表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/7

第1話 結成! ラグナロク・ニア!?

 前衛の黒衣の剣士の太刀が龍族特有の堅い表皮に弾かれた瞬間、巨体に似合わない俊敏さで大きな前足を振るう。

 弾かれた太刀を流すように側面に構え直し、体をひねって直撃を免れた黒衣の剣士だったが、さすがに体長15mのセラフの一撃を全て受けきることは叶わず、ヒットした衝撃で吹っ飛ばされた。

「シャドウ―――っ!!」

 後方で構えていた白衣の女はそう叫び、直ぐさま呪文詠唱に入る。

『しまったっ! 私のミスだ。タイミングを見誤った―――!』

 そう心の中で毒づきながらも凄まじいスピードで呪文を詠唱し、最後の発動条件である呪文名を叫ぶ。

「メテオバースト――――!!」

 高々とワンドを掲げると同時に、正面で自分たちを睥睨するセラフの頭上に火球が出現する。直径3mほどの球体の中は、この世に存在する全ての物を燃やし、溶解し、蒸発させる灼熱の地獄の業火。凄まじい高温のせいか、周囲には陽炎のように空気が揺らいで見える。

 その膨大な熱エネルギーを凝縮した弾が、次の瞬間、対象物の努吼とともに逆落としに降りかかった。

 閃光と衝撃、爆音と熱風。瞬時に超高熱にさらされた空気が、爆発的に膨張し周囲に大きな渦を作り、同時に肺まで焦がしそうな熱風が辺りを席巻する。

 爆炎系、または燃焼系に大別される魔法では最高位の呪文『メテオバースト』

 レベル30を超える魔導士の特権とも言えるそれを、平然と唱える白銀の魔女。

 少し大きめの瞳には、知性の色をたたえ、されどその顔立ちは『美人』と言うよりまさに『美少女』と評した方がふさわしい表現だろう。

 幼さを残した愛くるしい顔立ちとは裏腹に、その少女はこの世界では最大級の『暴力』を振るった。

 灼熱の業火は爆心地に大きなクレーターを残し、出現した時と同じように速やかにその勢いを失っていき、しばらくして消滅した。中心にいたであろうセラフは影も形もない。 少女はそれを確認するよりも早く、先ほどセラフの一撃で飛ばされた黒衣の剣士の方に走り出した。しばらくして、大きな岩の影で蹲る彼を発見すると、さらに急いで駆け寄る。

「シャドウ! 大丈夫っ!!」

 蹲る彼の傍らに跪き、そう必死に呼びかける。

「あ、ああ、大丈夫だ。ちょっと間抜けな避け方をしただけだ……」

 彼はそう言いながら上半身を起こして少女に笑いかけた。その彼の反応に安堵し、少女は深い息を吐いた。

 日頃彼女の通り名である『絶対零度の魔女』からは、ちょっと想像できない仕草だった。

「ごめんなさいシャドウ。タイミングを見誤ったわ。魔法を行使するのが遅すぎた……」

 そう謝罪しながら、スノーはシャドウに右手を差し出した。

「いや、アンタのせいじゃないさ。結果的にスノーのおかげで俺はこうしてデッドしなかったんだしな……」

 そう言ってシャドウはスノーの右手を掴み、起きあがろうとした。

 その時、少しバランスを崩したのかヨロッと足がもつれ、シャドウはスノーにもたれ掛かった。

『えっ? えっ?? ええ――――っ!?』

 いきなりの状況にスノーは慌てた。さらにシャドウはダメージが残っているのか、自分に体を預けてくるので、それを支えようとするスノーは丁度シャドウと抱き合うような格好になってしまい、ますます動揺する。そして耳元に近づいたシャドウの口から、さらにそれを加速させる言葉が……

