第42話 相楽刀自古
呼び出しがあった。
警備兵に連行された尋問室には、月夜見の秘書を務めるあの女性が待っていた。
「改めて自己紹介しますね。妾は相楽刀自古と申します。安全保障局より第2戦団に派遣されている行政官です」
安全保障局……そう聞いて背筋が冷たくなった。帝国内の秘密警察で、法に縛られない存在。もし機嫌を損ねたら、その場で死刑判決を下されるなんて噂も流れている。
「貴女の官姓名を名乗って下さい」
知っているくせに……と思いつつも、従うしかない。
「帝国士官大学校4回生の御堂咲耶。第2戦団に仮配属され、准尉としてB級重甲騎兵のパイロットを命じられています」
「ルージュピーク演習場で行われた合同演習2日目。何がありました? 貴女の視点で構いませんので教えて下さい」
「何が……って、あたしの方が教えて欲しいくらいです!」
反射的に口から出てしまった言葉に、刀自古行政官は不快感を顔に浮かべた。細めた双眸にはゾッとする威圧感があった。
「フラッグ戦が開始されて、イルドラ軍の181機と交戦して撃破判定させました。しかし、181機は撃破申請せずに入鹿機を実剣で攻撃したんです」
「信号弾は打ち上げなかったのですか?」
「入鹿機は競技領域外から砲撃を受けて、射出装置のあるバックパックを破壊されました」
「貴女は?」
「損傷した入鹿機と接触通信を試みましたが、入鹿機からの応答はありませんでした。接触通信で呼び続けましたが、間もなく入鹿准尉はコクピットから脱出したと思います。その後のあたしには、記憶がありません」
刀自古行政官の顔に、さっきよりも深い不快感が浮かんだ。
「何故、貴女は信号弾を打ち上げなかったのですか?」
「前夜の意趣返し……」
一瞬言葉に詰まる。前夜の中央デッキでのやり取りを伝えたら、一樹教官の処遇に差し支えるかも知れない……それが気になってしまった。
「前夜の事件は、既に安全保障局は把握しています」
「……はい」
刀自古行政官の言葉に納得したのではない。その威圧感に、御堂は気圧された。
「悪質な意趣返しとは思いましたが、合同演習を無事に終わらせたかったんです。イルドラ軍のペルセウス2機を戦闘不能にすれば、この件は不問にできると思いました」
「どうやって不問にするつもりだったんですか?」
「ジュエン大尉を説得して、入鹿准尉が黙っていてくれれば……」
「入鹿准尉を殺害し、イルドラ軍と取引するつもりだったと?」
「違います!」




