第128話 サンダーバード帰艦
「一体……何なのですか、この脆さは?」
GV3XがGV4を撃破するのを確認して、射流鹿も一応は安堵する。同時に、あまりに不甲斐ない南部方面軍に対しての憤りが漏れた。
州議事堂へ陣取った第2戦団の重甲機兵6機。それを『東西方向から挟撃する』ために布陣したはずの第3戦団の重甲機兵6機は、これで全機が撃破されたことになる。
対する第2戦団の損害はゼロどころか、戦力低下を招くような損壊すら受けていない。
「こんなものだろうよ。むしろ、よくやっている方だ」
月夜見はクスクスと笑いながら、射流鹿の憤りを揶揄かう。
「第一陣で5機。第二陣で6機の重甲機兵を送り込んできたんだぞ。我が第2戦団相手に、雑兵レベルの兵士がよく逃げずにいたものだと感心しているよ」
月夜見の、暗に含ませた意図は射流鹿に伝わった。上層部の意図はともかく、現場の兵が怖じ気づいて逃亡を企てる頃合いと言うことだ。
「では、我が軍も撤退の用意を進めます」
「そうだな」
12:45。
第2戦団の『朱雀』と『胡蝶』から第四陣の重甲機兵2機が到着した。
「やだ、戻らない!あと二機、撃破しないとトイレ掃除がぁぁぁぁ!!」
第二陣で到着した新藤《098》機とGV3Xに、帰還する空中移送機で『朱雀』へ帰艦するよう指示を出すと御堂が唐突に騒ぎ出した。
既にGV3Xのバッテリー残量は、40パーセントを下回っている。今のGV3Xには、先ほどと同じ戦闘を繰り返す継戦能力はない。一度、母艦に帰艦してバッテリーを換装するべきなのは明白だが、御堂には論理的な説得は通用しない。
「トイレ掃除とは、何なのですか?」
「知らん!」
射流鹿だけでなく月夜見も匙を投げる。最早、青柳にCユニットの神経接続を切断させるしかないと判断したところで、新藤中尉が御堂の説得に割って入った。
「戻るぞ、御堂准尉」
「厭です! もう一戦やります!」
「南部方面軍の主力は潰した。次は、ガルーダ部隊の所在を探して叩きに行く」
「え?」
第3戦団本部から『南部方面軍殲滅』のために派遣されたはずのガルーダ部隊。そのガルーダ部隊から発進した2機の空中移送機を、第2戦団は撃墜した。
「ガルーダ部隊との戦闘に備えなければならないのだ。状況を理解したまえ」
「……はい」
渋々ながら、御堂はGV3Xを空中移送機の背に搭乗させる。次いで、墜落機から航行記録を回収した新藤《098》機も、もう一機の空中移送機に搭乗する。
2機の重甲機兵を乗せた空中移送機は、州議事堂を飛び立って『朱雀』へ帰艦する。




