第45話 無能な味方?
翌日、再び尋問室で御堂は刀自古行政官と向かい合っていた。
「あたしは、入鹿准尉との面会を希望したはずです」
「貴女の身柄は、安全保障局の監視下にあります。面会の許可・不許可も安全保障局が判断します」
個室病室に軟禁された御堂は、クリステア軍医を通して「入鹿准尉と話をしたい」との要望を伝えてもらった。呼び出しに応じた時には、入鹿との面会のつもりで尋問室へ来たのである。
「じゃあ、許可して下さい」
「不許可です」
「どうして?」
「貴女の容疑は、入鹿准尉の暗殺未遂です。会わせられると思いますか?」
数分の沈黙。先に口を開いたの刀自古だった。
「御堂咲耶。座間領の生まれで6歳上の姉が一人。領国の公立学校の教員を務めてらっしゃるのね。ご両親も健在で、お父上は公務員」
「あたしの家族を調べたんですか?」
「全ての近衛軍兵士の身元調査は、安全保障局が行ってます。知っているのは当然です」
「……」
「座間領は、首都である不死鳥京から東方ね」
御堂は小さく頷いた。赤椿の変で帝を誅殺した反帝派は、主に西方の外国勢力を呼び込んだ。東方にあった座間領は、混乱期にあっても外国勢力の侵食を受けずに比較的平穏だった。
「新型機のパイロットに抜擢されてから、出撃の度に襲撃を受けて、その都度に致命的な判断ミスがありました。内通を疑われるのは当然ではありませんか?」
「あたしは帝国を裏切るようなことはしてません」
「それなら、同じミスを繰り返す無能者と言うことになります」
「あたしは、馬鹿かも知れないけど……故国を裏切る卑怯者じゃありません!」
「前時代から言われていますよね。『真に怖れるべきは優秀な敵ではない。無能な味方である』と」
御堂は反論できずに、肩をすくめて口ごもる。眸を伏せて唇を噛む御堂を、刀自古は冷ややかに見つめていたが、小さくため息をつく。
「馬鹿でも鋏でも構いませんが、使われ方くらい気にしなさい。これ以上の不始末は、月夜見様でも庇いきれませんよ」
「え?」
刀自古は、そそくさと立ち上がった。それから警備兵に、御堂を病室へ戻すよう指示を出して足早に部屋を出ようとする。
「待って下さい! あたし、いつまで閉じ込められてるんですか?」
尋問室から身体半分くらい既に出ていた刀自古は、面倒くさそうに振り返った。
「入鹿准尉暗殺の容疑がはれるまです。逆に有罪が確定しても、処刑のために出して差し上げます」
「やってません!」
「じゃあ、頭を冷やしておきなさい」
-第二章 終わり-




