第39話 ルージュピーク管制塔
ルージュピーク演習場の管制塔。
その主管制室は、各軍代表者の歓談の場となっていた。模擬戦闘開始の信号弾を打ち上げた後には、飲み物も配られている。幹部同士は談笑して、女性の管制官はホステスのような役周りをしていた。
重甲機兵の主動力であるZCF機構は、稼動時に電磁波障害を発生させるためにレーダーや無線通信は機能しなくなる。
地上120メートルの高さにある管制室からも、競技領域の全貌は目視で把握できるない。実質的に、管制室で行うことは何もない。
「有馬司令はどうして、この場に来られなかったのか?」
ナーガオウ州軍司令官が、第2戦団司令官の代理としてその場にいる秘書官に問い質した。
所属不明機による新型機襲撃事件で御堂を尋問した、あの秘書官である。
「司令官自ら出席することが必ずしも必要とは言えないが、せめて誠意を示して欲しかったな」
司令官代理が、なぜ事務職の秘書官なのか。せめて副司令クラスを出席させることはできたはずだと思っている。
ナーガオウ州軍司令官は、合同演習1日目の式辞で「帝国とイルドラ公国の橋渡し役」を敢えて強調した。その立場を蔑ろにすような、第2戦団の人選に対して露骨な不快感を示した。
第2戦団からの出席者は僅か3人。あとの2人は、この秘書官の護衛役だ。
「イルドラ軍の指揮官殿は、ご理解されてます」
「さて、何のことか?」
イルドラ軍ラング隊の部隊長は、急に振られた話に怪訝そうな顔をする。秘書官は、そんな彼らの顔色を観察していた。
彼女が、ここに派遣された理由はそれのためである。
フラッグ戦の模擬戦闘開始から約30分、ルージュピーク演習場の一角から、赤みがかった閃光が空に向かってのびた。一面を真っ白に染める発光の後、一直線にのびる閃光……重甲機兵のZCF機関が暴走した時の特徴的な爆発だった。
赤みがった発光は、第2戦団所属の機体に施された識別色である。
「録画用のドローンを全機回収しろ!」
「回収した録画記録から順次確認!早急に状況を把握して!」
重甲機兵の動力機関の安全装置は頑強で、外部からの衝撃ならほぼ確実にZCF機関を強制停止させられる。暴走するのは、故意に暴走させ自爆する時だけと言っても良い。
状況からして、第2戦団所属の入鹿機あるいは御堂機《GS4》のいずれかが自爆したと考えられた。
「記録がありません!あの地点にドローンは送ってませんでした!」
混乱する管制室に飛び交う管制官の声。秘書官は、二人の護衛役に目配せして管制室を後にする。




