第101話 第3戦団本部
第2戦団が帝国の東方域を防衛するように、第3戦団は帝国の西方域を防衛する。しかし、隣接する他勢力との戦いを主とする第2戦団と違い、第3戦団は「帝国と同盟関係にある外郭都市の間を取り持つ」役目が主と言えた。
都市国家の集合体である帝国には、2つの国家形態がある。
首都・不死鳥京から直轄的な支配を受ける直轄領
首都・不死鳥京との契約で同盟を結んでいる自治領
直轄領は「中核都市」、自治領は「外郭都市」とも呼ばれる。
中核都市は帝国憲法を共有するが、外郭都市は独自の憲法を有しており価値観にも差違がある。外郭都市を多く抱える西方域を守護する第3戦団には、戦闘力よりも、各都市国家の間の利害関係を調整する政治力が求められている。
首都・不死鳥京に次ぐ規模の都市国家と言われる輝平京に、第3戦団の本部はある。本部の、ある一室に3人の戦団幹部が集まっていた。
「最悪の状況を想定してみよう」
第3戦団の統括司令官である周防崎竜玄大将が、最初に口を開いた。それを受けて、副司令官の神津元中将が状況の説明を始めた。
「10日前に、ルージュピークにおいて我が戦団の南部方面軍と第2戦団ルージュピーク遠征部隊が武力衝突を起こしました」
衝突は、B級重甲機兵6機と3機による実剣による戦闘。双方とも死者及び機体の損失なし。
「その数日後、日嗣皇子が遠征部隊と合流。遠征部隊はルージュピークを放棄して機甲路に入ったようです」
神津中将は、ここで一旦話を区切る。
「これから先は憶測と不確かな情報も含みます」
声の様子も変わった。口調もゆっくりになり、深刻な雰囲気を醸し出す。
「真しやかに、有馬月夜見将軍が『第2戦団にて日嗣皇子を匿っている』との噂がありました。そしてルージュピーク衝突の際に、大崎中佐と剣を交えた士官候補が太后様にそっくりだったと言われています」
「そして、その直後に日嗣皇子が合流したのか」
「空中移送機の自爆の際に……皆が重甲機兵に搭乗することを優先した中で、大崎中佐は士官候補生に剣で斬りかかる行動を取っています」
「待って下さい」
発言を求めたのは藤崎涼子准将だ。つい先日に死亡した早乙女彩芽少将に代わり、副司令に昇格した女性である。
「大崎中佐が斬りつけた相手が、日嗣皇子であった確証はありません。また、大崎中佐にも相応の理由があったと考えるべきではないでしょうか?」
「今は、故意に最悪の状況を想定する……と言ったはずだ」
「失礼しました」
周防崎統括司令の言葉に、藤崎准将はあっさりと引き下がった。




