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赤塵のサンダーバード -機兵戦記-  作者: 星羽昴
第一章

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第17話 尋問

 病室に入ってきたのは仮面をつけた背の高い女性士官だった。もう一人、行政官の制服を着た女性がその後から続いた。行政官……軍人ではなく事務方の人だ。


「有馬司令!」


 帝国近衛軍、第2戦団の統括司令である有馬月夜見(つくよみ)大将。帝国近衛軍でただ一人の女性将軍であり、近衛軍の実質的なナンバー2である。

 御堂が尊敬し憧れる存在であり、それ故にこの第2戦団を希望した。

 反射的に背筋を伸ばす。敬礼しようとしてベッドの上だと気づき、慌ててベッドから降りようと床に足を降ろしたところで、今度は自身が下着だけの姿だったのを思い出した。


「そのままでいい」


 仮面で顔の上半分を隠されているため表情は読み取り難いが、声の感じは穏やかだった。御堂のアタフタする様子に、見えている口元が笑いをこらえていた。

 クリステア軍医は、月夜見つくよみと同伴する秘書に椅子を用意してから、御堂に向き直って説明してくれた。


「目を覚ましたばかりで申し訳ないんだけど、今日の戦闘の事情聴取なんだってさ」


「あ、はい」


「今、傷の手当てで下着姿でしょ。『半裸の女性のところへ、誰も入室させられません!』って断ったんだけどさ。そしたら『有馬司令も女だから』って言われちゃってね。断り切れなかったんだ。ゴメンね」


「は、はあ?」


「じゃあ、私は席をはずすから、後はよろしく」


 それだけ言うと、クリステア軍医は明るく手を振って病室を出て行ってしまった。クリステア軍医の、妙に軽いテンションに場の会話が繋がらず、少しの沈黙が続いた。


「有馬司令は、貴女あなたの働きに感謝すると仰られてました」


 最初に口を開いたのは、行政官の制服を着た女性だった。月夜見つくよみの秘書として一緒にいるのを見掛けるが名前は知らない。改めて近くで見ると、仮面をした月夜見つくよみよりも無機質な顔に見えた。

 GS4の戦闘記録……入鹿機との音声通信を確認しながら、秘書は御堂に質問してきた。質問と言うよりも糾弾・・だと御堂には思えた。


『二機のB級を撃破したら新型機(GS4)で前哨基地へ帰還して下さい』

「B級を撃破した後、なぜ速やかに帰還しなかったのですか?」

 申し訳ありません。

「理由をお答え下さい」

 入鹿准尉が撃破されたと思ったら、止まらず……。

「命令違反ですね」


『敵機のパイロットは確実に殺すつもりで戦って下さい』

「撃破したB級のパイロットの死亡を確認しませんでしたね?」

 申し訳ありません。

「理由をお答え下さい」

 パイロットまで殺す必要はないと思って……。 

「命令違反ですね」


 繰り返される「命令違反」に、遂に御堂の我慢が限界を超える。


「あの任務の指揮権は、あたしにありました。命令違反を問うなら入鹿准尉の方じゃないんですか?」


 秘書が月夜見つくよみに何かを確認する。秘書と月夜見つくよみの間で交わされた会話は、御堂には聞こえなかった。


「では、訂正します。貴女あなたの判断ミスですね」


 そう言われたら、返す言葉はない。

 感情的に挑んでいったら「A級ペルセウスがダメージを受けていた」ので勝てた……と言う偶然の結果だったのだ。


「A級のパイロットの投降を容認したのは何故ですか?」

 敵兵の投降に、協定で定められた対応をしました。

「敵兵は、協定違反を犯した者ですよね?」

 でも投降してきたなら、相応の対応をすべきと思います。


 無機質に見えた秘書の顔に、急に人間的な感情が浮かんだ。驚きと呆れと・・・同情の混じった顔。


「同じ手口の詐欺に、何度でも引っかかるタイプ・・・ですよね?」

 違います!

「ゴメンナサイね。貴女あなたを普通の《《判断力のある人》》のつもりで質問してました」

 普通に判断力あります!


 秘書は数秒沈黙する。それから、捨てられた《《小動物を哀れむ》》ような表情で御堂を眺めた。

 次に再生されたのは、御堂の声だった。


『いまさら・・・させるかァ!』

『・・・ちっくしょう!』

「A級のパイロットを殺そうとしましたね?」

 はい

「でも、殺さなかった」

 はい。

「何故ですか?」

 ・・・わかりません。


 多分・・・「殺せなかった」理由なら答えられた。でも「殺さなかった」理由は答えられなかった。


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