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赤塵のサンダーバード -機兵戦記-  作者: 星羽昴
第七章

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105/158

第105話 青柳の御菓子?

 青柳がトイレ掃除から戻った時には、刀自古は医務室にはいなかった。



 整備班の仕事を一段落させた山根エリカも見舞いに来た。いつの間にか、青柳とエリカも親しくなったらしい。


「青柳さん、GV3の基本調整ってどんなことするんですか?」


 青柳の第2戦団本部での仕事は、工廠からロールアウトしたGV3型の初期調整をすることだったと言う。


「あー、アレなんですよぉ。GV4に比べるとGV3ってハンドメイド的な組上げなので、機体ごとにバラツキがあるんですよぉ。各部のアクチュエータの出力とか、レスポンスの許容幅とか……そう言うのの初期化フォーマットですぅ」


「えー、スッゴく面倒な作業になりませんかー?」


「なりますぅ。でもぉ、今生産されるのはGV4ばっかりで、GV3は年に数機しか生産されないで忙しくはないですぅ」


 興田おきた主任によれば、GV3はA級機体へ部品を提供する場合もある。組上工程もA級機体と同じなのだろう。A級機体が少なくなり、量産性に特化したGV4が主力機体になることでGV3の生産数も減らされている。


「じゃあ。実は暇してんじゃないの?」


 うっかり失礼な質問をしてしまう御堂。口に出してから「しまった」と後悔する。


「はい。だからぁ、隣の研究所でシミュレーターやってましたぁ」


 御堂の後悔を意に介さず、青柳は御菓子を摘まみながらニコニコと返事をする。



 本部に隣接している研究所が、もう一つの仕事場だった。生体モニタリングのためにケーブルを身体中に繋げた状態でシミュレーターに入る。研究員に観測されながら作業を行うのは、檻の中の動物みたいな気分だったと言う。


「A級機体のZCF(ズィーフ)機構って日照がある限り稼動するじゃないですかぁ。だからぁ、持久性を検証するときにはシミュレーターの中に10時間入るんですよぉ。栄養補給はパウチの流動食、排泄はダイパー(おむつ)に垂れ流しで……」


 思わずエリカが顔をしかめる。A級機体のパイロットを目指す御堂でも、それを聞くと昇格するのに少し抵抗を感じた。


ダイパー(おむつ)の性能もいいし、流動食に排泄物の臭いを抑える成分入ってるから臭いは気にならないんですけど……かぶれちゃうと、いろいろ痒いんですよねぇ」


 採取するデータに合わせて薬剤の投与を受けたり、体質管理のために食事が流動食になったりと実験動物みたいな生活を送る期間もあった、とか。



「ここに呼ばれたの、スゴく嬉しいんですよぉ。デッキで皆さんに囲まれてると、ついはしゃいじゃいますぅ」


 気兼ねなく御菓子を食べるのも、6年ぶりの青柳だった。


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