第140話 ラレイン、撃破
11番機と正面衝突しそうになったラレインは、機首を右に向けた。それで11番機の側を通り過ぎるつもりだった。
しかし、11番機は背面の主推進機関を点火して、そのラレインに敢えて機体をぶつけてきたのだ。11番機と接触したラレインは、弾けて飛んで錐揉み状態で東側のオフィスビル街へ突っ込んでしまう。
一方、11番機はほとんど損傷ない状態で地表へ着地した。
「全く……お前の専用機だぞ。もっと大切に扱えないのか?」
11番機は『日嗣皇子の専用機』として象徴的な意味もある。万が一にも、敵機に討ち取られてしまえば、追従する部隊の士気に関わる。いちいち「差し違え」をするような戦い方は避けて欲しいと月夜見は思う。
3棟のオフィスビルを半壊させて不時着したラレインは、人型形態に変形して立ち上がる。ペルセウス型に比べて華奢に見えるジークフリード型だが、ラレインは更に細い四肢の体躯をした機体だった。
「11番機には、機能低下を生じさせる損傷はない。さっさと片づけろ」
ラレインが細剣を構えて迫って来る。機動性だけが取り柄のラレインが、機動性に劣る人型形態での戦闘を仕掛けると言うことは「不時着時の衝撃で飛行能力に支障をきたした」のだろう。
ラレインの細剣が、11番機の左椀部を貫いた。ラレインを近距離に捉えた11番機の右腕が、細剣を握るラレインの右手を掴む。
……グワッシャ
ラレインの右腕は、紙細工のように簡単に握り潰されてしまう。
ラレイン型重甲機兵に対して、近衛軍の対策は済んでいた。
ラレイン型と言えど主動力が同じZCF機構なら出力も大きくは違わない。それでいて惑星の重力圏内で「飛行能力」を実現するのは軽量化に成功したからである。重甲機兵の軽量化とは、装甲を薄くする以外にはない。
人型形態のラレインも、比較的機動性は高い。しかし。
捕まえてしまえば、ペラペラな装甲は握りつぶせるほど脆い。決して脅威ではなかった。
「ナーガオウ州軍は、わざわざ宇宙圏からラレイン型を買い入れたんでしょうね。新兵を驚かすしかできない機体に、ご苦労なことです」
11番機の右腕が、ラレインの頭部を殴り付けた。面頬部も、兜部もアッサリと拉げてしまい、素体構造の頭蓋は簡単に潰れてしまう。
ゴォォォン
軽量化されたラレインが倒れ込む音は、やはり軽い音だった。
GV3Xは、対峙しているGV4を圧倒していた。後から到着した2機のGV4は、味方機を援護できていない。
いや。後方の2機は、再び軍用輸送車両に乗って戦場から離脱を図っていた。