「いつも助けてくれて感謝しているよ、スノー……」

 その言葉と同時に、背中に回ったシャドウの腕に力が入った。

「俺はスノー…… いや、雪乃の事が…… 好きなんだ…… 愛してる」

『あ、あ、あ、あの……コレって……告白―――――!?』

 高鳴りすぎる鼓動で心臓が口から飛び出そうなほどだ。頭の中が真っ白になっていくのとは反対に、その自分の鼓動が相手に悟られるんじゃないかと、そういうところだけ妙に冷静に考えている自分がいた。

「あ、あ、あの、シャ、シャドウ…… そんなこと言われてもっ…… ほ、ほら、み、みんな見てるし―――」

 と言いながら周囲を伺うが、さっきまで一緒に戦っていたメンバーの姿がない。この状況が全く理解できないスノーは混乱する頭で状況を整理する。

『一体どうなってるの? さっきまで戦っていたはずなのに…… いきなりこんな場所で告白されるなんて! ―――でもコレってチャンスかも……』

 恥ずかしい気持ちと、嬉しい気持ちの狭間でオーバーロードしかける頭の中には、自分の都合のいい妄想しか浮かんでこなかった。そしてつい言葉に出た本音。

「あ、で、でもララ―――マリアさんが……」

 そう言う脳裏に自分とは正反対の破天荒な女性がよぎる。彼の傍らにいつもいる女性には、自分は絶対勝てない気がする。彼はいつも『虐げられている』と言っていたが、端から見た2人は他の人が入り込めない何かがあるように思えてならない。

「マリアは関係ないよ、俺は雪乃が好きなんだ……」

 その言葉にスノーは天にも昇るような気持ちになり、自然にシャドウの背中に回した手に力が入った。

「わ、私も、シャドウ…… いえ、カゲチカ君のことが……」

 スノーは自分の気持ちを伝えるべく、一世一代の勇気を振り絞る。

『言うのよ、雪乃っ! セラフィンゲインは平等に勇気が試される場所でしょっ!……ちょっと違う勇気だけど……』

「好き―――――」


☆ ☆ ☆ ☆


「雪乃様、お目覚め下さい」

 あれ? この声は――――?

「雪乃様、起きてください、雪乃様!」

「……美由紀さん?」

 そう言って雪乃はベッドから上体を起こした。

「まだ夢の中でございますか? 雪乃様」

 そう言いながら雪乃専属の世話役兼お部屋係の美由紀はクスリと微笑み、ベッド脇のカーテンをあけた。

「ロマンティックな夢だったんですか?」

 カーテンをフサ掛けにまとめながらそう聞く美由紀の言葉にびっくりする雪乃。

「み、美由紀さん? 私寝てる時に、なにかその……」

 恐る恐る聞く雪乃に美由紀はニッコリと微笑みながらこう答えた。

「ええ、お布団をこうぎゅーっと抱きしめて『好きーっ!』って…… 雪乃様にもそう言える方が現れたのですねぇ…… もしかして、前にお屋敷にいらしたあの方ですか? あのジブリーが握手した……」

 その美由紀の言葉に雪乃は耳まで真っ赤にして俯いた。

 さ、最悪だわ……

「あ、あの美由紀さん。このことは秘密に…… くれぐれも、その、在志野さんには……」

「はいはい、言わないでおきましょう。さあ、早くしないと講義に遅れますよ。お召し物は用意しておきますので、お顔を洗ってきてください」

 そう言って美由紀は部屋を後にした。

「はぁ…… それにしてもリアルな夢だったなぁ」

 夢の内容を思い出すと、また鼓動が高鳴ってくるのを感じて布団に顔を押しつけた。

「欲求不満なのかな…… 私……」

 そう呟きながら、雪乃は枕元にある杖を持ってゆっくりとベッドを降りた。


☆ ☆ ☆ ☆


 昨日見た夢のせいで、午前中の講義もいまいち集中力が欠けてしまう雪乃だった。

「どうしたの雪乃? なんか今日は『心此処にあらず』って感じじゃない?」

 午前中の講義が終わり、学食で昼食を取っているときに同じ学部の同級生、北野森のりすがそう声を掛けてきた。のりすは雪乃が入学してから知り合った友達で、何かと目の不自由な雪乃を気に掛けてくれる親友だった。

