第155話 第4戦団の新設
唐突に上がる御堂の怒声。しかし。刀自古は全く驚かず、焼き菓子とお茶を口に運んでいる。
「あたしは、有馬司令のいる戦団に入ります。そして、絶対に今回の恩返しをして、将軍に復帰して貰います!」
「恩返し?」
「だって、あたしのせいで降格されたんじゃないですか。おかげで、あたしの処分がなくなって……絶対に恩返しします!」
「貴女が関わらないことが、月夜見様への最大の恩返しですよ?」
「他人を疫病神みたいに言わないで下さい!」
間違いなく疫病神です……の言葉は飲み込むことにする。面倒くさくなるだけだから。
「有馬司令は、どの戦団になるんですか?第1戦団ですか、第2戦団ですか」
さすがに第3戦団はないだろうと御堂も考える。
「この度、第4戦団が新設されます。特定の守備域を持たない遊撃戦専門の小規模な戦団です」
「え、じゃあ……その司令官に?」
小規模な戦団と聞いて、微かに希望を膨らます御堂。
「いいえ。第4戦団統括司令官の副官になられます」
副官と言うことは、その統括司令官のお守役のような役回りだ。実質的な指揮権は持たない。それでも……と思う。
「あたしも第4戦団に入ります」
「やめて下さい!!」
刀自古が珍しく絶叫した。思わず身を乗り出して椅子から立ち上がっている刀自古。
その、感情を露わにした大声は、鈍い御堂をもたじろがせた。
「……失礼しました」
冷静さを取り戻した刀自古は、椅子に座り直す。
「第4戦団の統括司令官は、大兄様です」
大兄とは帝位継承の第一候補を指す。即ち、日嗣皇子である射流鹿のことだ。
「あ……」
州議事堂包囲戦において、帰艦を拒否した御堂にキレて、GV3Xを後ろから狙撃したのが日嗣皇子である。
(好印象は持たれてない……かな)
もちろん、御堂は「日嗣皇子=入鹿玲」だったことは知らない。
刀自古にはわかっている。月夜見は詰腹を切った訳でも切らされた訳でもない。
新設される第4戦団の統括司令官となる射流鹿について行くために、第2戦団の司令官を辞めただけだ。降格も命令違反の特赦も、本当は後付けの辻褄合わせでしかない。
面倒くさいストーカー……それ以上でもそれ以下でもない。
「あたし、第4戦団に行きます!」
更に力強く繰り返す御堂に、刀自古は念のため確認する。
「近衛軍は、貴女を受け入れないと伝えましたよね?」
「聞きました。でも、あたしは第4戦団に行きます」
もう、面倒くさい女に関わりたくない……刀自古は本気でそう思った。




