第154話 近衛軍、不採用
「貴女は、自分がどんな命令違反を犯したか……理解していらっしゃる?」
御堂は、刀自古の問いに頷いた。
州議事堂包囲戦での「南部方面軍を誘い出して戦力を消耗させる」との作戦目的は、南部方面軍第二陣を撃破したところで果たされた。12:45以降の問題は、スムーズに撤退することだった。にも拘わらず、御堂は既に撤退していたGV3Xを再び戦場に出したのだ。
「GV3Xを中央デッキに上げた整備スタッフ。GV3Xを乗せて移動した空中移送機のパイロット。みんな命令違反の処分の対象ですよ。貴女一人だけじゃ出撃できないんですから」
刀自古の言葉に、もう一度頷く。
「月夜見様の解任と降格で、これらの兵士の処分も注意勧告のみとなりました」
御堂は言葉を失って、何も喋れなくなる。
「責任を負う能力のない者に、どんな厳しい罰を課しても効果は薄いんです。貴女を処刑したところで『見せしめ』か『蜥蜴の尻尾切り』でしかありません。でも、然るべき立場の者への処分は『第2戦団が規律に厳格である』ことを世間に周知させます。そして月夜見様に代わる新たな人材が活躍すれば、組織の新陳代謝がはかられます」
「でも、有馬司令に代わる方なんて……」
「人材の損失を怖れて処分を下せない組織には、新たな人材は現れません。でも、それを怖れず厳格な処分を下せる組織は、常に新しい人材に恵まれます。だから第2戦団は大丈夫ですよ。それと月夜見様には一切同情は必要ありません!」
どうやら、刀自古は第2戦団のことも月夜見のことも心配していないらしい。
「心配なのは、貴女です」
「え……あたし、ですか?」
「士官候補として仮配属で10ヶ月が経ちました。あと2ヶ月足らずで正規軍に正式配属される予定でしたね」
「……はい」
尊敬する月夜見の率いる戦団に配属を望んでいたが……その月夜見が戦団司令を解任の上で降格と聞いてしまった。しかも、その原因は自分である。
「近衛軍は、貴女を登用しません」
「はい?」
「度重なる命令違反、改心の様子もなし。優れた操縦技術を持っていても、戦力として計算できない兵士は不要……だそうです」
刀自古の「だそうです」の部分が気になる。
「仮配属の1年足らずで15を超える撃破数は壮絶な記録です。近衛軍でなくとも、都市国家の守備隊や傭兵部隊では評価もされるでしょう。スカウトもあるかも知れませんね」
「いや、あの……」
「月夜見様から『ラインゴルド傭兵騎団への推薦状なら書ける』との伝言も頂いております」
「待て、こらぁ!!」