「ちょっと夢見が悪くて……」

 いや、むしろ良すぎたと言った方が……

「へ~、夢ねぇ……」

 そう呟きながら、のりすは学食人気ランキング3位のナポリタンを口に運んだ。いつもは研究室で美由紀の作ったお弁当を食べるのだが、今日は昨日の夢のせいか、お弁当を忘れてきてしまったのだった。すぐに気づいて自宅に電話を掛けると、持っていくと言う美由紀に、なんだか悪い気がして断ったのだった。

「よっぽどの夢だったんだね。雪乃がお弁当忘れちゃうぐらいだったんだもの。どんな夢だったの?」

 のりすの言葉に、雪乃はお気に入りである学食人気ランキング1位のスペシャルオムライスを運ぶ手を止めた。思い出してしまうと、また鼓動が高鳴り顔が熱くなる感じがした。

「ちょっと言えないの……」

 そう答えるのが精一杯だった。そんな雪乃の変化にピンときたのりすはすかさずツッコミを入れる。

「……さては男ね」

「いや、で、でもアレは夢だし、彼があんなこと言うわけないし……」

 その雪乃の反応に、のりすはにんまりする。

「やっぱりなぁ、雪乃わっかりやすいなぁ~」

 のりすの言葉に雪乃は自分がカマを掛けられ、見事に引っかかった事をさとった。

 や、やられた……

 いつもの自分なら、こんな誘導尋問めいた言葉に引っかかるわけはないのだが、どういう訳か今日は物の見事に引っかかってしまった。やはり夢の影響が出ているようだ。

「ねえねえ、誰々? 私の知っている人? その人イケメン? つっても見えないから判らないか……この大学の人? もう告白したの?」

 のりすの『告白』という言葉に反応して、さらに鼓動が早くなる。

「そんな告白なんて絶対無理っ! 第一私なんて彼は興味ないかもしれないし…… きっとただのチームメイトとしか見てないだろうし……」

「チーム? 雪乃、なんかサークルでも入ってたっけ?」

 まずいっ! 体感ゲームのチームだなんて、のりすには言えないよ~

「あ、い、いや、個人的にやってる、お、楽器関係でちょっと……」

「ふ~ん、雪乃楽器なんかやってるんだ。何やってるの?」

 ヤバイ、ヤバイよ~、とっさに出ちゃった。楽器!? 何言ってるのよ私は!?

「わ、私は、キ、キーボードよ。そ、そう、キーボードを担当しているの。ほ、ほら、目が見えなくても鍵盤に印付ければ弾けるし……」

 ゴメンナサ―――イっ! 『猫踏んじゃった』もまともに弾けませ~んっ!!

「あ、そっか。なるほどね~ じゃあ、その彼は?」

 ええっ!? カゲチカ君!? カゲチカ君が楽器!? だ、ダメだ、カゲチカ君が楽器を弾いている姿を想像できないよ~

「か、彼は…… ギター…… そ、そう、ギターを、ひ、引いているのよ」

 バカバカ私のバカ――――っ!!

 あ、あり得ない…… カゲチカ君がギター…… 今ちょと想像しただけでも右手に安綱握ってるし……

「へ~、格好いいじゃない。会いたいわ~」

 神様っ! 今日だけはカゲチカ君が学食に現れません様に……

 しかし、そんな雪乃の願いは甲高い自分を呼ぶ声に消し飛んでいったのだった。

「あれ~? 雪乃じゃない」

 ああぁ! あの声はマリアさんだぁ…… 彼女がいるって事はやっぱり……

「カゲチカー、雪乃がいたよ~っ!」

 マ、マリアさん、よ、呼ばなくて良いから……

「あ、あれって兵藤マリアさんじゃない? 雪乃知り合いなの?」

 と、のりすが雪乃が聞いてくる。

「えっ? マリアさん知ってるの?」

「知ってるも何も、この大学のミスコン2年連続ダントツ優勝の人でしょ。でもそれを全く鼻に掛けずに我が道を行くっていうあのスタイルに、女生徒の大半があこがれているのよ。今じゃ隠れファンクラブもあるって噂だし」

