第48話 反帝派の目論み
「ところで」
地雷女論争に厭いた刀自古が、話題を切り替える。
「一樹少佐の処遇ですが、いかが致しましょうか?」
新型機が出撃する度に、不可解な襲撃が続いた。月夜見も、それを偶然とは思っていない。まして、射流鹿が二度にわたり危険に晒されたことを容赦するつもりはない。
「敢えて安全保障局へ引き渡したのだ。薬物でも脳手術でも、吸い上げられる情報は全て吸い上げろ」
射流鹿は、第一帝位継承候補である。その暗殺未遂となれば、安全保障局は尋問に関しても手段は選ばないはずだ。
「イルドラ軍は、GV4のパイロットを大兄様と特定して暗殺を謀ったのでしょうか?」
近衛軍においても「入鹿玲」の真の素性を知るのは極めて限られる。
士官候補生の教官であった一樹少佐も知らないはずだ。もし、一樹少佐にそれが漏れていたなら相当に根深い問題と言えた。
「反帝派勢力が裏にいる可能性か……」
水蛭鹿帝により、帝国の中枢から反帝派勢力は駆逐された。
しかし、その残党は未だ各地に潜伏している。水蛭鹿帝に直接手が出せない反帝派は、帝位の継承者である射流鹿を標的にしている。
「水蛭鹿帝の子は射流鹿だけだ。帝位継承が明確な反面、射流鹿が亡き者になれば継承問題で混乱する。その混乱に乗じて勢力を盛り返したいと考えているのだろうな」
射流鹿に偽装の戸籍を与え、士官大学と第2戦団で経験を積ませながら、反帝派の追跡から隠してきたつもりだった。
「そろそろ、潮時と言うことか」
白い軍服に身を包み、刀自古の煎れた紅茶を手にしている射流鹿を見た。
「僕は、なすべきことを果たすだけです」
月夜見の視線に、射流鹿は静かに答えた。
「では、妾は前哨基地に戻ります」
戦艦『胡蝶』の任務は、帝の使節をラインゴルド領へ送り届けることである。刀自古は、安全保障局の行政官として、所属不明機襲撃と合同演習襲撃の事後処理のために前哨基地に残ることになっていた。
刀自古が戦艦『胡蝶』を降りて間もなく、客室が重苦しい振動に包まれる。
「お客様でいるのは楽でいい。勝手に戦艦が発進してくれる」
戦艦『胡蝶』がラインゴルド領へ向けて移動を始めた。艦体が、動力炉と共鳴を起こさないように設計されているため騒音はあるが、居住性は不快ではない。
刀自古の煎れていった紅茶をポットから注ぎ足してティーカップを口元へ運んだ。普段ならば主艦橋でチューブ式の水分で口の中を濡らすだけだ。
くつろいでいる月夜見とは逆に、射流鹿の顔には少し苛立ちの色がある。
「御堂准尉の処分は、どうなさるおつもりですか?」




