第4話 呆然! 悩めよ乙女?
「…… 悪くないと思いますよ」
美由紀は手にした2枚のレポート用紙に書かれた歌詞を読み終え、眼鏡を外しながらそう答えた。
「ほ、本当ですか美由紀…… じゃなかったコーチ」
雪乃は危うくまた「コーチですっ!!」と言われるところを間一髪で修正して聞いた。アレから試行錯誤の上、マリアと2人でどうにかこうにか言葉をひねり出し、お互いに気に入った部分をつなぎ合わせて歌詞にしたのだ。しかしできあがった詞に2人とも納得はしたのだがどうにも自信が持てず、そこで美由紀に読んでもらい意見を貰うことにした。
「ええ、お二人の熱い想いがヒシヒシと感じられます」
そう言って美由紀は2人に笑いかけ、メイド服の上から無理矢理着た小豆ジャージを脱いだ。その小豆色のジャージに一体どんな意味があるのか全く謎なのだが、どうやら彼女の脳内にある『コーチ』と言う役割には眼鏡同様欠かすことの出来ないアイテムらしい。
「エンジェルデザイア、直訳すれば天使の願いですか…… あの曲のフレーズにはピッタリの言葉って感じがしますよ」
美由紀はそう言って手元のMDラジカセを操作し、智哉の作った曲のMDを再生させた。スピーカーから流れるロック調のバラードを思わせる曲が流れ出し、部屋の空気が曲の色に染まっていった。するとその曲に合わせてマリアが小さな声で今作った歌詞のサビの部分に当たる詞を歌い出した。
「きっと、絶対、本当に、あなたを好きだった It is my desire of the real thing~♪ それだけは忘れないで~ Angel's desire……」
呟くような小さな声だったが、それは透き通った清水をイメージさせるマリアの声だった。
マリアさん、やっぱり歌が凄い上手い。初めて歌詞を乗せるのにもう自分なりのアレンジを入れて歌ってる……
雪乃は生まれつき目が見えないせいか、声や音と言った鼓膜から入る情報にとても敏感だった。音であれば、例えば足音などで人物を8割方特定できたり、友人や知り合いの声から相手の気持ちや大まかな体調まで推測する事が出来るほどだ。そんな鋭敏なセンサーのような雪乃の鼓膜に、マリアの天性とも言える美声が染み込むように流れ込み、雪乃は心地良い気分になった。
しかし、そんな音に対して敏感すぎる感性が、雪乃にもう一つの真実を教えることになった。
『―――想いは込めるから伝わるのです! 熱い心が込められるから、相手にその熱が伝わるのです―――』
雪乃の脳裏に先ほどの美由紀の言葉が蘇る。
マリアはただちょっと曲に合わせて試しに歌ってみただけだった。しかしその歌声は智哉の曲に乗って雪乃の心に響いてきたのだ。ただ何気なく口ずさんだフレーズ。しかしそこに込められた想いを雪乃の鼓膜は確かに感じ取っていた。すると雪乃の脳内にはいつも先頭に立ち、目の前に立ちはだかる脅威に挑む黒衣の男の姿が脳裏に浮かんできたのだった。
雪乃は直感的に分かった。いや、この場合彼女にしてみれば『分かってしまった』と言った方が正しい表現かもしれない。
やっぱりマリアさん、カゲチカ君のことが……
心の中ですら、恐くて最後まで繋ぐことが出来ない自分と、どうしてもマリアを比べてしまう。こういった時、雪乃はマリアを凄く羨ましく思うのだ。
大胆にして行動的。刃に衣を着せないキツイ口調だけど、その代わりにどんな相手にでも絶対差別せず話すその人間性。自分を曲げない意志の強さ。失敗しても後ろを振り向かない超ポジティブな思考。周りの人間を強引に自分の領域に取り込み、いつの間にか親しい友人にしてしまう強力な個性と麻薬的な影響力。オマケにミスコン2年連続でダントツ優勝するほどの超美貌。
自分とは正反対。自分では欲しいと思ってもぜったい手に入らない物の殆どを持つスーパーガール……
「良いじゃん良いじゃんっ! 良いよこの歌!! あたし達って作詞の才能あるんじゃん? ねえ雪乃っ!」
とマリアは嬉しそうに笑った。そんなマリアを見ながら雪乃は考える。
彼女が、自分の気持ちに気づき、その気持ちに本気で正直になったら……
そう思うと雪乃は苦しくなってしまう。別にマリアが嫌いじゃない。羨ましいと思うことはあるが、同時にあこがれる存在であり、嫌いどころか今ではのりすと同じくらいの友人だ。しかしだからこそ苦しく思ってしまうのであった。
でも…… まだ負けてない! だって私も同じくらい、誰よりも彼が好きなんだもんっ!!
