第130話 州議事堂放棄
州議事堂を制圧する第2戦団の白兵戦部隊には、既に撤退の指示が出された。
衆議院議会に71人の議員を閉じ込めたまま、新藤少佐指揮下の白兵戦部隊は州議事堂の施設を放棄して敷地の一角で待機している。
新藤少佐は、11番機の脚下で射流鹿との有線通信を開いていた。
「衆議院議会の扉には、こじ開ければ爆発する爆弾を設置してあります。71人の議員は、しばらく外へは出られないでしょう」
「適切な任務遂行に感謝します。到着している空中移送機で『朱雀』へ帰艦して下さい」
「了解しました」
有線通信を閉じた新藤少佐は、部隊の方へ走って行った。
13:25。
戦艦『朱雀』と『胡蝶』からの第五陣を運んで来た空中移送機は、撤収する白兵戦部隊と第三陣で到着した2機のB級機体を乗せて帰艦する。
空中移送機を見送った後、2番機と11番機は片膝をついてしゃがみ込む姿勢を取った。
2機のA級機体の胸部装甲が開いて、迫り出したコクピットから4人のパイロットが地表へ降りてきた。
「うーーーん、やっと身体を伸ばせましたぁ!」
第一陣で到着してから3時間程度、ずっと狭いコクピットにいた竜崎葉月中尉が背筋を伸ばして声を上げる。
2番機のSVである有本大和大尉は、月夜見と射流鹿のところへ近づいて次の行動に関する打ち合わせを始めた。
南部方面軍の戦力が尽きているとの予測は共通だが、ナーガオウ州軍とガルーダ部隊の動きに関しては一致しない。
「ナーガオウ州軍には、第2戦団に協力する義務が課せられてる。もしも第2戦団と敵対するための戦力を派遣してきたら、その時点で無制限な報復の対象になる裏切りだ。それを敢えてやってくるか?」
「ガルーダ部隊も、このまま温和しくはしていないでしょう」
空中移送機を失って重甲機兵を送り出す手段を失っても、まだ8機の機体は保有しているはずだった。
「ちょっと、そこの男たち!」
竜崎中尉が、有本大尉と射流鹿を呼びつけた。
「ダイパーを替えたいから、これを持って壁をつくってて下さいね」
「え?」
作戦開始から3時間。スーツの下のダイパーにかなりの量の尿を排泄したらしい。
カーテンのような大きな布で四角形を作らせて、その四隅を有本大尉と射流鹿に持っていろと言う。竜崎中尉はその四角形の中に下半身を隠しながら、パイロットスーツの腰回りを外してさっさとダイパーを替えてしまう。
「貴女には羞恥心はないのか?」
「かぶれちゃったら痒いんですよ? 妾、皮膚が弱いんですから」
竜崎中尉と有本大尉の会話は、射流鹿を蚊帳の外においたまましばらく続いた。




