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赤塵のサンダーバード -機兵戦記-  作者: 星羽昴
第六章

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第100話 議長の尋問

 帝国・同盟議会で議長を務めていた錦城きんじょうジンは、再び安全保障局本部の尋問室にいた。

 この尋問室で、太后おおきさきからの「議決の投票データを提出する」要請を拒否したのは10日前のことだった。その時は、錦城には自信があった。

 ……裁判で、この不当な逮捕を告発してやる!

 ……ナーガオウ州や外郭都市は、自分の味方だ!

 ……第3戦団だって後ろ盾になってくれる!

 ……そうすれば直ぐに権力の座に戻れる!

 しかし、尋問が終わり独房に戻された時には終身刑が確定していた。その時、錦城は事態を認識した。

 ……自分は、警察に逮捕されたのではなかった。

 ……裁判権を有する安全保障局に逮捕されたのだ。

 安全保障局の闇に閉じ込められたまま、反論の声は封殺されて、ただ「逮捕」と「終身刑」の記録だけが残る……帝への反逆者の烙印と共に。

 それから必死に「もう一度、太后様と話をさせてくれ」と懇願し続けた。それが、やっと叶ったのだ。



 入口から振袖の女性と太后が入ってきた。太后が椅子に座り、振袖の女性はその脇に立つ。10日前と同じ様子が繰り返された。


「さて。お話とは何でしょうか?」


 10日前には目を背けて無視した太后の声に、今は縋り付く。


「私が知っていることを全てお話しします。ですから……」


 ここまで言ったところで胸が詰まってしまう。


「……助けて下さい。……私だけでも」


 太后の双眸が細くなり、貌から感情が消える。


「帝は、卑劣な取引には応じません」


 そう言って、太后は椅子から立ち上がって尋問室の出入口へ歩き出した。側に立っていた振袖の女性は、太后を錦城から隠すように後に続く。



「ま……待ってくれ。私は頼まれただけなんだ!」


 ほんの僅か、太后の歩む速さが遅くなり、小さく振り向いたように見えた。錦城は自分の発した情報に、微かだが手応えを感じた。


「ナーガオウ州軍司令官のダイ・アグナー将軍だ!彼が、第3戦団南部方面軍の黒田准将と一緒に来て『第2戦団を追い出して欲しい』と言ったんだ!」


 太后の足が止まり、ゆっくりと振り返った。


「第3戦団南部方面軍の黒田准将ですか?」


 錦城は、首を大きく縦に振って頷いた。


「そんな小物の要請を、同盟議会の議長が聞くとは思えません。誰かを庇ってらっしゃるのではないですか?」


「……い、いや」


 否定しようとしたが、そこで錦城は察した。

 ……太后には望む名前がある!


「名前を忘れていらっしゃるんだわ。思い出したら連絡して下さいね」


 錦城は、独房へ戻された。たが、手枷や足枷の拘束具は外されることになった。

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