第133話 御堂のいる戦場
13:35。
時間的には、南部方面軍の第三陣が到着する頃だが、空中移送機のエンジン音はセンサーには拾われていない。
「南部方面軍に動きはありませんね。あと9機、稼働できる機体があるはずですが?」
南部方面軍が「軍装備の横流しをしている」との噂はあった。万が一それが事実であれば、今頃は駐屯地の格納庫で突然の火災が発生しているはずである。
「まさか、帝国のジークフリード型重甲機兵まで横流しの対象だったんですかね」
「逆に考えろ。一番高く売れるシロモノだ」
半信半疑な射流鹿に対して、醒めた笑いを含める月夜見には確信があるようだった。
月夜見のもとには、安全保障局から秘書官として刀自古が派遣されている。このような近衛軍と安全保障局の関係は慣例として続いており、両者の間で情報の共有と共に、相互の調査も行われる。
しかし第3戦団は、数年前から安全保障局からの秘書官の受け入れを拒否していた。
「面倒な事務仕事を安全保障局が代行してくれるから、我々は近衛軍の本分たる戦いに集中できる。これを拒否するのは、かなり後暗いことをしているのだろうよ」
「後暗いことがあるだろう点は同意しますが、月夜見様の面倒くさがりも常軌から外れている点も考慮すべきです」
エアコンや電子レンジの設定の仕方すら憶えようとしないのが月夜見である。重甲機兵のSVとしての技量は帝国屈指の腕を有する。決して、機械に弱いわけではないはずだが。
11番機の音響センサーが空中移送機のエンジン音を拾った。『朱雀』と『胡蝶』から発進した味方機である。
「味方の空中移送機が先に到着したな」
既にこの戦場からの撤退を決めているので、2機の空中移送機は空のはずだ。このまま直ぐに2機の重甲機兵を帰艦させるか?もう少し敵の出方を待つか?の判断を迫られる。
「帰艦を急がせましょう」
一刻も早く母艦に戻り、南部方面軍とガルーダ部隊を強襲する。それが射流鹿の決断だった。空中移送機着陸後、直ちに搭乗して帰艦する指示を、前方のB級機体2機に送った。
「?」
無人のはずの空中移送機の背に機影が見えた。映像を拡大し、管制AIが機体の画像を分析するが、その解析結果を待つ必要はなかった。
「GV3Xだと?」
垂直離着陸を可能とする空中移送機が、州議事堂敷地の一角へ降りる。1機は空の状態で着陸したが、もう1機の背にはGV3Xが搭乗していた。
「おまたせ!」
地表に降りたGV3XのCユニットで、射流鹿と月夜見の困惑を知らない御堂は脳天気な声をあげていた。




