4.エリザベス VS カリナリア 3rd.
新年の屈辱を繰り返さないため、エリザベスは情報収集に奔走した。
その結果。二つのことが明らかになった。
一つ目。新年のドレスの謎。
これはなんと、女王が飼っていた愛鳥が亡くなったとのこと。それも、新年が明けてすぐに。
パーティがあったのは五日で、得ようと思えば情報を掴めた。
そして二つ目。クリスマスパーティーでカリナリアのドレスが青かった意味。
その時期、女王の愛鳥が生死を彷徨っていたらしい。
一度回復したが、年が明けてから亡くなった。
(そんなこと、わかるわけがないじゃない! 大体、毎年年が明けた挨拶に来ていたイザークが)
考え、最悪なことに気づいた。
新年の出来事。
イザークの行動。
それらを鑑みると、一つの結論が出る。
(最っ悪だわ。いつからかしら)
カリナリアは、何人もの爵位持ち子息を虜にしている。イザークも、その一員になってしまったのだろう。
生粋の侯爵令嬢のエリザベスが、聖女とはいえ元庶民に婚約者を奪われたのだ。
(あんの、女狐。大人しそうな顔をしてやるじゃない)
カリナリアにしてやられたエリザベスは、復讐の闘志を燃やす。
決戦は、イザーク達三年生が卒業する式典だ。
カリナリアに、卒業式典でのダンス武闘を申し込んだ。
曲は晴れの舞台にふさわしい、ブレリア。よく使われる曲の中で、一番テンポが激しい曲。
エリザベスが最も得意とする曲で、体つきも華やかさも、エリザベスが有利だ。
しかし、ダンス武闘を申し込まれ絶対的に不利なはずなのに、カリナリアは笑ったのだ。
まるで、勝利を確信するかのように。
そして迎えた、卒業式典。
エリザベスは赤地に金の刺繍が入ったドレスを勝負服にした。
対してカリナリアは、金地に碧いフリルが目を引くドレス。
その配色に、一瞬嫌な予感がよぎった。しかしエリザベスは、在校生代表の一人として参加するダンス武闘に集中する。
その、結果。
ダンス武闘は、エリザベスの後ろ盾を抜きにしても圧勝だった。
在校生や卒業生、参列した保護者達からも、エリザベスの方により大きな拍手が送られている。
卒業生代表として、王族としてダンス武闘の進行をしていたイザークが、エリザベスを呼ぶ。
(わたくしの魅力を再認識したのかしら)
弾む足でイザークの前まで行くと、なぜかカリナリアも呼ばれた。そしてあろうことか、イザークの隣に並ぶ。
「エリザベス・ウェービー。今、この場を持って、第三王子イザーク・カーヒローとの婚約破棄を宣言する!」
イザークの発言の後、カリナリアに虜にされていた子息達が拍手をする。
周囲にもそれを強要するかのように前に出て、手を打つ音を大きくした。
拍手の数がぱらぱらと増えたとき、エリザベスが抗議する。
「お待ち下さい! なぜ、わたくしとの婚約を破棄されるのですか!!」
「エリザベス。いや、ウェービー侯爵令嬢。知らないとは言わせない。カリナリアに、暴力を振るっただろう。クリスマスパーティーの後、カリナリアが泣きながら被害を報告してくれたよ」
「そ、それは……い、いえ、お待ち下さい。この婚約は、そもそも両家の繋がりを」
「母上も、ウェービー侯爵も、当然了承済みだ」
「そ、そんな……」
こうしてエリザベスは、家にも見捨てられて王都から追放された。
追放先へ向かう馬車の中でカリナリアが来ていたドレスの配色に気づいても、もう遅い。
イザークの髪と瞳の色だったのは、カリナリアが新しい婚約者に選ばれたということだろう。
追放されたエリザベスには、もう何もできない。