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赤塵のサンダーバード -機兵戦記-  作者: 星羽昴
第二章

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35/49

第35話 夜が明けて

 夜が明けた。陸上戦艦『朱雀』の工廠棟は慌ただしく兵士が走り回っている。イルドラ兵による、戦団章を踏みつける侮辱行為が宣戦布告であれば夜明けと共に開戦だからだ。


「一樹教官が、ジュエン大尉と話をつけてくれたんだよ?」


 GS4(サンダーバード)のコクピットで御堂は不満を漏らす。一樹教官とジュエン大尉の間で「イルドラ兵の『朱雀』への来訪は無かった」ことに合意したのだから「戦団章を踏みつけた」行為も、まして「宣戦布告」もなかったことになっているはずだ。


「万が一に備えるのは当然だろ?嬢ちゃん」


 中央デッキ。胸部装甲を展開した剥き出しのコクピットの前に、ゴンドラで張り付いているのは整備主任の興田おきた大尉である。


「……ったく。玲が話を拗らせなきゃ仲良くなれるチャンスだったのに!」


 興田は、笑いを含んだため息を小さくついた。


GS4(サンダーバード)の駆動音はどうだ?嬢ちゃんなら駆動音で主動力のコンディションもわかるだろう」


「え? うん……すごく良いと思うよ」


「だろう?」


 興田は、自慢げに念押しする。


「整備班総出で徹夜して、万全に仕上げたからな。第2戦団をコケにしやがったイルドラ兵に本気の強さを見せてやるためさ。イルドラ兵に媚び売ってる奴のためなら、こんなに真剣にはなれねえよ」


 御堂は、一樹教官に呼ばれて中央デッキに来たときの冷たい視線を思い出した。


「俺ら整備兵だって近衛軍の一員で、帝国民なんだよ。機械になって機体を整備してるわけじゃないんだぜ?」



 午前9時を過ぎても、イルドラ公国軍に動きはなかった。

 ルージュピーク演習場の管制塔からは、催事イベントであるフラッグ戦の準備に入るよう第2戦団へ指示が届いた。


「……やっぱり!」


 開戦なんてするはずがない。これで一樹教官の思いを一つ実現できた……と、御堂は胸をなで下ろす。

 ホスト役のナーガオウ州軍から届いた通知を、GS4のコクピットで確認する。


 ナーガオウ州軍:

   GV4[311](パイロット、ジョン・リバー大尉)

   GV4[332](パイロット、ジム・フィールド中尉)

 イルドラ行軍:

   PPS[077](パイロット、キム・ジュエン大尉)

  ※PPS[181](パイロット、キース・ライト中尉)

 帝国近衛軍:

   GS4[001](パイロット、非公開)

   GV4[108](パイロット、非公開)


 PPSはペルセウスの型式名である。イルドラ軍の一機が事前登録から変更されている。トーエン中尉が参加不可能な状態になったせいだろう


「……ったく、玲のやつ!」


 入鹿に対する憤りの感情が湧き上がる。

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