「ええ、私とマリアさん、2人分の想いが詰まってるんだもの、良い歌になるハズです。と言うか絶対良い歌にするんですっ!」
そう、この歌詞に込めた私の気持ちが、カゲチカ君に絶対届くって信じる。雪乃がんばるっ!!
雪乃は拳をつくってそうマリアに言った。マリアはその雪乃の妙なテンションに一瞬面食らいながらも「そ、そうだよね!」と答えるのだった。
「よ~し、このノリのまま、もう一曲、今度は曲無し状態で作っちゃおうか!」
そのララの宣言に雪乃も「お~っ!」と答えてパソコンに向き直り、カタカタとキーボードを打ち込んでいった。
そうして数時間後もう1曲も作り終わり、その歌詞をまた美由紀に読んで貰って、若干の修正を経てようやく2曲分の歌詞が完成した頃には、外は日が落ち暗くなっていた。
「ふい~っ、やっと終わった~ あたしこんなに机に向かって何か書いたのって受験以来かも」
と美由紀が運んできた本日3回目の紅茶を口に運んだ後、そう言って机に突っ伏した。
受験以来って…… じゃあ普段の講義は何してるんですか……
と心の中でツッコミを入れる雪乃もため息をつきながらノートパソコンを閉じた。
「でも良かったぁ~ 作詞する事になって一時はどうなることかと思ったけどね」
そう言ってテーブルに頬杖を付いて笑うマリア。
「作詞することになったのはマリアさんのせいじゃないですかーっ! 何そんな人ごとみたいに言ってるんですか!?」
「やぁ~だ雪乃ぉ~ 細かいことは気にしな~い。良い詞出来たんだしぃ 結果オーライってことで♪」
こ、こ、コノヒトってホントにもう……っ!!
「マリア様、本日は後夕食をご用意させていただきますので、お召し上がりになって行ってくださいませ」
とそこで美由紀がマリアを夕食に誘った。それを聞いて雪乃も頷きながら言った。
「美由紀さんそれ良い考え。マリアさん、是非ご一緒していってくださいよ」
しかしマリアはその誘いを渋い顔をして断った。
「くぅ~っ! 食べたいのは超山々なんだけど、今日はこれからバイトなの。雪乃んちのごちそうなら普通バイトなんて逝ってヨシ! なんだけど、今日はあたしが企画したイベントの日でさ、それに時給倍になるんだ~ あーくそっ、なんでイベント今日にしたんだろっ!」
実は企画した自分が独断と偏見で日程決めたのだが、自分の計画性の無さとかには一切触れない。人生の4割をその場のノリと思いつきで生きてるマリアである。
そうして帰るマリアを美由紀と2人で見送った後、雪乃は再び部屋に戻りさきほどのMDを再生しながら先ほど作った詞を口ずさんでみた。
うん、良いかも……♪
この詞を見せたとき、そしてこの詞がみんなの演奏で歌になったとき、智哉がどんな顔をするのかを想像し、雪乃は自然と頬が緩んでしまう。目の見えない自分にそれを見ることは叶わない事だとは分かっている。でも彼の声からその顔を想像することが楽しみで仕方がなかったのだった。
「さて、雪乃様」
とそこへ美由紀が雪乃に声を掛けた。自分がニヤニヤしていたことが分かっていた雪乃は恥ずかしさで顔を真っ赤にしながら慌てて振り向いた。
「は、はいぃ!」
「御夕食までに、まだ少々時間がございます。そこで…… 少々お待ちを」
美由紀はそう言って胸元から眼鏡を取りだし、それを掛けた後今度は先ほど着ていた小豆色のジャージに袖を通し、メイド服のロング丈スカートの中からするりと竹刀を出した。
目の見えない雪乃だが、ただならぬ気配を感じ、ごくりとツバを飲み込み恐る恐る美由紀に質問した。
「あ、あ、あの美由紀さん? な、何を……」
雪乃の言葉が終わらない内に、美由紀は手にした竹刀を逆手に持ち、その切っ先を床にドンっと付いた。その音に「ひっ!」と雪乃は引きつった声を漏らして硬直する。
「歌詞は出来ました。曲の方も遠からず出来上がるでしょう。さあ、ここからが我々の本番です」
美由紀の眼鏡がキラリと光る。当然雪乃には見えるはずもないが、この部屋に満ちる異様な空気が恐怖を促進する。
「あ、で、でも美由紀さん、ほ、ほほ、ほら、私今日、慣れない作詞してちょっと疲れが……」
「それは存じ上げております」
空調で完璧に快適温度に調節された部屋のハズなのに、寒く感じるのは何故だろう? そんな部屋にひんやりと響く美由紀の声。
「ですがあなた様にはもう一つ、とても重要な課題があります。おわかりでいらっしゃいますね?」
こ、こ、こわ――っ! 美由紀さんこわ――――っっ!!