 知らなかった……

 確かにセラフィンゲインでもあの容姿だし、リアルでも相当綺麗なんだろうと思っていたけど、そんなオプションまで付いていたなんて……

「もしかして彼女もその音楽活動に参加しているメンバーな訳?」

「え、ええ、まあ似たような物かと……」

 ダメだ、もはや収拾つかない所まで来ている気がする……

 そこに、今の雪乃が今一番聞きたくない声が掛かった。

「ゆ、ゆ、雪乃さん。ま、ま、また学食で、で、デスカ?」

 カゲチカ君――――!! ああ、なんてタイミングの悪い……

 しかもあの夢のせいで妙に意識してしまい、声を聞いた瞬間、またあの不可解な鼓動の高鳴りが復活してきてしまった。急速に顔全体が熱くなっていく。

 ヤバイよぉーっ、顔が見れないよ―――っ!! 実際には見えてないんですけど―――っ!

 もはや後戻りの出来ないところまで来ている雪乃の心情をあざ笑うかのごとく、何も知らないマリアと智哉は雪乃達のテーブルへとのんきに歩み寄ってくる。

「ゴ、ゴメンのりす。ちょっ、ちょっと待っててね」

 雪乃はそうのりすに告げ、そそくさと席を立ち「どうしたの?」というのりすの言葉を背にマリアの声のする方へと歩いていった。

「何? 雪乃」

 直ぐ前からマリアの声が掛かり、息つく暇もなく雪乃が言う。

「ゴメンナサイ、マリアさん、カゲチカ君。少しだけ私の話に合わせてくださいっ!」

 そんな雪乃の必死さに妙な物を感じ、マリアが聞き返す。

「ど、どうしたのよ、藪から棒に……」

 礼によってマリアは普通の女の子が取るカロリー摂取量のおよそ3倍の量のランチを乗せた2つのトレイを器用に持ちながら智哉と顔を見合わせる。

「あ、あの、理由は後でちゃんと説明しますから、今だけは私の話に合わせてもらえませんか? お願いっ!」

「なんだかよく判らないけど…… まあ良いわ。他ならぬ雪乃の頼みだしね。話を合わせればいいのね?」

 そうマリアは軽く答えた。

 ありがと~マリアさんっ!!

 そう心の中で感謝する雪乃だったが、後にマリアに頼んだことを最大に後悔することになる。そう、マリアは典型的なトラブルメーカー、通称『ビジュアル悪魔』と呼ばれる完全自分中心主義者なのだ。

