調査-3
朱音はこちらを振り向いた玲を改めてじっくりと見つめる。
初対面のときは余裕がなかったせいか気づかなかったが、今見ると目を引く存在だ。
首を傾げる度に艶やかな黒髪がさらりと揺れ、太陽の光をうけて綺麗に天使の輪を描いている。
夜明けを思わせる不思議な色合いの瞳、薄い唇、整った目鼻立ち――中性的で、どこか近寄りがたい雰囲気を纏っている。
女性たちが頬を赤らめる理由がわかるような気がした。
「ねぇ、ねぇってば!」
いつまでも立ち止まっている朱音にしびれを切らしたのか、玲が目の前に立った。
朱音より頭ひとつ分小さいその姿が、ぐっと距離を詰めてくる。
訝しげに見上げられ、朱音はわずかに肩を強張らせた。
自身が鬼であると知ったあの日から、人との距離には敏感になった。
だからこそ、この近さは朱音の心をざわつかせた。
「......悪い。少しぼーっとしてた。事件があった場所はもうすぐそこだ。」
朱音は一歩下がり、距離をとる。
そのまま玲の横を通り過ぎ、進行方向を指さした。
玲が視線を向けると、桜の樹と三号館と思しき屋根が見える。
澄みきった春の空の下、花びらが風に乗り、きらめきながら舞い落ちていた。
あまりにも穏やかな光景が、これから足を踏み入れる場所の影をかえって際立たせていた。