さっきまで脳内で繰り広げられていたピンク色の妄想はどこかに吹っ飛び、代わりに背中に冷たい汗が走っている。
「じ、じゃあ、私キ、キーボード持って来ますね」
その隙に地下のお兄さまのラボに隠れて……
頭の中で必死に逃走方法を考える雪乃。
「その必要はありません。テーブルの横に用意してございます」
その言葉に雪乃は左手をテーブルの外に移動させると、そこには確かにキーボードの手触りがある。マリアと一緒にいたときは間違いなく無かったはずなのに、一体いつのまに用意したのか全く分からない。
「さあ、練習の時間です。これからは家にいるときは食事と入浴、睡眠以外は全て練習に当てます。『絶対良い歌にするんですっ!』私はあの決意の言葉に胸を打たれました。エンジェルデザイア…… 雪乃様が無事デザイア【願い】を遂げる為、不肖疾手美由紀、いえ、『コーチ美由紀』が全身全霊でご教授いたします! さあ、超特訓です。その指の関節が動き続ける限り、たとえ爪割れようともっ!!」
そんなのいやぁぁぁ――――――っ!!
そう心の中で絶叫しながら、雪乃はその後夕食までの1時間半に加え、夕食と入浴後の眠るまでの4時間、半べそで鍵盤を叩くハメになった。そのせいでその夜、大きな手足の生えたキーボードが竹刀を振りながら追い掛けてくるシュールな悪夢にうなされることになったのだった。
☆ ☆ ☆ ☆
そして週明けの月曜、智哉とマリアは再び学食で雪乃と会ったのだが、雪乃はのりすと2人で昼食中だった。
「『ド』は『どうしてこんな事になっちゃんだろう』の『ド』…… 『レ』は『連日超特訓で死にそう』の『レ』…… 『ミ』は『美由紀さんは絶対ドS』の『ミ』……」
雪乃はオムライスを食べながら小さな声で『ドレミの歌』を口ずさみ、テーブルの隅の一点をその見えない瞳で凝視していた。
「ど、どうしたの雪乃? なんか変だよ。それにちょっと痩せたと言うか、やつれた感じがするんだけど……」
マリアはそんな雪乃に心配そうに声を掛けた。
「ああ、マリアさん。こんにちはぁ~」
と気の抜けた返事を返す雪乃。目の下にはうっすらとクマも浮かんでいる。
「先週の終わりからずっとこうなんですよ~ 何でも家で『特訓』してるとかで……」
のりすはため息混じりにそうマリアに説明した。
「だ、だだ、だいじ、じょうぶ、で、でで、すか? ゆ、ゆゆ、雪乃さ、ささん」
智哉も心配そうに雪乃に声を掛ける。すると雪乃は智哉にニッコリと笑いかけた。
「ああカゲチカ君、大丈夫デスよぉ~? すこ~し疲れてるだけだしぃ。あははは~」
その時、雪乃の後ろで『ガシャン』と食器が落ちる音がした。どうやら他の生徒がトレイを落としたようだ。
「今の音は『ラ』と『シ』……」
スプーンでオムライスをいじりながら雪乃がぼそぼそっと呟いた。どうやら連日のコーチ美由紀の特訓で絶対音感がインストールされたらしい。元々耳が良いだけに音自体を憶えるのは早いのかもしれないが、それにしてもこの短期間で身につけられる感覚ではないだろう。恐るべし美由紀の『超特訓』なのである。
「『コーチ、もう指が動きませ~ん!』『どうした雪乃! お前の想いはそんな物か!?』『爪が割れそうです~っ!』『割れてから言いなさい!』…… キーボードが、キーボードが襲ってくるーっ!! ううっ、竹刀…… 竹刀やめてーっ!!」
雪乃はそんな一人芝居を演じた後、テーブルの上で頭を抱えている。端から見ればコントにしか見えないのが哀しいところだった。
「美由紀ちゃんの特訓、スパルタっぽいもんね……」
そんな雪乃を見ながらマリアはそう呟きつつ席に着いた。智哉は雪乃の隣の空いている席に座った。
「ところで、その後どうですか? コンサートの練習。私マリアさん達の演奏すっごい楽しみなんですよ~」
とのりすは笑ってマリアに聞いた。
「ええ順調よ。曲も出来たし残り2週間で完璧にするつもり」
とあっという間にチーズハンバーグをたいらげ、2皿目の親子丼に箸を付けつつマリアは答えた。席に着いてからわずか2分と少々、相変わらず手品のようなマリアの食べっぷりだった。
