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赤塵のサンダーバード -機兵戦記-  作者: 星羽昴
第一章

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第12話 入鹿機、大破

 A級ペルセウスのコクピットには、警告音が鳴り響いていた。


「いったい何をされたんだ?」


 サブウィンドウには、膝部関節アクチュエーターの異常を知らせる警告が点滅している。マルスには、何が起こったのか理解できなかった。

 メインモニターの中央に映る入鹿機は、左腕を肩から失った状態で片膝をついている。ひしゃげて亀裂の入った装甲は、吹き出す潤滑油に汚れ・・・ボロボロになった機体には戦闘能力が残されているようには見えない。


「馬鹿な!」


 入鹿機は、いつの間にか右手にナイフ型の暗器を握っていた。それを見て、ようやく事態を把握した。


 一方の入鹿は、ナイフ剣先の手応えに満足していた。


歯車ギアの一つくらいは確実に砕いた……」


 思惑を的中させ安堵する入鹿。だが、それが緊張感に隙を作った。

 重甲機兵の顔面部……顎先端部に、マルス機の足蹴りをモロに食らってしまう。入鹿機は大きくりながら宙に浮く。そのまま背中から地面に叩きつけられて仰向けのまま倒れ込んだ。

 コクピットに伝わった衝撃も痛烈で、入鹿自身も動けなくなっていた。


「テメエだけは、絶対に許さねえ!」


 感情的に絶叫していた。マルス機は、ロングソードを握り直して、動けないでいる入鹿機に近づく。


 B級ジークフリードのコクピット。

 肩部関節の破壊……許容限度を越えたコクピットへの衝撃……。けたたましい警告音が鳴り響いている。

 機体は仰向けのため、機械眼球は天空を向いている。メインモニターには空しか映っていない。何とか右手を伸ばしてサブモニターを切り替えて、近づいてくるマルス機を確認した。


 マルス機は動かない入鹿機の胸部に、逆手に握ったロングソードの切っ先を当てた。この胸部装甲の真下にコクピットがある。

 そして一端高く掲げ、勢いをつけてその胸部を貫いた。



 入鹿機の向かった方向から、信号弾が上がった。星間協定の定める共通信号ではない、そして帝国軍と異なる仕様の信号。敵機同士の連絡だろう。

 サブモニターをチェックすると、胸部に剣を突き立てられた入鹿機が映っていた。


「……玲!」


 いつの間にか、御堂は入鹿を名前呼びしている。沸々と込み上げる怒りに、御堂は眼前のディモス機の存在を無視した。

 ディモス機に背中を向けたまま、御堂はA級ペルセウスのいる方向を凝視する。

 A級ペルセウスへ向けて移動するために主推進機関(バーニア)と副推進機関(スラスター)を全開にしようとする直前、ディモス機が背後から襲ってきた。


「邪魔すんなァ!」


 ディモスは、背中を見せているのを好機と思った。しかし、御堂の絶叫と共に放たれた下段からの逆袈裟斬りで、左腰部から右肩までコクピットもろともに抉られてしまった。



 撃破されるディモス機の様子を、マルスはサブウィンドウで視ていた。


「ちぃ!」


 マルスは思わず舌打ちする。信号弾で、自分の到着を待つよう指示を出したはずだが、ディモスは手柄に走った。あの一撃はコクピットごとパイロットを切り裂いたはずだ。


「役に立たねえな……」


 部下への侮蔑より、自らへの口惜しさが言わせる言葉だった。


 マルスは仕事の失敗を覚悟した。


 このまま新型機が全速で後退したら、今の機体では追いつけない。

 ……無制限かついかなる法の制限も受けない報復。

 協定違反を追求する帝国軍から祖国の家族を逃がす必要がある。フォボスとディモスに家族がいれば、それもだ。

 ……子供を学校へ通わせるには身分証も必要だな。

 ……スポンサー様と交渉するネタだけは持ち帰る必要がある。

 今考えることかと思うが、脳裏を過ったら止まらなくなる。


 しかし、事態はマルスの予想を裏切る。

 フォボス機とディモス機を撃破した新型機は、一直線にこちらに向かってくるのだ。


「おいおい、もしかしてホンモノの馬鹿か? あの女パイロットは!」


 マルスは、双眼鏡で見た女パイロットの姿を思い出す。

 二十歳を少し越えたくらい、士官候補の新兵だろう。短い髪の美人だったが、この男のパイロットと恋仲だったりしたのか?

 いずれにしろ、諦めたはずの獲物が向こうから掛かってきてくれたのだ。


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