第43話 誤解
尋問室は広くはない。ビジネスホテルのシングル室程度だろうか。
出入口は端に1ヶ所で、そこには2名の武装した警備兵が立っている。テーブルもなく、部屋の中央に2脚の椅子だけが置かれて、御堂と刀自古が腰掛けている。
御堂は特に拘束されてはいない。少なくとも、本格的な嫌疑をかけられているわけではないんだと思った。
御堂は、思い切って申し出ることにした。
「あの……訂正して下さい」
「何を?」
「あたしが、入鹿准尉を殺そうとした……とか」
刀自古行政官は、また双眸を細める。今度は不快感とは別の、何かに興味を抱いたようだった。
「3軍合同演習と言う3カ国間の公的行事を利用して、イルドラ軍は軍事行動を起こしました。これは星間協定でも禁止される卑劣な戦闘行為です」
「でも。あれは、ジュエン大尉の個人的な意趣返しで……」
「貴女は、ジュエン大尉と個人的に連絡をとっていたんですね?」
「……違います!」
3カ国間の公的行事を成功させることは、国際的信用を向上させるかも知れない。しかし、水蛭鹿帝が即位した帝国は『受けた屈辱は剣によって返す』を不文の憲章としている。
「3カ国間の公式行事だから成功させなくてならない。だから、裏で不都合なことが行われても3カ国間で隠蔽に協力すべきだ……と、言うのですか?」
「……」
「貴女が、どんな正義感をお持ちなのかは詮索しません。けれど、結果として貴女は卑劣な戦闘行為に加担しました。そして、入鹿准尉を見捨てたんです」
そう言う見方もある……御堂は言葉に飲み込んだ。
「明らかに星間協定に違反する軍事行動に、貴女は『朱雀』への報告義務を果たしませんでした。それ故、入鹿准尉は『御堂准尉はイルドラ軍と内通している』と判断しました」
御堂の肩がピクリと動いた。
「イルドラ軍への内通者が新型機のパイロットであるのは、極めて危険です。入鹿准尉は、自機の自爆に新型機を巻き込むことで機密漏洩を最小に留める手段を取りました」
そうだ……目の前が真っ白になったんだっけ。
(あれは……玲が、あたしを殺そうとしたんだ)
御堂の頬を涙が流れた。
「あ、あたしは……ずっと玲を呼び続けてました。本当に心配して……」
「入鹿准尉の生存が確認されたら、トドメを刺すためではないのですか?」
今度は、御堂が怒気を込めた視線を刀自古行政官に向けた。刀自古行政官も、涙が流れるままにしている御堂の顔を見つめる。
「御堂准尉を病室へ連れて行きなさい」
刀自古行政官は、審問室を出て行った。




