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赤塵のサンダーバード -機兵戦記-  作者: 星羽昴
第一章

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第18話 馬鹿と鋏と銃口

 それから先は、御堂がA級パイロット(マルス)を拘束しようと機体を降りたために記録はない。GS4の機械眼球の映像は録画されていたが、A級パイロット(マルス)は巧妙にその死角へ御堂を誘い込んでいた。


 第2戦団として確認している事実……。

『右手を切断され、胸を貫かれたA級パイロット(マルス)の死体』

A級パイロット(マルス)の死体は、こめかみに銃弾を受けていた』

『耳を銃で撃ち抜かれ、心臓を一突きされたB級パイロット(フォボス)の死体』

『狙撃銃で撃たれた御堂の右肩』


 御堂は、できるだけ正確に経緯と状況を説明しようとする……月夜見つくよみと秘書に対して必死に説明しながらも、気になることがあった。

B級パイロット(フォボス)は、あたしが助けたはずなのに……)

(あたしが意識を失ってから、玲が殺したの?)


 御堂の話を聞きながら、月夜見つくよみの口元がかすかに弛んだ。


「立っているのがやっとだったはずだが……よく動けたものだな」


「え?」


 状況を説明するのに没頭していた御堂は、月夜見つくよみの呟きを聞き逃した。


「何でもない。独り言だ」


 月夜見つくよみが秘書に目配せを送ると、秘書が言葉を続けた。


新型機(GS4)を降りる前に、貴女あなたA級パイロット(マルス)を処分しておけば、このような白兵戦は不要でした。判断ミスの一つです」

 生身の人間を殺せと言うんですか?

「生身かどうかは無関係です」

 ……。

「今回の襲撃に関してなら『所属章を示さずに襲撃した』事実のみで協定違反は確定しています。いかなる報復も正当化されます」

 殺人も……ですか?

「不正確ですね。殺人ではなく、駆除もしくは退治です」

 ……駆除、退治?

貴女あなたは駆除の義務()怠りました」

 ……。


「そのくらいで許してやれ」


 秘書はまだ言い足りないことがあるようだった。顔の表情こそ動かさないが、御堂に対して敵意のようなものを漂わせていた。


「馬鹿な行動に対するしつけは、最初が肝心です」


「馬鹿とはさみには、使い道もある」


 本気か冗談かわからない月夜見つくよみのフォローに、秘書は携帯端末を閉じて手を膝へ置いていた。事情聴取は終わったらしい。


「この半年間に3機のB級を撃破し、更に今回の戦闘で2機のB級と1機のA級……仮配属の士官候補生で計6機を撃破したのは、初めてだろう」


 尊敬する月夜見つくよみからの賞賛も、今の御堂は素直には喜べなかった。月夜見つくよみと秘書の顔を思わず見比べてしまう。


「優れた能力には自信を持っていい。だが同時に、その結果は背中に突き付けられる銃口の数であることも忘れるな」


「……銃口?」


 月夜見つくよみが立ち上がると、秘書も続いた。個室の入り口へ向かう途中、何かを思い出した月夜見つくよみが振り返った。


「入鹿准尉は、マザコンに見えるのか?」


「え? あ、はい。見えます」


「そうか」


 そのやり取りを、秘書が面白そうに笑う……この女性でも、和やかな表情をするのかと御堂は思った。

 月夜見つくよみと秘書が病室を出てゆくと、入れ違いにクリステア軍医が戻ってきた。


 クリステア軍医の顔を見たら一気に緊張が緩む。御堂には六つ違いの姉がいる。クリステア軍医は姉と同い年で、前哨基地に仮配属されてからずっと妹のように可愛がってくれている。


「お腹すいてない?」


 クリステア軍医に言われて、空腹に気付く。時計は『21:09』を示す。

 昼食を取ったのは歩哨任務に出る前だから9時間以上前。前哨基地の食堂は20時までだから、もう閉まっている。


「大丈夫だよ」


 気落ちしている御堂にクリステア軍医が片目を瞑ってみせた。

 数分後。御堂が前哨基地で親しくなった友人たちが、御堂の「お手柄」を祝うために個室に集まった。料理や酒を持参して。

 一日にA級1機を含めた3機の撃破……その戦果を祝ってくれた。


「いいんですか、病室でお酒とか?」


 クリステア軍医を見ると小さく指でOKサインを作っている。


「ほどほどにってことで、今日だけ許してもらったから」


 それを聞いて安心した。そして、集まってくれた友人の気持ちが嬉しかった。友人たちのおかげで、先ほどまでの不安が薄らいで行く。

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