第53話 確執
CユニットとSユニットの信頼と連携が一番大事。
普段の御堂なら、脊椎反射のごとく入鹿を追いかけるはずだ。しかし、今の御堂はモジモジと躊躇って動かない。興田主任とエリカは、何事かを察した。
GV3Xが、第2戦団に運び込まれてから2週間程度の時間をかけて機体とパイロットの調整が行われた。そして調整が完了して、この戦場に投入されることになる。
GV3Xでの初陣の直前、御堂は入鹿に声をかけた。
戦艦『朱雀』の中央デッキに繋がる通路の休憩スペース。自販機のホットココアを入鹿に渡して、何気ない会話をしたつもりだった。
出撃が迫り、会話を中断して中央デッキに向かう。入鹿は、口を付けなかったホットココアを飲み残し廃棄コーナーに流した。
「え!もったいない。せっかく奢ってあげたのにィー」
何気ない台詞……少し悪戯っぽく言ったつもりだった。
「毒が入っているかも知れませんから」
「何よ、それ。酷いなあ」
(ちょっと、冗談にしても質が悪いなあ)
「あたしが、あなたを殺そうとしてるみたいじゃないの」
「しているでしょう」
「はああ!そんなはずないでしょう。あたしは、あなたを守るって約束したじゃないの」
伸ばした右手が入鹿の胸座を掴む。その右手を、入鹿は乱暴に払いのけた。
「……痛い!」
「中央デッキに行きますよ」
先に歩き出す入鹿を、慌てて追いかける。
「あのね、二人で一緒にGV3Xに乗るんだよ。相手の機嫌損ねないようにしようよ、お互いにさ」
「問題ありません。SユニットにはCユニットを爆破する権限もありますから。邪魔なら排除します」
その時、やっと御堂は気付いた。入鹿の言葉の一言一言が本気であることに。
御堂が、安全保障局に軟禁されていた容疑は「入鹿准尉の暗殺未遂」だったのを思い出した。
(まさか、玲はそれを信じてる?)
刀自古行政官の顔が、御堂の脳裏に浮かんだ。
(玲だって、あたしを殺すつもりでGV4を自爆させたんじゃないの!)
「冗談じゃないわよ。GS4もろとも爆破させられたのを生き残ったのに……」
「大丈夫です。次は失敗しません」
(そう言う問題じゃないんだよ……)
それから、御堂は入鹿に声を掛けられないでいる。
軍務に関すること、戦闘に関することは普通に入鹿は話しかけてくる。それが御堂をホッとさせると同時に苛つかせていた。
「GV3Xのバッテリー交換が終わったぞ。エリカ、坊ちゃんを呼んでこい。嬢ちゃんは、先にCユニットに入って待ってな」
興田主任の指示に従って、エリカは入鹿のいるであろう方向に走り出した。




