第111話 包囲戦始まる
各都市国家間を連絡する機甲路。『朱雀』と『胡蝶』は、ナーガオウ州都に近いN16中継基地に入港していた。
戦艦『胡蝶』では、射流鹿と月夜見は11番機のコクピットで待機していた。
第一陣は2機の空中移送機で『朱雀』の2番機、『胡蝶』の11番機を州議事堂へ移送する。空中移送機には白兵戦部隊も搭乗させ、2番機と11番機が州議事堂を包囲するのに合わせて議会を占拠する。
「州議事堂では衆議院議会が、10分前に開場した。我が軍の動きは察知されてはいないな」
機甲路へ入った部隊の動きは、皇城府にしか把握できない。もし、機甲路上空を偵察すれば敵対行為と見なされる。
「敵対関係にあるナーガオウ州なら、偵察してくるかと思いましたが……表だって皇城府に叛逆する覚悟はないようですね」
射流鹿としては、いささか拍子抜けである。明確な敵対行為をしてくれれば、即座に騎行戦に切り替えて州都を焦土化するつもりでいた。
「第3戦団の南部方面軍が後ろ盾についているのだ。安心しているんだろう」
N16中継基地に入港してから、2艦は帝国のネットワークインフラに接続して皇城府からの情報を受け取っている。
同盟議会・元議長だった錦城ジンが、太后へ命乞いをしたこと。
第3戦団本部が、南部方面軍殲滅のためにガルーダ作戦部隊を派遣したこと。
そして、そのガルーダ作戦部隊から第2戦団ルージュピーク遠征部隊に宛てたメッセージも送信されていた。しかし、射流鹿はそのメッセージを開封せずに無視するよう指示した。
「メッセージを開封すれば、こちらが帝国のインフラへ接続できる場所にいることを敵に知らせることになります」
この射流鹿の判断により、ガルーダ作戦部隊の藤崎准将の思惑は最初から崩壊していた。
2機のA級機体による州議事堂包囲と白兵戦部隊による議会の占拠、州議会には『3軍合同演習に関与した者の引き渡し』を要求する。
当然、議会は応じず時間稼ぎをするだろう。そして第3戦団南部方面軍が駆けつける。
南部方面軍本隊の駐屯地から州都までは約80キロメートル。空中移送機であれば往復で60分から80分だろう。
皇城府の情報によれば南部方面軍が保有する空中移送機は6機。18機の重甲機兵を輸送するには180分は必要となる。
対して、第2戦団は空中移送機こそ2機だけだが、往復30分の地点に待機できている。
南部方面軍が第一陣の6機を移送する間に、第2戦団は2回の往復で4機を移送できる。4対6、第2戦団の熟練度なら数の不利は問題ではない。




