表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/15

調査-3

朱音の通う大学の敷地は広く、主に三つの号棟に分かれている。

1号棟は事務や大講義室が入る中心棟、2号棟は専門的な講義や研究室が集まる棟、3号棟は少人数授業やサークル活動が行われる比較的静かな棟だ。

事件現場は3号館の非常階段で、その道のりはゆるやかな坂道と並木道が続き、薄桃色の花びらがはらはらと散っている。

歩みを進めるほどに人影はまばらになり、聞こえる音も風に揺れる枝葉のざわめきだけになった。

二人が坂を登り切った先、うっすらと黄ばんだ白い外壁に蔦の絡まる3号館が姿を現した。


「ここが3号館だ。」

「へぇ、思っていたよりも古そうな建物だね。」

「元々はここをメインにしていたんだが、大学の敷地が広くなる時にサークルとか小人数授業メインにしたんだと。」


通り過ぎてきた1号館や2号館に比べると建物自体が年代経過を物語っていた。

外壁には縦横無尽に蔦が絡まりあっており、厳かな雰囲気すら感じられる。

五階建ての建物は閉鎖されておらず、人の出入りも制限されている様子はなかった。

二人はそのまま建物の裏側に回る。


「あそこに階段がみえるだろ。あれが現場になった非常階段で、その二階の踊り場が先輩が見つかった場所だ。」


朱音が指さす先に非常階段はひっそりと現れ、昼間でも薄暗い影に包まれている。

そのまま近づいてくと、建物の壁に沿って備え付けられた階段は外からは覗けないように側面に壁があり、更に木々が生い茂って鬱蒼とした雰囲気を醸し出していた。

事件が起こったとしても目撃することはできず、その場に居合わせない限りは犯人の顔は確認ができないであろう構造になっていた。

非常階段の周囲に人の気配はなく、階段の入り口には規制線テープが巻かれ、三角コーンや立入禁止の立て看板が置かれていた。

玲は階段を見上げた後、そのまま辺りを見回す。


「普段からあんまり使われていないのかい?」

「あぁ、非常階段(ここ)はあんまり使われてねぇな。特に近道になるわけでもないし、3号館の中にある階段を使うやつの方が多いだろうよ。」

「ふぅん。確かに、周りも木々が多くて鬱蒼としている感じで、あんまり人はこないかもね。」

「まぁ、だからこそ先輩みたいなことが起こったのかもしれねぇが......」


朱音は春日井が落下した時のことを思い出したのか、暗い顔をする。

非常階段の方にはあまり日の光が入ってこないからか、朱音の表情により一層暗い影がさす。


「そういえば、どうして君は事件当日に非常階段に居たんだい?」


玲が話題を変えるように朱音に問いかけると、視線を彷徨わせ、朱音は少しバツの悪そうな顔をした。


「その、俺あんまり人が多いところとか騒がしいところは好きじゃねぇからいつも屋上につながる階段で休憩したり課題したりすることが多いんだよ。あの日もいつもみたいに課題してたんだ。」


朱音は非常階段の影に視線をおとす。

風のざわめきと春先の少し冷たい風を感じながら事件当日、薄暗いその場所に、あの日の光景が蘇る。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