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赤塵のサンダーバード -機兵戦記-  作者: 星羽昴
第一章

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第14話 投降

「投降する気なの? 今更……」


 膝をついて動かなくなったA級ペルセウスから、男性が降りてきた。御堂機の方へ向き直って両手をあげる。


「いまさら……させるかァ!」


 絶叫! 御堂機は握った打刀うちがたなを頭上高く振り上げ、両手を上げるパイロット目掛けて振り下ろす!

 轟音と地響きとともに砂塵が舞い上がるが、それはマルスから数メートル左の場所だった。


「……ちっくしょう!」


 打刀うちがたなを振り上げた瞬間は、確かに殺意があった。しかし、生身の人間には振り下ろせなかった。刃を振り下ろす瞬間、喉から肺までの気道が体温を失い、寂しさとも罪悪感とも知れない感情が軌道を逸らせてしまった。

(いや、まだ玲の生死はわからないんだ)

 早まらないでよかったのだ、と自分に言い聞かせる。


 御堂は拳銃を持って、新型機サンダーバードを降りた。両手を上げているマルスに向き合い、拘束すための手錠を握った。


「起動用のキーカードを投げて下さい」


 言われた通り、マルスはカードを御堂の足下へ投げた。パイロットの生体情報を記録したもので、このカードとパイロットが一致しないと重甲機兵は戦闘モードへ移行できない。


「膝をついて、手も地面につけて下さい」


 起動カードを拾い上げて本物であることを確認する。

 パイロットは30代だろう。小狡そうな顔を見ると、このまま「撃ち殺してやりたい」感情と帝国軍人として「捕虜を正当に扱わなければならない」使命感がせめぎ合う。

 マルスは御堂の指示に大仰に頷いた後、言われ通りに膝と両手を地面につけた。手錠をかけるために、御堂はマルスに近づく。

 バァーン!

 不意に銃声が響く。

 御堂の右肩に衝撃が走った。身体が後ろに押されて激痛が肩から広がる……銃を持つ右手が揺らいだ。

 銃声の後すぐに立ち上がったマルスは、御堂の右手から銃を叩き落とした。右肩の激痛もあって思うように戦えず、御堂は組み敷かれて地面に這いつくばる格好になった。背中にマルスの体重を乗せられ動けない。

 マルスは奪った銃を、御堂のこめかみに当てた。


「悪かったな。嬢ちゃん」


 うつ伏せに組み敷かれた御堂には、マルスの顔が見えない。勝ち誇った笑いのこもる声に鳥肌が立った。


「投降を偽るって協定で禁止されてる卑劣な行為よ、わかってるの?」


「もう後がないんでな。嬢ちゃんみたいな礼儀正しい戦争はやってられねえよ」


 マルスの左手が、御堂の身体をパイロットスーツの上からなで回した。嫌悪感に吐き気がしてくる。御堂は奥歯をかみしめた。


「やりましたね、ボス」


 狙撃銃を肩に担いでフォボスが、A級ペルセウスの影から現れた。卑下た笑いを浮かべるフォボスをちらりと見て、マルスも笑い返した。マルスの左手が御堂の大腿部で止まり、左大腿部のポケットからカードを取り出す。


「これが新型機の起動カードだな?」


 マルスはちらりと御堂を見たが返事は求めなかった。フォボスに向かって起動カードを投げる。


「新型のロックを外しておけ。戦闘はできなくとも、移動するだけなら問題ないだろう。時間はないぞ」


「へい、わかりました」


 起動カードを受け取とると、フォボスはチラリと御堂を見る。


「このまま殺しちまうのはもったいないんじゃないですか?」


 未だに現状の緊急性を甘く見てるフォボスに、マルスの声が厳しくなる。


「馬鹿野郎、ここで第2戦団のA級が来たら何もできねえんだぞ」


「そん時は、この女を人質にすりゃいいん……」


 急にフォボスの身体が硬直し、顔色が変わった。フォボスの背後から伸びた手が狙撃銃を取り上げる。


「チッ、生きてやがったのか?」


 マルスに組み敷かれている御堂からは、フォボスの背後に立つ者の姿は見えない。しかし、マルスの発言から入鹿の生存を確信できた。


「ゆっくり歩いて下さい」


 聞き覚えのある声が、フォボスに指示を出した。フォボスの足が仕方なさそうに、こちらに向かってくるのは見える。

(あたしがこの男を撥ね除ければ逆転できるはず)

 御堂は自分にできることを必死に考えた。

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