「曲が出来た…… ってことは今回用の新曲なんですか? うわぁ、ますます楽しみです。それに雪乃も出るんだし絶対ノリノリで応援しますね~!」
「そうなの、出来たてほやほやの新曲なの。それで今日初めてみんなで集まって合わせてみるのよ」
とマリアは言うが、そもそも新曲も何も今回作った2曲しか無いのである。そんなマリアの言葉に呆れながらチャーシュー麺をすする智哉だった。
「ゆ、ゆゆ、雪乃さん、ほ、ほ、ほんとに、だ、だ、だい、じ、じ、じょうぶな、な、なの?」
智哉が隣で心配そうに雪乃を覗き込み声を掛ける。すぐ近くで智哉の気配を感じた雪乃は慌てて顔を上げる。
「だ、大丈夫ですよっ、もう好きな想いが届くならこんな疲れぐらい……」
「す、好きな、お、おお、想い?」
雪乃の言葉に首を傾げる智哉。雪乃は慌てて弁明する。
「いやいや、きょ、曲に、た、音楽好きの魂を込めるんです。ソウルハイッテル? みたいな、あは、あはは」
ななな、何言ってるの? 私のバカバカバカ――――っ!
「ゆ、雪乃さん、ちょ、ちょっと、か、かか、変わった、よね」
あ、ああ、わ、私のキャラが…… 絶対アホだと思われてる。もうダメだ死のう……
「マ、マリアや、ぼぼ、僕に、あ、ああ、合わせて、む、無理して、な、なな、ないです、か? い、い、一緒に居て、ぼ、ぼぼ、ボクは、た、たた、楽しい、で、ですけど。こ、今回の、バ、ババ、バンドの、こ、ここ、ことも」
一緒にいて楽しい――――――っ!?
ああもうダメ~ 寝不足もあって意識飛びそう。コーチぃっ、幸せすぎて死にそうですぅーっ!!
智哉の言葉が雪乃の脳内でどんどん増殖していく。自然と口元が緩み、熱くなった頬を両手で押さえる。さっきまであれほど引きづっていた疲れが嘘のように引いていった。恋は盲目という言葉があるが、雪乃の場合実際に盲目なだけにその影響は大きいようだった。
するとマリアが食事が終わり立ち上がった。
「じゃあ雪乃、後でスタジオでね。ほら行くよカゲチカ! あんたいつまで食ってんの?」
と言って智哉の襟首を引っ張る。それはまるで首輪を引っ張られるイヌのようだった。
「お、お、オイ、ま、まま、まだ、た、た食べ終わって、な、な、ないから……」
と抗議する智哉を無理矢理立たせるとマリアは智哉に自分のトレイを持たせ、引きずるように離れていった。智哉が1杯のチャーシュー麺を食べる間に3品全てを完食したマリア。魔界にリンクした胃袋というのもあながち間違いじゃないのかもしれない。
マリアと智哉が行ってしまったあと、雪乃がオムライスの最後に一口を口入れると、向かいに座るのりすがポツリと聞いた。
「ねえ雪乃、あのカゲチカ君って人でしょ? 雪乃が好きな彼」
丁度オムライスを飲み込んだ瞬間だったので、雪乃は思いっきり咽せこんだ。
「ごほごほ……っ な、何で……!?」
「だって雪乃わかりやすすぎでしょ? モロバレよ」
「も、モロバレ!? 」
「むしろアレだけ動揺して違ったら、雪乃ただの『痛い娘』だよ?」
はは…… 痛い娘ね…… だよね……うじゅぅ
「でも彼も相当鈍そうだし、よっぽどのことがない限り気が付かないわね」
「そうかな…… そうだよね……」
「そうよ、ああいうタイプは今まで女子に好かれたこと無いだろうから、いくら思わせぶりな態度をしても『そんな訳無い』って思っちゃうの。ああ言うタイプはね、もう間違いようが無いぐらい直球で勝負しないと無理ね。自分に球が飛んできても『俺じゃない』って思いこむから気づきもしないわ」
のりすはそう雪乃に説明する。その分析は恐ろしく正確に智哉の性格を言い当てていた。雪乃は頷きながら真剣にのりすの言葉を聞き頷いていた。
「じゃ、じゃあどうすればいいと思う?」
雪乃は身を乗り出してのりすに質問した。メモまで取りそうな勢いである。
「そうね…… もう面と向かって『好きです』って言って、強引にチューでもしない限り無理なんじゃない?」
ち、ちちち、ちゅーっ!? 無理無理無理無理ぜった――――い無理っ! ハードル高すぎててっぺんが肉眼で確認できないよ―――――っ!!