「コイツはとりあえず女の子の前じゃ上手く喋れないから話を合わせる以前の問題だしね」 そう言ってマリアは智哉の方にアゴをしゃくった。

 そうね、とりあえずマリアさんが協力してくれれば何とかなりそう…… カゲチカ君はとりあえず黙っていてもらって……

 とりあえず下打ち合わせもそこそこに、マリアと智哉は雪乃とその親友、のりすの居るテーブルに着いた。

「初めまして、兵藤さん。私、雪乃と同じ研究室の北野森のりすっていいます。兵藤さんにはずっとあこがれてて、まさか雪乃と知り合いだったなんて……」

 そう言ってのりすは目をきらきら輝かせて自己紹介をした。

 知らなかった…… マリアさんがこの大学でそんな有名人だったなんて…… ますます私じゃ太刀打ちできないよ~

「雪乃の友達ならあたしの友達でもあるわね。宜しくね、のりす。私のこともファーストネームで呼んでよ。そっちのがしっくり来るし」

 出会ってわずか2秒で呼び捨て。完全自分中心主義者、ビジュアル系悪魔の本領発揮である。

「ど、ど、どういう、ろ、ろ、論法だよ、そ、それ……」

 横で座る智哉がぽつりと呟いた。

「雪乃とは楽器関係で知り合いって聞いてるんですけど、兵藤さんは何を弾かれるんですか?」

 そんなのりすの質問に、慌てて雪乃がフォローに入る。

「マ、マ、マリアさんはヴォーカル担当なのよっ! ね、ねえ、マリアさん?」

 ごめんなさいっ! マリアさん!!

「えっ? あ、ああ、そうよ。あたしはヴォーカル担当なのよ……」

 とりあえずマリアはそう答えた。そして……

「それで、こちらの彼が……」

「ぎ、ぎ、ギター担当の、カ、カゲチカ君」

 もう必死の雪乃であった。

「えっ? あなたがギター?」

 のりすが訝しげに智哉を見る。

「えっ、ぼ、ぼ、僕がギ、ギ、ギターっすか?」

 ああ―――!!

 思わず正面に座る智哉の足をテーブルの下で踏みつける雪乃。

「あぐぅっ!!」

 と奇妙な声を上げる智哉。

 ご、ごべんなざ~い!! カゲチカ君―――っ!!

 引きつった笑顔を智哉に向けながら、心の中で号泣する雪乃であった。

 もうダメだ…… 終わった…… 私絶対嫌われたよ――――――――っ!!

「そそ、コイツ見た目はこんなんでも、ギター弾かしたら凄いのよ~」

 そこへすかさずマリアがフォローを入れた。こういう空気を読みとる感覚は非凡な物を見せるマリアだった。

 マリアさん、ナイスフォローっ!!

「へ~、そうは見えないけど…… でも、人は見かけによらないって言いますもんね」

「そうよ。もうね、プロ顔負けって感じ……」

 あ、あの……マリアさん? もうその辺で止めましょうよ…… 何となく深入りされると引っ込みつかなくなりそうで怖いんですけど……

「じゃあマリアさん、今年のバレンタインライブに出ちゃいましょうよ!!」

 な、な、な、何ですか―――? それ!?

 のりすの言葉にただならぬ物を感じ青ざめる雪乃。

「バレンタインライブ? 何それ?」

「毎年やってる学生会主催のコンサートですよ~ 2月14日のバレンタインの日に講堂で開かれるアマチュアバンドのコンサートです。知りませんか?」

「へーっ そんなのやってたんだ? 知らなかった」

 マリアの場合コスプレカフェのバイトでバレンタインは掻き入れ時なので毎年バイトをしていたので知らないのも無理はなかった。

「アンタ知ってた?」

 と横にいる智哉に聞いてみるが、首を横に振るだけだった。

 智哉の場合、12月24日と2月14日はキモヲタにとって死の日なので必要以外家から一歩も出ないと決めている訳で知るよしもない。

「そこでバ~ンと披露しちゃってくださいよ~ 私、マリアさん達のバンドの曲、聞いてみたいな~」

 きょ、きょ、曲を披露―――――!! な、何言ってるのよ~のりす~っ!!

「い、いや、それは……」

「面白そうね―――― よし、やってやろうじゃない!!」

 な、な、な、何言ってるんですか、マリアさ――――――んっ!!

