第51話 型式名GV3X式
ナーガオウ州軍ルージュピーク演習場。数ヶ月前に3軍合同演習による平和的行事の場所は、今は本物の戦場になっていた。
ナーガオウ州軍に所属したB級ジークフリードは、凧型盾に機体を隠しながら十字型のロングソードを握り直した。
正面で対峙するのは、帝国近衛軍のB級ジークフリードである。
肩部装甲が張り出した逆三角形のシルエットは確かにジークフリード型重甲機兵のはずだが、初めて見る型式だった。少し前に発表されたGS4とも違う。
『型式名GV3X式』
管制AIがデータベースを検索した結果、およそ50年前に組み上げられた実験用の機体だと記録されていた。
こんな骨董品が、何で……?
ナーガオウ州軍機のパイロットは、疑問に感じていた。
アンバーホワイトの胸部装甲には、第2戦団の戦団章が描かれている。ジークフリード型B級重甲機兵GV3X型式。通称、雷鳥。
「ナーガオウ州軍B級ジークフリード、武装はロングソードと凧型楯!」
目視された状況を、声で記録させる御堂。
「降伏の意思はないようです。撃破して下さい」
入鹿の指示で、御堂はGV3X機に打刀を抜かせた。
GV3X機の機体から光粒子が流れ出す。機体に発生する熱を光に変換して放出しているのだ。この光廃熱機構により、素体の熱膨張による物理的抵抗と電導効率低下が大きく抑制される。
ナーガオウ州軍機は、眼前のGV3X機が剣を抜くのを見るや、一機に距離を詰めてきた。左腕に装着した凧型楯をGV3X機に叩き付けようとする。
GV3X機の腰部と脚部の推進機関が点火、即座に一歩踏み込んだ。一歩早く踏み込まれたことで、逆にナーガオウ州軍機の凧型楯は呆気なく空振りしてしまった。
(スゴい即応性!)
苦し紛れに突き出したロングソードも、GV3X機は打刀の柄部で軽く受け流してしまう。慌てて距離を取ろうとするナーガオウ州軍機が背面の主推進機関を点火した。
「遅いんだよ!」
御堂の絶叫のような声がコクピットに響く。刹那、GV3X機の右手が光粒子を撒きながら片手突きで、後退しようとするナーガオウ州軍機の喉元へ打刀を突き刺した。
重甲機兵の感覚機構の情報伝達は、この喉元部分に集中する。この部位が断線してしまうと機体の80パーセントのセンサーが機能しなくなる。
バランサーの中枢機構がある腰部と共に、重甲機兵の急所の一つだった。
ナーガオウ州軍機は膝をつき、投降を示す信号弾を打ち上げた。
GV3X機の後方にいた近衛軍のB級GV4が進み出て、パイロットの投降を受け入れる処置に入った。




