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赤塵のサンダーバード -機兵戦記-  作者: 星羽昴
第一章

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第13話 A級、撃破

 ノコノコと死地へ出てきた新型機を、マルスはまじまじと観察した。真新しい白い装甲が陽光を反射して真珠のように輝いて見えた。

 胸部の装甲形状がかなり違うが、他の装甲には従来型機と大きな変化はない。甲高い駆動音もほぼ同じ、主動力のZCF(ズィーフ)機関は変化なしと考えられる。

 よく見ると機体各部の姿勢制御用推進装置(スラスター)の形状が微妙に違う。推進装置スラスターの改良で動きのキレを向上させた・・・それが新型機の特徴だろうとマルスは直感した。


 新型機に対峙するため、入鹿機の胸部に突き立てたロングソードに手を伸ばす。すると、新型機が小さく身震いするような挙動をしたのをマルス見逃さなかった。


「そうかい。仲間を見捨てられなかったってか?」


 それならば……と、コクピットに突き立てたロングソードを引き抜いてから、更にもう一度コクピットを抉って見せた。

 御堂の頭に血が上り、憤怒の感情が爆発する。それにGS4の機体が反応して、大きく震撼した。


「は! とんだ甘ちゃんだ、戦場に出るのは10年早かったな」


 この程度の死体嬲りで頭に血を上らせてくれるなら儲けもの。マルスは、自分が優位に立っていると信じた。


 次の瞬間、巨大な咆哮が響き渡る。そして、新型機の姿がまるで魔法のように一回り大きくなったように見えた。


「なんだ?」


 新型機の胸部装甲板がスライド式に開いて熱風を吐き出す。咆哮に聞こえたのは熱風の排気音で、廃熱による陽炎かげろうが機体の姿を揺らいて見せた。


「放熱処理か……驚かせやがって」


 しかし、その刹那の躊躇がマルス機を守勢に立たせてしまう。一瞬の間にマルス機を間合いに捉えた新型機は、連続した斬撃でマルス機をジリジリと後退させた。

 マルス機はロングソードすら振るえずに、左腕の固定盾で弾くしかなかった。

 砂地から突き出す瓦礫は、脚部推進装置(スラスター)全開でホバリングしても躱しきれない。足下を気にして蹌踉よろけながら後退する。

 しかし、新型機は瓦礫を容易に躱して、足場を整えて斬撃を繰り出してくる。


「クソ! B級のくせに、なんて運動性だ!」


 いや、B級が関係ないのはマルスもわかっている。操縦者の足さばきだ。改良された新型機(GS4)の推進装置は、御堂の足さばきを巨大ロボットで高精度に再現させることができた。


「こう言う手もあるんだよ!」


 マルス機の背面主推進装置(バーニア)を全開にして、後退せず、逆に前進して体当たりした。両機とも激突の衝撃にバランスを崩す。

 バックパックに巨大バッテリーを搭載するB級機体の方が重心のバランスが悪い。その分、立ち直しに時間がかかる。

 マルス機の方が先に立ち直って、ようやく仕切り直しが果たせた。


 マルス機はロングソードを機体の正面に構えた。応じた御堂機は、打刀うちがたなを下段から右脇へ引こうとする。

 舞い上がる砂塵に、マルス機の下半身が隠れる。マルス機はロングソードを頭上に大きく振り上げて踏み込んだ。

 御堂機は、ロングソードを受けるために頭部の前で打刀うちがたなを真横に構える。


「勝った!」


 マルスは確信した。ペルセウス型のロングソードは重い。強靱に鍛えられたジークフリード型の打刀うちがたなでも、勢いが乗ったロングソードの一撃なら、受けた刃をへし折って機体頭部を粉砕できる!

 ……しかし。


「……駄目か!」


 入鹿機に砕かれた右膝は、マルス機の重量を支えきれなかった。ロングソードに勢いを乗せる前に、地面に右膝をついて立ち上がれなくなってしまう。


 戦闘不能になったマルス機を前にして、御堂機も構えを解く。それを見たマルスは、ニタリと笑った。


「まだまだ運には見放されてねえ」


 サブウィンドウには、最初に撃破されたB級機体のコクピットから、フォボスが這い出しているのが映っている。

 マルスは、機体のバックパックからフォボスに向けて暗号化された信号弾を放ってから、星間協定共通の『投降』を示す信号弾を遅れて打ち上げる。


「さて、幸運の女神様にご挨拶だ」


 胸部装甲を開き、コクピットのハッチを跳ね上げた。血液を思わせる酸化鉄の臭いの混じる外気が流れ込んできた。

 マルスはスライドするタラップを降りて、地面に向かう。

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