「本当ですか!? 楽しみ~!! 私絶対応援しますねっ!!」

「ちょ、ちょと、のりす、あ、あのね……」

 そう言いかける雪乃の声はのりすの耳には届いておらず、のりすは右手にはめた腕時計で時間を確認すると慌ててこう言った。

「ああ、そうだ。私教授にレポート提出し忘れてたんだ。教授が戻る前に出してこなくっちゃ…… すいません、マリアさん、カゲチカ君。私これで…… 雪乃、じゃあ後でね」

 そう言ってのりすはそそくさと席を立ち、足早に学食を後にしていった……

 あ、ああ…… のりす…… 行っちゃったよぉ~

 がっくりとテーブルに倒れ込む雪乃。その前で黙々とランチを口に運ぶマリア。とりあえずよく判らないので、マリアに習ってランチを食いだす智哉。端から見ればまったくもって意味不明な3人それぞれの行動だった。

 や、やりすぎです、マリアさん……っ!

「で、雪乃。どうしてあたし達がバンドやってることになったわけ?」

 そう言うマリアに雪乃はのりすとの一件を話した。しかしもちろん智哉のことは話せない。とりあえずセラフィンゲインのプレイヤーであることを知られたくないので、とっさに楽器をやっていると言ってしまったことを説明する。

「なるほどね…… しかもコンサートまでやることになるなんてね~」

 と、まるで人ごとのように言うマリア。

 コンサートは完全にマリアさんのせいですぅ―――――っ!!

