第25話 砂糖入りブラックコーヒー?
「わぁ、意外です! 入鹿准尉って、実はサクヤのこと信じてたんですね」
山根エリカ軍曹が、驚いたような声をあげた。御堂と特に親しくしているので、御堂のことは名前呼びになっている。
「じゃあ、GS4は高機動仕様で調整した方がいいな」
「補助武装と高高度用の信号弾は外しますか? 僅かでも軽量化できますけど?」
「いえ、ソレはそのままでお願いします。イルドラ軍からは何をされるかわかりませんから」
入鹿は、整備班の提案のいくつかを受け入れ、いくつかを否定した。
食堂の終了時刻が近づいて、GS4に関わるメンバーも解散する。
食堂を出た後で、御堂は入鹿を通路の端の休憩スペースへ誘った。
「戦術家ぶって、いろいろ仕掛けを言い出すかと思ってたわ」
「まともに戦って勝ち目がないのなら、姑息だろうと小手先だろうと策を練りますけれど、優位な戦いなら正攻法でいきます」
入鹿が、自分の操縦技術をちゃんと評価し信用してくれてる……と言うのが納得できて少し気分が良かった。
「今回の合同演習、無事に終わらせたいね」
イルドラ公国と帝国が、共同で何事かをするのは初めてのことだ。少なくともイルドラ公国は近衛軍の仮想敵である。怨嗟を吐露した興田大尉が「帝国の悪夢」の混乱で、イルドラ公国のために兄弟を失っていることも御堂は聞き知っている。
勿論……合同演習の事実だけで、そんな過去が解消されるはずはない。それは御堂でも理解している。
この日に合わせてGS4が次世代機として公開された。GS4が主力機体として正式採用される際に「イルドラ公国との合同演習」のキーワードと繋がるなら、意識を変える切掛にならないか?
GS4を介して、もしかしたら歴史の分岐点に立っているかも知れない・・・そんな気持ちあった。だから、本気で成功させたいと思う。
「さっきのお返しです」
入鹿が砂糖入りのブラックコーヒーを持ってきた。御堂がいつも注文するものだ。
「ありがとう」
御堂の前にブラックコーヒーを置くと、入鹿はまた自動販売機に向かう。注文ボタンを押しておいたホットココアを取り出してこちらへ歩いてくる。
(……両手で持ってくればいいのに)
入鹿はいつも左手に軍刀を握っている。だから何かを持つのは右手だけだ。
(模擬刀の柄には両手を添えてたっけ?)
(あれ? 所属不明機戦の白兵戦の時は?)
「失敗しても、勝手に橋渡し役をやったナーガオウ州軍が面目を失うだけです。僕たちが気にする必要はありません」




