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赤塵のサンダーバード -機兵戦記-  作者: 星羽昴
第七章

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第107話 『胡蝶』小会議室

 ナーガオウ州都に最も近いN16中継基地を目指して移動している『朱雀』と『胡蝶』の2艦は、速度を落として併走していた。

 1機の軍用ヘリが『朱雀』から『胡蝶』へ向かう。『胡蝶』の艦尾に設置されたヘリポートに降りたその軍用ヘリからは、八須賀はちすか大佐と刀自古とじこが降りる。2人は迎えの乗員の先導で、艦内の小会議室へ案内された。

 小会議室には、月夜見つくよみが待っていた。



 小会議室の側に給湯室がある。刀自古はそこを借りて、持参した《《月夜見お気に入り》》の茶葉で紅茶を煎れる。

 紅茶を小会議室へ運ぶ頃には、おおよその話は片付いていた。


「明日の朝には、両艦はN16中継基地に到着する。到着次第、戦闘開始だ。『朱雀』は第一陣としてA級の2番機を移送して欲しい。後続する機体の選定は、八須賀大佐に任せる」


 八須賀大佐は、月夜見の指示に同意して打ち合わせは簡単に終わった。



 無線通信ができれば、数分の電話で終わる打ち合わせだろう。

 しかし、重甲機兵を運用する陸上戦艦では、重甲機兵のZCF(ズィーフ)機構の影響で電磁波が干渉されて無線やレーダーが役に立たなくなる。

 有線ケーブルで繋げられない移動中は無線通信は使えない。機甲路が整備されていなければ、陸上戦艦がレーダー無しで目的地へ到着するのも容易くない。



 八須賀大佐には、もともと日嗣皇子が「入鹿玲」を名乗っていたことは知らされていなかった。事態の急変によって、刀自古が知らせたのである。とは言え……八須賀大佐も太后おおきさきの顔を知っていたので、予想はしていたらしい。

 刀自古は、紅茶のカップを4つ並べた。月夜見と八須賀大佐、刀自古自身の分……そして日嗣皇子ひつぎのみこの分のつもりだった。


大兄皇子おおえのみこ様は、来られないのですか?」


 大兄皇子は帝位継承の候補を差す。刀自古に限らず、帝や太后に近しい者はそう呼ぶ。


「11番機を艦央工廠から中央デッキに移動させている。その立ち合いをしているはずだ」


「では……『朱雀』へ戻る前に、改めて挨拶をして参ります」


 刀自古の用意した紅茶を飲み干すと、八須賀大佐は中央デッキに向かうために小会議室を出た。



 平静を装おいながらも月夜見が喜んでいるのは、付き合いの長い刀自古にはよくわかる。

 射流鹿に「入鹿玲」を名乗らせ士官大学校へ入学させて以来、数年ぶりに堂々と射流鹿を側に置けることが嬉しいのだろう。


「第2戦団の統括司令官が、部隊を部下に預けて別行動とは如何いかがなものかと思います。立場に対しての自覚持って下さいませ」


 刀自古の指摘にも、月夜見は「ふん」と小さく笑うだけだった。

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