第62話 施設攻防戦、始まる
ルージュピーク演習場の管制施設は、演習場を「歪んだ五角形」で囲む位置に設置されている。東端に位置する中央管制塔の他に、北側管制塔、南側管制塔、西側管制塔の3つの管制塔がある。
そして北東の、中央管制棟と北側管制塔の間にあるのが、重甲機兵を空中輸送する空中移送機の発着路を備えた工廠施設である。
第2戦団は、中央管制塔と南側管制塔そして工廠施設を制圧している。その、制圧下にある工廠施設に、第2戦団のB級ジークフリード3機が待機していた。
「暇だーーーー!」
空中移送機発着路のアスファルトの上で、大の字になって寝っ転がっている御堂は、思い切り大声を上げた。
200メートル離れた所に立っていたB級GV4型式[098]機が、両手を横に広げて合図を送ってきた。
「異常は無しだな。しかし、もう少し緊張と配慮をしてくれないか? 御堂准尉」
そう言ったのは、御堂の脇に座っているB級GV4型式[079]機のパイロットである山本中尉だ。GV3Xから降りて、いつものようにストレッチで身体を伸ばした後で、火照った体温を下げるために胸元のファスナーを降ろしている御堂に向けた言葉である。
「あ、申し訳ありません。中尉」
上半身を起こしてファスナーを首まで上げる。それから立ち上がろうとしたが、それは山本中尉が制した。
「休んでいるのは構わんよ。複座型のコクピットは窮屈だから疲れただろう」
GV4型式は単座式だが、GV3型式はSユニット操縦者とCユニット操縦者の2名で乗り込む複座式である。その分、コクピットは狭い。
「ただ、目のやり場に困らないようにしておいてくれ」
「はい」
素直に返事をする御堂。人の心が欠けている入鹿と行動を共にしていたことで、自身の羞恥心まで歪んでしまっていたことを反省する。
今、入鹿はここにはいない。入鹿は、工兵部隊と共に制圧している工廠施設の中に入ったままである。
3機のB級機体は、この工廠施設を奪還しようとするであろう敵勢力を警戒している。とは言え、Sユニット操縦者がいないGV3Xはまともには動けないので、見張り役も098機と079機が交代で行っている。
本当に、御堂には仕事がない状態だった。
「さて。見張り交代の時間だから、私が行く。御堂准尉、非常時に備えておくのも仕事だぞ」
笑いながら山本中尉は、079機へ乗り込んでいった。
079機が立ち上がり、見張り役の098機と両手を動かして合図を交わす。079機が発着路のアスファルトの端まで移動して、代わりに098機がGV3Xの隣に戻ってきた。




