第38話 フラッグ戦、アクシデント
撃破判定を受けた機体は、両手を上げて領域から退場する規則だった。しかし、181機は、御堂機の脇をすり抜けると入鹿機に斬りかかった。
181機の剣を受けた入鹿機の模擬刀があっさりと切断されてしまった。
「模擬刀じゃない、実剣か!」
不測の事態に入鹿は、機体を後退させて181機との距離を取ろうとした。次の瞬間、背中から強烈な衝撃に襲われる。
ゴォォーン!
入鹿機のコクピットに甲高い警報が鳴り響く。背面バックパックが喪失したメッセージがコンソールに表示されていた。
「何が起こった?」
サブカメラをフル稼動させて周辺をサーチする。約8キロメートル先、競技領域の外でB級ペルセウス[077]が重甲機兵用ロケット砲を構えているのを見つけた。
「ロケット弾で撃たれたか」
077機に、入鹿機の機械眼球を向けてメインモニターに敵機を表示させる。077機は、ロケット砲を投げ捨て剣を手にして、こちらに移動を始めた。
入鹿機の視線の方向を辿って、御堂も077機を見つけた。
「まさか……昨夜の意趣返し? タチが悪すぎよ!」
バックパックを破壊され、黒煙を上げながら膝をつく入鹿機の前に立って、御堂機は2機のペルセウスと向かい合う。
(模擬刀で、実剣装備の2機を相手にするのはキツいな)
それでも、やるしかない。こんな形で合同演習を中止したら、双方に憎悪が積み重なるだけだ。何とか、形だけでも無事に終わらせたい。
(眼前の2機を戦闘不能にすれば、フラッグ戦を乗り切れる!)
補助武装として肩部装甲にナイフと後腰部に小太刀が装備されている。これでも戦えるはずだ。
模擬刀で2機のペルセウスを威嚇しながら、左手を入鹿機の肩に接触させて通信回線を開いた。
「玲! 大丈夫?」
入鹿機の通信回線が開かれない。
「玲、返事をして!」
御堂の声は聞こえているはず。なのに入鹿は通信回線を開かない。
入鹿は状況を整理していた。
フラッグ戦を装ったイルドラ公国軍の奇襲攻撃を、ナーガオウ州軍は黙認している。だから記録を残さないために撮影ドローンを領域に入れないのだろう。
『玲、返事をして!』
御堂の声がコクピットに響いているが、敢えて放置していた。
この状況で戦艦『朱雀』に信号弾で知らせないのは、御堂も一樹と同じくイルドラ軍に加担していると判断せざるを得ない。迂闊に返事をしたら、止めの一撃を見舞われる。
信号弾射出装置のあったバックパックが破壊されて、自機からは信号弾を打てない。新型機がイルドラ軍へ渡るのも阻止しないとならない。
では、どうするか?




