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赤塵のサンダーバード -機兵戦記-  作者: 星羽昴
第四章

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第55話 軍規違反

「あたしが奢ったホットココアを捨てたじゃない!」


「わかりました。弁償します」


「そーゆー問題じゃなーーーい!」


 御堂の声に目眩を感じて、入鹿はSユニットで眼を閉じた。



 3軍合同演習中のイルドラ軍による近衛軍への襲撃事件。ナーガオウ州軍は、それを黙認する形でイルドラ軍に加担した。

 ナーガオウ州議会は帝国への恭順を示し、3軍合同演習に関与した者の引き渡しを約束する。しかし、州軍の一部が州議会に反発してルージュピーク演習場を占拠してしまう。

 ナーガオウ州の内乱あるいは内部分裂である。ナーガオウ州議会も帝国に対して「軍部を説得し、しかるべく対処する」との申し入れを行った。

 しかし……。

 第2戦団司令官の月夜見は、ナーガオウ州議会を無視して軍事介入を強行した。ルージュピーク演習場へ第2戦団を投入したのである。

 速やかに、ルージュピーク演習場に潜伏する敵対戦力を殲滅する……それが入鹿たちに課せられた任務のはずなのだ。



「あたしね、あの事件の後ずっと軟禁されてたの。入鹿准尉暗殺未遂の共犯の容疑で。安全保障局に!」


 あの事件とは、3軍合同演習フラッグ戦での襲撃事件のこと。入鹿機(GV4)の自爆に巻き込まれて意識不明となっていた日数も加えれば、2週間程度を個室病室で拘束されていた。


「あなたがGV3X(サンダーバード)を前哨基地へ運び込んだ日の朝に、やっと解放されたの。安全保障局が無実を認めてくれたのよ。わかった?」


 同意を求められたが、敢えて入鹿は返事をしない。


「だから……あたしは、あなたに渡すホットココアに毒なんて入れないの!それを、あなたは捨てたのよ。傷つくわよ。謝りなさいよ!」


「貴女は、謝ることはないのですか?」


「何で、わたしが!」


「イルドラ兵の襲撃を『朱雀』へ報告義務しなかったのは、軍規違反です」


「……」


「軍規を守れない人間として、貴女が信用を失っただけです。自分の無責任を僕のせいにされるのは迷惑です」


「……ごめん」


 数分後。GV3X(サンダーバード)の側で待機していた興田主任に、接触通信回線で御堂の声が届いた。


「Cユニット神経接続完了しました。バッテリー、お願いします」


 御堂の声は、元気のない弱々しいものだった。


「お、おう。大丈夫か?」


「はい、大丈夫です」


 仲直りは失敗したらしい。入鹿の方が大人の対応で、御堂の機嫌を取るかと思っていたが違ったようだ。

 仕方がない……バッテリー接続の回路をオンにするしかない。

 バッテリー接続のチェック灯がレッドからグリーンに変わった。

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