第142話 『ガルーダ』第一艦橋
藤崎准将の率いるガルーダ部隊は、南部方面軍の本隊駐屯地に近いP03中継基地に入港してナーガオウ州のニュース映像を視ていた。
重甲機兵の周囲は主動力であるZCF機構の影響で、無線通信は使えない。ナーガオウ州の報道機関が有線ケーブルを通して配信する情報しか戦況を確認する手段はない。
第2戦団は圧倒的だった。ラレイン型A級重甲機兵が、11番機に「握り潰される」様は、ナーガオウ州市民を絶望に落とし込んだだろう。
南部方面軍の所属章を付けて出陣した、ガルーダ部隊の重甲機兵6機も苦戦を強いられている。いや、既に撃破されていると判断すべきだろう。
「日嗣皇子の11番機が、我が陣営に飛び込んできたのは絶好のチャンスだったのだ。2番機をB級で牽制し、A級0067機が11番機と1対1の格闘戦に持ち込めば必ず勝てたはずだった!」
藤崎准将は口惜しさに唇を噛む。
早い段階で2機のGV4は撃破されて、2番機を足止めするどころではなくなっていた。11番機が、A級0067機を相手にせず、ラレイン型へ向かって行くのも止められなかった。
ラレイン型を失ったことでナーガオウ州軍も戦意を失ったようだ。
「これ以上の戦闘に勝機はない。残る4機の回収を急げ」
藤崎准将は、弱々しい声で重甲機兵の回収を命じた。数十分前に「正義は我々にある」と高らかに胸を張った姿はそこにはない。
「藤崎副司令!」
戦艦『ガルーダ』第一艦橋で通信を担当する兵士が、悲鳴のような声で藤崎准将を呼んだ。
「どうした?」
「南部方面軍が、機体の回収に応じません!」
「何だと!」
このまま第2戦団に圧されて、万が一にもA級0067機が撃破され第2戦団に残骸を回収されてしまった場合、藤崎准将の立場は非常にまずいことになる。
A級0067機は、南部方面軍の機体ではなく第3戦団中央本部の機体である。南部方面軍殲滅の使命を受けて中央本部から派遣されたガルーダ部隊が南部方面軍に寝返った物的証拠になってしまう。
量産型のGV4ならば、残骸を回収されても何とでも言い訳はできる。A級とGV3型だけは、第2戦団に絶対に渡してはならない。
「A級0067機とGV3型を何としても回収する。生存しているパイロットもだ。南部方面軍に空中移送機を飛ばすように要請しろ!」
だが、南部方面軍の黒田准将からの応答はなかった。
藤崎准将と同じ懸念を抱いていたのは、州都で第2戦団と対峙していたA級0067機のパイロットであった。
SVの山根大佐とCRの藤堂中佐も、撤退の術を検討していた。




