第36話 フラッグ戦、始まる
12キロメートル四方の疑似戦場は、ほぼ同面積に三等分されて3軍それぞれの領域として割り当てられている。その自軍陣地内にフラッグを隠して、それを奪い合う。3軍が牽制し合いながら戦い、勝者を競う。
この催事は、報道機関を通して各国へ公開されることになっている。
午前11時45分頃。
御堂と入鹿は、機体をフラッグ戦の陣地に移動させた。演習場の砂の下には前時代の都市の瓦礫や残骸が埋まっている。砂に埋もれきらず鉄骨や崩壊した建造物が突き出した場所も多い。
2人は、自軍の陣地内で見晴らしが良くかつ戦闘時の足場の良い場所にフラッグを立ててを待機する。
陣地内では最も高地であり遮蔽物もない地点なので、他の2軍から直ぐに把握されるだろう。
「戦闘開始は13時だっけ? かなり時間余っちゃったね」
「瓦礫どころか地下構造物もありますからね。本気で隠れるつもりなら時間は足りないしょう」
天候は、風が強いが日差しもきつい。入鹿機を四つん這い姿勢にして日陰を作り、御堂機が風除けとなる。
そうして作った地表の一角で、2人は身体を伸ばしていた。
昨夜。イルドラ兵を見送った後で、一樹教官はイルドラ軍と内通している嫌疑で身柄を拘束された。首都である不死鳥京の安全保障局本部へ身柄を送致されることになっている。
「この合同演習を無事に終わらせて、絶対に一樹教官の嫌疑を晴すわよ!」
「もう有罪は確定してますよ」
「何で? 中央デッキには呼び込んでしまったけど、GS4は見られてないわ」
「第2戦団は機体のパイロットを非公開にしていたはずです。でも一樹教官は、イルドラ兵に貴女と僕を紹介しました。機密漏洩は確定してます」
そう言われて御堂は、御堂機と入鹿機のパイロットが『非公開』となっているのを思い出した。
「でも、他の2軍は公表してる情報でしょう。問題ないわよ」
「第2戦団が非公開にした理由があるはずですよ」
「かも知れないけど……問題ないはずよ」
そのまま入鹿は返事をしなくなる。言葉に詰まる……ではなく、話すことを無駄と判断したようだ。それは御堂にも伝わる。
正直に言えば……あの3人のイルドラ兵は好意的な交流を期待して『朱雀』に来たのではない……それは御堂にもわかっている。友好関係を築くつもりなら、戦団章を踏みつけるようなことはできないだろう。
「でもさ。どちらかが、先に胸襟を開かないと友好関係は始まらないよ」
一樹教官は、それを実行したに違いない……御堂はそう思いたかった。




