第147話 特別なB級機体
A級0067機が、不意討ちの如く打ち込んだ斬撃だったが、御堂は刃の棟で軽く捌いた。
更に勢いで前のめりになるA級を、背後から足蹴りして転ばせてしまう。
「何だぁ?」
「気を付けろ。普通のB級機体じゃない!」
SVの山根大佐は、ここでようやく管制AIに検索をかけた。50年前に組み上げられた実験機体……この情報を得て、パイロットも特別に選定されいる可能性も考慮する。
「冗談じゃねえぞ。ここで貧乏くじを引かされちまったのか?」
CRの藤堂中佐は思惑が外れたかも知れないことに奥歯を噛み締めた。
2番機には勝ち目がないと、初陣の日嗣皇子を挑発して決闘に持ち込もうとした。挑発に乗ったのは士官候補生が乗るB級だった。
B級に一騎打ちで勝利して、都合の良い要求を押し付けるのは「赤子の手をひねる」ようなことだと考えていた。
「パイロット情報は非公開だとよ。畜生、本当に士官候補生かどうかも怪しいぞ」
山根大佐が検索した情報を確認しながら、藤堂中佐はA級0067機を立ち上がらせる。
「まさか、逆に罠に嵌められたのか?」
A級機体がB級に屠られるなど、A級に乗るパイロットとしては恥である。ハードウェアの絶対性能も違うし、何より選ばれたパイロットがA級機体を与えられているはずなのだ。
【第3戦団のA級は、第2戦団のB級に劣る】
それを見せつける「噛ませ犬」とされた可能性を藤堂は疑う。
2番機は、A級0067機とGV3Xの戦いを傍観していた。
両者の戦いを「決闘」と認めたわけではない。自らの所属すら明かさないで不意打ちを仕掛けるなど、決闘を騙る《《卑劣な戦闘行為》》である。
「あのA級の腕では、GV3Xの相手にならないでしょうね」
「SVの腕も最低レベルだな。今になって『特別な実験機体』だったことに気付いて慌ててるのが見え見えだ」
戦闘突入前に、敵機の情報を可能な範囲で調べるのは当たり前のことだ。あのA級のSVは、それを怠った。SVの方も青柳には及ばない。
しかし、有本大尉にも懸念はあった。
「御堂准尉は、汚い戦いには慣れてない。もっと竜崎中尉との模擬戦を熟しておくべきだった」
「あらあら、まるで私の戦い方が汚い見本みたいに聞こえるじゃないですか?」
「型に縛られない戦い方だ。褒めてるんだよ」
「そうでしたか。ありがとうございます」
Cユニットで、竜崎中尉はニッコリと微笑んだ。褒めてる……と言われて、機嫌を良くしたらしい。彼女には皮肉も冗談も通じない。
「A級に怪しい動きがあったら、飛び出すぞ」
「はい、承知しました」




