違和感-1
紫藤の話を聞いて、玲は考えこむように顎に指を添える。
一定のリズムを人差し指でとりながら紫藤からの情報を整理する。
「ちなみに、周防さんの学生証についてですが、普段はどうしているの?」
朱音の学生証が春日井の手に握られていたという事実は、救急隊員が確認している以上、疑いようがなかった。それがそのまま、彼を犯人と警察が判断する一因にもなってしまっている。
ただ、学生証というものが、そう簡単に相手の手に握られている――その状況自体が、玲にとってはひどく不自然に思えた。
「学生証は図書館とか薬品が保管されている研究室に入る時には必須だから、大学にいる間は首からは下げてなくても、ネックストラップに入れて胸ポケットにいつもしまっているんだ。ただ、春日井さんの件の2~3日前から失くしてた。しばらく図書館にも研究室にも行く予定なかったからな。事務室には紛失届は出してないから、証明はできねぇ。......わりぃけど。」
「失くしたはずの周防さんの学生証を、なぜ春日井さんが手にしていたのか......引っかかりますね。」
「可能性としては、春日井君がたまたま拾ったか、もしくは春日井君を突き飛ばした人間が持っていて、揉み合った際にその人物が落としてしまったか、ですね。」
朱音は紫藤の言葉に思いもしなかったと瞠目する。
玲もその可能性については考えてはいた。
紫藤の言葉を反芻する。
もし、学生証が“朱音の手から”離れたのが事件当日より前だとしたら――。
春日井が朱音の学生証を”いつ拾ったのか”によって、朱音が犯人であるという警察の推測を覆すことができる。




