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2.エリザベス VS カリナリア 1st.


 驚いた様子のカリナリアを、中央の踊り場へ行くよう示すエリザベス。カリナリアは困ったように周囲を窺うが、誰も手助けをしない。エリザベスに歯向かえば、女王の機嫌を損ねる可能性がある。


 唯一、イザークはカリナリアを心配する表情を見せるが、エリザベスの一睨みでさっと表情を変えた。

 タンタタンと会場内の手拍子が鳴り続ける。

 イザークに背中を押されたカリナリアは、おどおどしたように前に出た。


 ダンスパーティーは武闘場。

 参加する貴族は皆、ドレスコードがある。

 特に令嬢は、例え踊らなくても、スカートの裾が広がるドレスを着る。


 カリナリアのドレスは、青地で似た色合いのフリルがついているもの。

 対してエリザベスは、赤地に黒の刺繍がされ、且つ動きに合わせて布地に入っている特殊な糸が煌めくようになっている。


(ふふっ。ちょっと、大人気なかったかしら)


 これから舞踏するのは、アレグリアス。

 明るく陽気な曲調のため、明るく豪華なドレスが似合う。


(わたくしの婚約者に手を出したこと、後悔させてあげますわ)


 ダンスの手本を見せてあげると、エリザベスが中央へ行く。

 イザークが歌い始めた。


 歌の調子に合わせ、バッと両手を広げる。

 ピンヒールでタップしながら、右足を腰より高く上げた。

 下ろすと同時にターンをし、またタップをして胸を張るように両手を挙げていく。


 ダンスは、表情も大事だ。会場の全てを取り込むように、各所へ視線を送る。

 タンタタンと手拍子に合わせてタップし、ターンをしてドレスの裾をふわりと広げた。


 次はあなたの番よ、とばかりに、ステップを踏みながらカリナリアの手を取って強制的に中央へ連れて行く。

 エリザベスも手拍子をしながら、カリナリアのダンスを見る。


 カリナリアがイザークを見た。

 イザークが歌のテンポを下げたため、エリザベスが一際大きく、元のテンポに戻すように手拍子をする。


 カリナリアは、戸惑いながら体を動かす。しかしその動きはエリザベスの流れを模倣するばかり。

 覚えは良いようだが、曲と合っていない。曲と合っていなければ、リズムも狂う。


(ふっ。勝ったわね。もっと無様にしてあげるわ)


 体勢を崩して転びそうになったカリナリアに近づき、ピンヒールでつま先を踏みつける。


「っ!!」


 エリザベスの攻撃は、ドレスの裾に隠れていた。だから急にカリナリアが蹲うずくまっても、そういう演出だと思うだろう。

 しかし、曲はアレグリアス。明るく陽気なダンスの中に、蹲るなんて曲に合わない動きはふさわしくない。


 女王が提唱した内容は、「曲調に合わせた表現をする」だ。

 ふさわしくない動きとはつまり、武闘会(ダンスパーティー)での敗北を意味する。




 勝ち誇ってダンスを続けるエリザベスは、見落としてしまった。

 カリナリアが蹲りながら、不敵な笑みを浮かべていたことを。




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