「それ絶対無理だじゅー……」
雪乃はそう言ってテーブルに突っ伏した。脳内で想像するが、お互いの顔にモザイクがかかっている始末である。
「でもそれ越えたらたぶんあっという間に堕ちるわね、ああ言うタイプは。もうイチコロよ間違いなく」
「そんなの分からないじゃん。もしかしたらもう一生口聞いて貰えないかもしれないじゃんっ!」
テーブルに向かってそう愚痴る雪乃。
「それ本気で言ってるの? はぁ~ コッチも同じくらい鈍いといきたか…… こりゃ大変だわ。でもそうか、鏡なんて見たこと無いもんね、気が付かないのも無理無いか」
そう言ってのりすはため息をついた。その言葉に雪乃は少しだけ顔を上げてのりすに聞いた。
「……どういう意味よぉ?」
「雪乃って無茶苦茶可愛いのよ? 尋常じゃないくらい。普通に考えて雪乃のマジ告白にゴメンナサイする男の子なんているとは思えないよ。周りに他の男がいる中でそんなコトしたら、その人生きてないと思う」
のりすは呆れた声でそう言った。
「そんなオーバーな……」
「は~っ、それだけの容姿しててその自覚の無さは犯罪よ、は、ん、ざ、いっ! 雪乃が本気出したら殆どの男子が殺到するわよ。あ~ なんか腹立ってきたんだけど」
「で、でも彼の側にはマリアさんがいるのよ? ミスコン連続ダントツ優勝するほどの美人がよ? 私なんて足元にも及ばないよ」
するとのりすは人差し指を振りながらチッチッチと舌を鳴らした。
「確かにマリアさんは超美人よ。でも雪乃だって負けて無いわ。美人の系統が違うのよ。言ってみればビューティVS萌えって感じかな。来年のミスコン雪乃も出てみたら? 面白い結果が出るよきっと」
ミスコンなんてそんなの無理に決まってる。人前で自分を披露だなんて考えただけで倒れそうだよ。
「それに、彼も絶対萌え好きと見た。あの目は絶対アニヲタでゲームヲタね、恋愛シュミレーションとかにツッコミとか入れてるタイプよ、間違い無いわ。だから雪乃みたいな娘の告白なんかされよう物なら気絶するかもね、まじで」
「それ言い過ぎ……」
雪乃はそう言ってまたテーブルにおでこをくっつけた。のりすは「そんなこと無いって~」と反論していたが、雪乃は聞く耳を持たなかった。
「でもさ雪乃、一つ聞いても良い?」
のりすが改まって言ったので、雪乃は顔を上げてのりすに目を向けた。
「彼のどこが良いわけ?」
その言葉に雪乃は少し考える。雪乃は智哉の『ここが好き』とかって考えたことがなかった。ただ好きなのだ。出来ることなら常に一緒にいたいぐらいに…… 言うならば全部だ。好きじゃない部分なんて、今の雪乃には思い当たらない。
だが、それでもあえてどこが一番好きかと問われると……
「ゆ、勇気があって、カ、カッコイイところ……かな」
そう言ってうつむきながら顔を赤らめる雪乃を眺めながら、のりすは首を傾げた。
「へ~ 彼がねぇ……」
思わず『どこがっ!?』と速攻で切り返したくなったのをぐっと堪え、のりすはそう呟いた。
まあ、目が見えないってのは、こういう場合幸せなことかもしれない……
とのりすは心の中で納得したのだった。
初めて読んでくださった方、ありがとうございます。
毎度読んでくださる方々、心から感謝しております。
第4話更新いたしました。
インターバルが空きまくっていましたが、何故か急に書きたくなり更新しました。読んでくださっていた方には申し訳なく思いますホント。
こちらのお話は相当空いたので内容忘れちゃってるかもしれませんが、読んでいただけたら嬉しいかなと……
くだらないお話ですがおつき合い下さいませ。
鋏屋でした。




