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赤塵のサンダーバード -機兵戦記-  作者: 星羽昴
第二章

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第31話 安全保障局

 陸上戦艦『朱雀』のメイン警備室のサブモニターを、仮面を付けた女性士官が覗き込んでいた。

 第2戦団司令官である有馬月夜見(つくよみ)将軍である。

 メイン警備室の大型モニターは数十枚のウィンドウの分割されて『朱雀』各部に設置された監視カメラの映像を表示している。月夜見つくよみ将軍の覗き込むサブモニターは、中央デッキの休憩スペース周辺を拡大表示していた。



「一樹少佐、参りました」


 月夜見つくよみ将軍に呼び出された一樹教官が、警備室へ入ってきた。


「どう言う状況か?」


 サブモニターに映る御堂と入鹿、そしてイルドラ兵3名を注視したまま、月夜見つくよみ将軍は一樹に問う。サブモニターでは入鹿とトーエン中尉が争っている。トーエン中尉が、入鹿の左手を軍靴で踏みつけていた。


「申し訳ありません。善処します」


 争いの現場である中央デッキへ向かおうとした一樹を月夜見つくよみ将軍は呼び止めた。


「善処とはどういうことか?」


「はい。合同演習に支障をきたさぬよう仲裁を……」


「それは問題ではない」


「……は?」


 月夜見つくよみ将軍の意図が推し量れず、一樹は戸惑った。


「第2戦団の旗艦である『朱雀』の中央デッキに、なぜイルドラ兵がいるのか?」


「私の独断です。私の責任において対処します」


「その説明で安全保障局が納得するか?」


 一樹の顔が、一瞬にして強ばった。



 安全保障局とは、いわゆる秘密警察である。

 近衛軍と同様に『帝の私兵』であるが、近衛軍が「剣」の役を果たすとすれば、安全保障局は「盾」の役を果たす。

 近衛軍は、星間協定の違反者に対する場合を除けば、法に縛られた軍事行動しかできない。しかし安全保障局は、帝を守るためなら法に縛れない捜査権と裁判権を有している。



 監視カメラに映された映像……。

 トーエン中尉が、入鹿の右腕の戦団章を引きちぎり床に投げ捨てた。その戦団章を拾い上げようとした入鹿の左手ごと軍靴で踏みつけている。

 第2戦団の戦団章は、赤地に黒い不死鳥を描いた紋章であり、黒い不死鳥は『帝国の帝』を表している。

 戦団章を足で踏みつけるのは、第2戦団のみならず帝に対する侮辱行為である。


新型機(GS4)の機密漏洩を危惧して他国兵との接触を禁じた。にも拘わらず『朱雀』の中央デッキにイルドラ兵が侵入し、我が戦団章を足蹴にしている。それでは安全保障局は黙っていない」


 一樹は唇を噛みしめた。中央デッキのイルドラ兵を抹殺するか、それとも戦団章への侮辱行為を宣戦布告とみなして交戦するか……月夜見つくよみ将軍はそう言っているのだ。


「受けた侮辱は剣によって返す。貴官の撒いたタネだ。責任を果たしてくるがいい」


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