第121話 密約
南部方面軍の黒田准将とナーガオウ州軍司令官ダイ・アグナー将軍は、再び極秘回線で協議をしていた。
「ナーガオウ州軍の重甲機兵を出して頂きたい」
南部方面軍は第二陣として6機の機体を州都へ送る準備を進めていたが、第一陣の5機が10分程度で壊滅するとは想像していなかった。その中に南部方面軍のエース機であるA級0061機が含まれたことで軍の士気は一気に下がっていた。
「それは無理だ。正規軍の多数の重甲機兵は、反対派に合流してルージュピークにいる。州都へ送れる機体はない」
言い訳である。A級0061機も撃破され、南部方面軍の第一陣はいとも簡単に屠られてしまった。第2戦団の圧倒的な強さを見せつけられたアグナー将軍は、怖じ気づいていた。
南部方面軍を切り捨てて、自分だけでも逃げ切る決心を固めていた。
そんなアグナー将軍の思惑も、黒田准将は見抜いている。
「第3戦団本部より派遣されたガルーダ部隊より、内密に連絡を受けました」
「ガルーダ部隊?」
第3戦団本部が、南部方面軍殲滅のために派遣した部隊であり、南部方面軍と敵対するはずだ。ただし、ガルーダ部隊の指揮官である藤崎准将が、黒田准将の元部下であり愛人の噂があったのをアグナー将軍は知っていた。
「ガルーダ部隊は、ナーガオウ州都を第2戦団から解放することを第一目標に変更してくれました。そのために南部方面軍と協力する意思がある、と」
南部方面軍とガルーダ部隊、それにナーガオウ州軍の重甲機兵を合わせれば40機近くの機体が揃う。第2戦団の4倍近い数になる。
重甲機兵の数で圧して、優位な条件で和睦すればいい。南部方面軍だけでなく第3戦団本部の後ろ盾となれば、皇城府とも交渉できるはずだ。
アグナー将軍の当初の意思が揺らいだ。
ガルーダ部隊の『ガルーダ』と『燦』から、それぞれ重甲機兵を乗せた空中移送機が発進した。『ガルーダ』から発進した空中移送機にはA級0066機が、『燦』からはB級GV4が飛び立った。
「よろしいのでしょうか?」
副官は心配そうに問いかけてきた。
「第2戦団は重甲機兵の数の不利を抱えている。援軍として合流すれば、受け入れるはずだ。合流すれば、指揮官である日嗣皇子と接触し交渉する」
日嗣皇子が和睦に応じなければ、南部方面軍側に転じて「日嗣皇子を捕囚」し皇城府と交渉する。
「ナーガオウ州都を軍事的な脅威から解放するのが優先である。正義は我々にある」
藤崎准将は、胸を張って答えた。




