第153話 責任を負うべき者
個室病棟のベルが鳴り、軍医のクリステアが入ってきた。
「有馬司令の秘書官の相楽行政官がお見えなの。お話ししても大丈夫かしら?」
「え?」
刀自古なら月夜見の留守番役として戦艦『朱雀』にいるはずではなかったか?
多少の混乱を引きずりながら、刀自古との面談を承諾する。刀自古は病室の前で待っているらしく、クリステア軍医は入口から首だけ出して招き入れた。
クリステア軍医が退室して、病室には御堂と刀自古の二人きりになる。
病衣姿の御堂と、行政官の制服を着た刀自古は、小さなテーブルを挟んで椅子に座った。刀自古が手製の焼き菓子とお茶を持ってきてくれたので、それを口にしながらの面談だ。
覚悟を決めて、御堂が先に切り出した。
「命令違反の処分の件ですよね?」
「それもあります」
それ「も」と言われて、他にも何かあるのかと思い気が重くなった。
「取り敢えず……処分の件を……」
「貴女には何もありません」
「え?」
「士官候補生の貴女には、責任能力がありません。なので、処分もありません」
処分がない……と聞いて、胸を撫で下ろす。
「じゃあ、青柳少尉もお咎め無しなんですよね?」
青柳は、この病室の隣の病室へ入院している。昨日、目を覚ましてから数分だけ面会できたが、処分を酷く気にしていたはずだ。
「いいえ。青柳少尉は今朝早くに煉獄峡要塞の研究所へ移送されました。おそらく、今回の任務に関する記憶を消去した上で再教育と再訓練になるでしょう」
「き……記憶消去って……」
脳裏に、謎の薬を投与されて洗脳教育を受けている青柳の姿が浮かんでしまう。
「CRの暴走を止められないのは、SVとして致命的です。適正な処置でしょう」
「暴走したのは、あたしですよ。あたしを処分すればいいじゃないですか?」
御堂の声が大きくなり、御堂の胸座を手が伸びそうになった。
「責任を取る能力がないから、貴女は処分されなかっただけです。能力のある者には、然るべき処分は下りますよ。青柳少尉だけの話ではありません」
「他にも……いるの?」
「月夜見様は、第2戦団統括司令官の職を解かれました。大将から大佐へ降格処分です」
「……はい?」
「妾は安全保障局より『統括司令官の秘書』として赴任していました。月夜見様の解任に伴い、妾の任も解かれることになります。貴女とお話しするのも、これが最後になるかと思いますよ」
「相楽行政官も……ですか?」
「間もなく不死鳥京の本部へ戻ります。色々と整理のために、前哨基地に戻ってきました」




