調査-11
研究室の中に足を踏み入れた瞬間、目の前に飛び込んできた光景に玲は思わず一歩、後ずさった。
部屋の中は雑然としており、壁一面に由来も用途も判然としないお面や何かの図、護符のようなものが掛けられており、机の上には古びた文献や開かれたノートや用途の知れない資料が山のように積まれている。
床にも所せましと本や段ボール箱が転がっていて、紫藤という人物の性格が表れているようだった。
ただ、積まれているの本や置かれている箱には一定の規則性もあるようで、不思議と嫌悪感はなく、どこか奇妙な落ち着きを感じさせた。
「あはは、散らかっていて申し訳ない。」
首の裏をかきながら器用に床に転がっている箱や本を避けて部屋の奥に進んでいく紫藤に慣れたようについていく朱音をみて、玲も恐る恐る足を進める。
壁にかけられたお面と目があうような、見られているような、少し居心地の悪い気もするが、慣れてしまえば何てことはないのだろう。
紫藤と朱音はけろっとした様子でお茶の用意をしている。
「えぇっと、確かここら辺にもらいもののお菓子があったと思うんだけ......っわわ!!」
机の上にある資料をバサバサと床に落としたり、積まれている本の山を崩しながら探す紫藤に慣れたように朱音は二次被害にあいそうな本の山を押さえながら、玲に視線を向ける。
「ここ、紅茶か珈琲、あとはほうじ茶しかないけど何飲む?」
「え、あぁ、紅茶がいいかな。」
「おう。そこ座って待ってろ。今度こそ大人しくしててくれよ。」
「はぁい。」
「先生は珈琲でいいですよね。」
「うん。お願いします。」
朱音が指し示したソファに座り、てきぱきと三人分の飲み物の準備をする朱音をちらりとみたあと、未だにごそごそと机の上のものをひっくり返しながら探しものをする紫藤を見る。
紫藤は「あれ、おかしいなぁ。」と首を傾げながらも探し物が見つからないようで、積まれていた本や資料の山が崩壊して悲惨なことになっていた。
うっすらとこの惨状を朱音が片付けることになるんだろうな、と玲は思った。




