第109話 藤崎涼子
第3戦団本部のある都市国家・輝平京から、ナーガオウ州へ遠征部隊が派遣されることになった。
陸上戦艦『ガルーダ』は、第2戦団の『朱雀』と同型の戦艦で、中央と左舷及び右舷に3つのデッキを有する3連型戦艦で6機の重甲機兵と1機の空中移送機を搭載し運用する。
そして『ガルーダ』に伴走する、左舷と右舷に2つのデッキを有する2連型の『燦』と『蒼天』の2戦艦。それぞれ4機の重甲機兵と1機の空中移送機を搭載している。
遠征部隊の指揮を託された第3戦団副指揮官・藤崎涼子准将は、指揮艦となる『ガルーダ』へ乗艦する準備を整えていた。
その場には、同じく副司令官の神津元中将もいる。藤崎准将は、神津中将に現状の確認を求めた。
「皇城府より機甲路の使用許可は出ましたか?」
「先ほど第3戦団本部へ通知があった」
「では、これより『ガルーダ』へ乗艦します」
「ただし、今回の許可は『南部方面軍殲滅』のためのものだ」
「了解しています」
そう言いながらも、藤崎准将には最初からその意思はない。南部方面軍は、非戦闘員も含めれば2万人を越える。それらの兵員を、詔とは言え切り捨てるつもりはなかった。
第2戦団がルージュピーク制圧を放棄し機甲路へ入ったことまではわかっているが、その後の動向は第3戦団には知らされていない。
機甲路には常時監視カメラが稼働していて、それを皇城府が監視している。しかし、南部方面軍と第2戦団が交戦したにより『叛逆の嫌疑を向けられている第3戦団』にその情報は共有されていない。
第2戦団は南部方面軍を攻撃目標とするはず、と推測されている。
ルージュピーク演習場で「否定派」と交戦しながら南部方面軍と戦うよりも、南部方面軍だけの戦闘に集中するために機甲路を移動しているはずだ。
機甲路上で、第2戦団と接触し交渉の場を設定する。第2戦団と南部方面軍の間で和解を取り付ければ、皇城府とて何も言えないはずと藤崎准将は考えていた。
藤崎准将には勝算はあった。
第3戦団本部のナーガオウ州遠征部隊と南部方面軍が合流すれば、第2戦団のルージュピーク遠征部隊は3倍以上の重甲機兵と対峙しなければならなくなる。
必ず、第2戦団は交渉に応じるはずだと確認している。
「くれぐれも、軽率な行動は控えて欲しい。あの有馬月夜見統括司令が、日嗣皇子を出陣させたのだ」
神津中将は、改めて藤崎准将に念を押した。しかし、その意図は藤崎准将には歪んだ形で受け取られる。
日嗣皇子の命は、有効な取引材料になる……と。




