第151話 愚者の証言
11番機は、右手で太刀の柄を握ると鞘を下に向けたまま持ち上げた。太刀の反りに沿って重力でゆっくりと鞘が落ち、太刀の刃が抜身となる。
地表に這いつくばって倒れているA級0067機の背中からバックパックを、その太刀で貫いた。
そのまま深く差し込めばコクピットを貫通する位置である。
11番機の脚部にある接触通信部位を、A級0067機の腰の接触通信部位に重ねた。
「このまま突き刺せば、コクピットを貫通します」
射流鹿の声が、Sユニットの山根大佐とCユニットの藤堂中佐に届く。
「お、オレ達はガルーダ部隊で……藤崎副司令の命令に従っただけです。藤崎副司令が全ての責任を負うから、と」
山根大佐は、何とか申し開きをしようとする。藤崎准将が「私を告発しても良い」と言ったことも白状した。
「藤崎准将の背後には、周防崎統括司令がいるんですか?」
「そ……それは、知りません」
その答えに、太刀が音を立てて機体を抉る。
「では、貴方たちを生かしておいても証言は得られませんね」
日嗣皇子の声の調子が変わったのを、山根大佐は肌で感じた。冷たく、氷のような声に。
「しょ、証言します!」
反射的に山根大佐は、絶叫していた。このままでは殺される!そう直感した。
「藤崎副司令は、統括司令官の意向を受けていました。間違いありません!」
機体を抉る音が止んだ。山根大佐は安堵した。それは、Cユニットの藤堂中佐も同じだった。
「では、ご機嫌よう」
次の瞬間、太刀はコクピットを貫通して胸部装甲まで達した。SユニットもCユニットも串刺しにして。
11番機のSユニットで、月夜見は小さくため息つく。
「生き証人の証言の方が良かったのではないか?」
「生きて、証言を変えられると面倒です」
愚者ほど目先の利益には敏感だ。その可能性は十分あり得る。容赦の無さと決断の早さは母親の気質そのままだと、月夜見は思った。
14:15
戦艦『朱雀』と『胡蝶』から、重甲機兵回収のための空中移送機が到着した。
射流鹿としては、御堂を先に帰艦させたかったが、駄々をこねそうな御堂と会話をしたくなかった。2番機の支援をロケット砲で務めてくれた2機のB級を下がらせることにする。
州議事堂の敷地に、2番機と11番機そしてGV3Xが残った。
「次の空中移送機で、GV3Xを帰艦させて、11番機と2番機が最後までここに残ります」
「それが順当だな。A級2機に手を出す戦力は、もう残っていないだろう」
「御堂准尉の説得をお願いします」
「私が、か?」
射流鹿は、御堂を月夜見に押し付けてしまう。




