第54話 監禁?
中央デッキから通路に出たところで、すぐにエリカは入鹿を見つけた。入鹿の側には、月夜見の秘書官が居て、何かを話していた様子だった。
「入鹿准尉、GV3Xのバッテリーの交換が完了しました!」
「わかりました。直ぐに行きます」
踵を返す入鹿に、深めに頭を下げた秘書官に違和感を憶えつつも……エリカは入鹿の直ぐ後ろについて歩いた。
「サクヤって良くも悪くも馬鹿ですよね」
「はい?」
唐突すぎる問いかけに、入鹿も戸惑う。
「馬鹿だから色々と間違えて、迷惑かけちゃうんです」
エリカは入鹿の戸惑いも無視して言葉だけを続けた。
「小細工なんてできないくらい本物の馬鹿なんです。それだけでも、信じてあげて下さい。お願いします」
エリカは立ち止まって、深々と頭を下げた。入鹿は視界の隅で、それに気付いたが中央デッキへ移動することを優先する。
中央デッキの台座に腰掛けたGV3Xは、上半身を前屈みにする体勢をしていた。ワイヤーで胸部コクピットのSユニットへ入った入鹿は、各部のチェック灯を確認する。
「オールグリーン」
コクピット部を胸部奥の定位置に固定して、胸部装甲を閉鎖・密封した。
するとバッテリーの接続がレッド表示に切り替わった。
「バッテリー接続部に異常が出ました。確認して下さい」
機体の外部と繋がる通信回線を通して異常を伝える。
「はい。直ぐ確認しますので、そのままで待ってて下さいね」
「そっちからもチェック頼むぞ。変化があったら連絡してくれ」
エリカと興田主任の声だった。
やられた……と、入鹿は察した。入鹿と御堂とで話がつくまで、整備班が結託して閉じ込めるつもりだ。アイドリング状態の駆動音と微かな振動の中で、入鹿も『どうしたものか』と思案する。
「……ねえ、玲」
ヘッドセットから御堂の声が聞こえた。いつになく神妙な感じである。御堂にすれば、意を決しての呼びかけだった。
「貴女は……僕の想像以上に、他の方々から愛されているんですね」
「え?」
御堂に届いた入鹿の声は、ため息混じりでウンザリ感に溢れていた。
「悪意がなかったことを確信する根拠が『馬鹿だから』と言うのは……貴女の天賦の才だと思います。羨ましいとは思いませんが」
「あーのーねー」
最初の神妙さはカチンときた感情に吹き飛ばされて、本性の物言いに戻っていた。
「言い方よ、言い方!あなた、仲直りする気あるの?」
「仲直りする以前に、喧嘩をしてません」
「……!」
確かにそうだ。御堂が落ち込んでいるだけで、入鹿は変わらない。猜疑心が強いのも常日頃からのことだ。




