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赤塵のサンダーバード -機兵戦記-  作者: 星羽昴
第七章

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第132話 和合率

 竜崎中尉と有本大尉、射流鹿と月夜見は軽いストレッチで身体をほぐして機体に戻る用意を始める。


「どうしましょう」


 脱いだダイパー(おむつ)を包んだ布を手にして竜崎中尉は有本大尉を見つめている。


「……」


 Cユニットへ持って行け、と言ったきり有本大尉は相手にしない。恨めしそうな視線で有本大尉を追いかけている竜崎中尉に、射流鹿が口を開いた。


「……わかりました。僕が預かります」


 月夜見と有本大尉が、ハッとして射流鹿を見る。


「ありがとうございます!」


 にっこりと微笑んだ竜崎中尉は、月夜見と有本大尉が割って入る前に、射流鹿の手を握ってダイパー(おむつ)を包む布束を手渡していた。



 2機のA級機体から降りた4人のパイロットを護るために、周囲のB級機体は戦闘モードで待機している。下半身の血行不良を起こさない程度に脚をほぐした4人は、機体に戻った。

 11番機のCユニットで、射流鹿は竜崎中尉からの布束をシート左脇の隙間に詰め込んだ。そして常に左手に持っている軍刀をそこに立て掛ける。


「パイロットのしもの世話までするとは、気の利く指揮官だな」


 Sユニットの月夜見が、射流鹿を揶揄からかう。


「ここで最強の戦闘力を持っているのは、2番機です。竜崎中尉に気懸かりを残させないのは当然の処置です」


 半分は本心、半分は負け惜しみだ。竜崎中尉のおっとりさ(・・・・・)が、母である和泉御前に似ていて捨て置けなかったのが本音だろう。



 月夜見は、射流鹿が優れた指揮能力を持つことを疑わない。軍事的天才と呼んでいいと思っている。しかし、弱点もある。

 A級機体のフレームとなっている天然ゼナ・クリスタルは、人体の神経電流と同調するが相性がある。A級機体の戦闘力は、Cユニット操縦者との相性に左右されてしまう。

 射流鹿の身体は、天然ゼナ・クリスタルとの相性には恵まれなかった。

 天然ゼナ・クリスタルと人体神経電流との同調を和合わごう率と呼ぶ。2番機と竜崎中尉のような強力な機体なら95パーセントを超える。しかし、射流鹿の和合率は、最も相性の高い11番機でも91パーセントしかない。

 もし、A級機体同士で一対一の決闘になれば、射流鹿は不利な戦いを迫られる。



 だからこそ、月夜見は『剣』となり得る強力なパイロットを『射流鹿の側』に置こうとしてきた。それが、月夜見が御堂を厚遇していた理由でもある。

 結果として……それが裏目に出て、今に至っている。

 今更ながら、刀自古の『才能を見る目は確かだが、人を見る目は怪しい』との評価を自戒の念を込めて反芻せざるを得ない。

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