第56話 御堂の独断
戦艦『朱雀』から出撃したGV3Xは、先行していた2機のGV4と合流して、前時代の廃墟が残る領域の探索へ向かう。
敵機を誘い出すために、囮役としてGV3X1機だけを先行させ、残る2機には領域から少し外れた地点で待機した。
15分後、入鹿が不自然な気流の流れに気付く。
「10時の方向、B級ジークリード1機。距離およそ3000メートル」
入鹿の報告に、御堂はGV3Xの機械眼球を向けた。
ナーガオウ州軍のGV4機の駆動音が、戦闘モードに切り替わる。
GV3Xは、州軍機を正面に捉えた。州軍機は、盾を装備せずに両手でロングソードを握っている。ロングソードの剣先が、GV3Xに向けられた。
投降を呼びかける信号弾に、州軍機は反応しない。
「投降の意思なし、と判断します。撃破して下さい」
GV3Xは右脚を引き、打刀を脇から後方へ引く。
無防備に見える左肩が、州軍機に向けられる。しかし、州軍機は小刻みに両肩を震わせるだけで打ち込んで来なかった。
(誘いには乗らないか……意外と手練れかも?)
Cユニットの御堂は、眼前の機体の挙動に集中する。
「……これ!」
GV3Xは、打刀を投げ捨てた。そして、素手となった両腕を州軍機に見せつける。
「駄目です。敵機が武器を捨てない以上、撃破すべきです」
「お願い。今だけ……あたしの自由にさせて」
御堂の、泣き出しそうな声が入鹿のヘッドセットに届く。
「コクピット・ハッチを開いて頂戴。もし、州軍機に不審な動きがあったらSユニットは爆破していいから。玲だけは逃げて」
御堂は、GV3Xを州軍機にゆっくりと近づける。そして、もう一度懇願した。
「お願い……玲」
GV3Xの胸部装甲が展開、コクピットが露出される。
(ありがとう、玲!)
州軍機のロングソードを握る両手に、GV3Xの両手を重ねる。そして、御堂はSユニットから立ち上がって生身の姿を晒して見せた。
州軍機の震えが止まる。少しの間をおいて、胸部装甲が開いてコクピットから州軍兵が顔を見せた。
操縦者と神経接続で繋がる重甲機兵は、操縦者がパニック状態に陥った場合には同調不良を起こす。武器を捨てたくとも指さえまともに動かない。
機体が小刻みに痙攣するように震える動きは、操縦者に起因する同調不良が生じた際の特徴である。
生身の御堂を見て、恐怖でパニック状態だった州軍兵はやっと落ち着きを取り戻せた。御堂がゆっくり頷く。
州軍兵は、コクピットを出て地表に降りる。
御堂はそれを確認し、後方で待機する僚機に向けて、信号弾が打ち上げた。




