不意打ちだ……御堂は焦った。
(ヤバ……動けない!)
御堂の意思と関係なく……GV3Xは、右手で打刀を引き抜いた。そして、左手がA級ジークフリードのコクピットを抑え込む。
右手の打刀が、A級ジークフリードのコクピットへ突き立てられた。
A級ジークフリードもGV3Xと同じ複座型だ。あんな形で剣を突き立てれば、CユニットもSユニットもパイロットは無事ではすまないだろう。
……カン……カン……。
不規則な冷却音を響かせながら、安全装置の働きで強制的にA級ジークフリードのZCF機関が停止された。
Cユニットの計器から灯が落ちていることに御堂はやっと気付いた。
「玲、あなたがやったのね」
A級ジークフリードの不意打ちを予測した入鹿は、Cユニットの神経接続を切断した。機体の制御は、御堂から入鹿に移っていたのである。
「貴女にはできないでしょう」
入鹿の返事は短い。御堂には、その感情が読み取れなかった。
……ありがとう、と言うべきか?
……殺さなくても良かったのに、と言うべきか?
御堂には、わからなかった。
A級ジークフリードの不意打ちは失敗したが、山本機と新藤機の注意を引きつけることには成功した。
そして、入鹿がコクピットを貫くまでの十数秒の時間を稼いだのである。その時間で、2機のB級機体は戦場から脱出できた。