 と、心の中で絶叫する雪乃だったが、無理矢理話を合わせて欲しいと頼んだ手前、文句も言えない。今更ながら自分の迂闊さを後悔していた。

「どうしよう……」

「なに、バレンタインまでまだ3週間あるんだし、特訓すれば何とかなるわよ」

 そう軽く答えながら、特製海老グラタンの最後の一口を口に運ぶマリア。

「で、で、でも、メ、メ、メンバー、ど、ど、どうするんだ?」

 そこへ智哉がぽつりと呟いた。

「そうねぇ…… 今日あっちでドンちゃん達にも相談してみようよ。それに確かサムもリアルじゃDJやってるって言ってたし、何か良いコネ持ってるかもしれないわ」

「そんなに上手くいくかなぁ……」

 超楽天的なマリアのアイデアに、一抹どころか狂おしく不安な雪乃だった。

「大丈夫よ、バンドなんて多少下手でもノリと勢いで何とかなるから。ね、カゲチカ」

「ぼ、ぼ、僕に、ど、同意を、も、も、も求めるなよ。だ、だ、大体こ、こ、コンサートは、マ、マ、マリアのせ、せ、せいだろ。ご、ご、ゴメンね、ゆ、ゆ、雪乃さん」

「い、いえ、ゴメンだなんてそんな…… 元々私が無理にお願いしたんであって、その、カゲチカ君が謝ることなんて……」

 やっぱりカゲチカ君優しい~♪

 そう思うとまた今朝の夢が頭の中に蘇って来てドキドキしてしまう。


『俺は、雪乃のことが好きなんだ……』


 夢の中でシャドウが自分に言った言葉が、何度も雪乃の頭の中を駆けめぐる。

 カゲチカ君とバレンタインコンサートかぁ…… 自分が出なきゃ最高なシチュエーションなんだけどなぁ……


☆ ☆ ☆ ☆


 そして数時間後、セラフィンゲイン内での沢庵にて……

「――――と言う訳で、急遽バンドを結成することになったんだけど、メンバーが足りないの。ねえ誰か楽器出来る人いない?」

 クエスト前に集まった『ラグナロク』メンバーは、いつもの46番テーブルでクエストとは全く関係ない件でミーティングしていた。

 とりあえず昼間の大学での一件をみんなに説明するララ。

「おいサム、お前リアルじゃDJやってんだろ? お前なんかできねーの?」

 すでに強制的にメンバー入りが確定しているシャドウがサムに質問する。

「ミーはね、アレンジ専門なのネ。前説とかエスコートコールとかならOKだYo」

 そう言いながらサムはオーバーに長い手を万歳する。毎度のことだが、彼のその行動には全く意味がない。

「ねえリッパー、アンタ前にベースやってたって言ってなかったっけ?」

 そこへドンちゃんがリッパーに話をふった。

「確かにやってたけど、もう何年も弾いてないぜ?」

「でもプロ目指してライブハウス渡り歩いてたんでしょ? アンタのバンド」

「えっ? そうなの?」

 とスノーが目を輝かせてリッパーを見る。

「あ、ああ…… でも昔の話だ。今じゃ弾けるかどうかわかんね」

「でも、昔やってたんならちょっと練習すれば出来るわよ。コレでベースは決まりね」

 とまたもや勝手に決めるララ。もはや完全にその気になってエンジン全開なのであった。「後はドラムかぁ…… イメージ的にドンちゃんっぽいんだけど」

「あたしはダメ。楽器って超苦手なのよ。何故か知らないけどあたしが弾くとみんな壊れちゃうんだもん。ギターとかもね、ちょっと力はいるとすぐネックがボキッって……」

 一同沈黙。

 それって「壊れる」じゃなくてきっと「壊してる」んだと思う……

 雪乃は心の中でそう呟くが、此処にいるメンバー全員そう思っていることは疑いなかった。

「私が叩こうか?」

 日頃ちょっと聞き慣れない声に、一同びっくりして声の主を見る。

「サ、サモン…… マジ?」

 リッパーが驚いてそう訪ねる。

「昔、学生の頃叩いていた経験がある。今でも時々渋谷のスタジオで叩かせて貰っている」

 マジで―――!! ありえな―――い!!  サンちゃんって現職のお坊さんなのに…… 木魚だけじゃなくてドラムも叩くなんて!?

 サモンの意外な特技に雪乃は唖然とする。人は見かけによらないと言うが、まさにこのメンバーは見かけによらなすぎる気がした。

「コレで一通りメンバーがそろったわね」

 とララが結論づけた。

「ララ、お前何やんの?」

 リッパーの質問に自信満々で答えるララ。

「あたしはもちろんヴォーカルよ。こう見えてちっちゃい頃から歌ってて、横須賀のベースじゃ結構有名だったんだから」

 確かにララの声は澄んでいて良く通る。それに美人だしステージに立ったら栄えるかも……

 そう思う反面、ますます自分と比べてしまいちょっと悲しくなる雪乃だった。

「確かに歌は上手いよな。良いんじゃないか?」

 とシャドウ。彼は前にマリアに無理矢理カラオケを付き合わされ、50曲ほどノンストップで聞かされた経験があった。

「次はバンド名なんだけど…… あたし、実はもう考えてあるんだよね~」

 妙にやる気のララはどんどん話を進めていく。

「言って見ろ……」

 シャドウはそうララに言った。彼は基本的にこういうネーミングセンスは無いので、こういう事には口を出さないようにしていた。

「『ラグナロク・ニア』ってのはどう?」

「ラグナロク・ニア…… 響きは悪くねぇな」

 と、リッパーが感想を漏らした。そこにシャドウがぽつりと呟いた。

「『ラグナロク』って確か、『世界の終わり』とかって意味だったよな。『ニア』って『近い』とかって意味だろ? つーことはなんだ? 『終わりに近い』って…… グエッ!」

 と、意味を詮索するシャドウの脇腹にララの拳が入る。テーブルに崩れ落ちるシャドウに一瞥しララがしめる。

「余計なツッコミは無し。意味はどうでもいいの。ようはノリとフィーリングよ。このメンバーでやるんだから『ラグナロク』でしょ。ドンちゃんとサムがいないから『ニア』な訳よ」

 そう言い放ち、他のメンバーを見渡すララ。完全にリーダー気取りである。元来仕切屋なだけにこういうことは好きなのだ。

「バレンタインデーまで残り3週間だから特訓しなくちゃならないんだけど、誰かどこかいい練習場所知らない?」

「ああ、それはミーに任せるネ。ミーはこう見えてもDJだYo 貸しスタジオにもコネが利くよん」

 とサムが答えた。

「ホント? サム」

「ララちんの為ならミーはノーインポッシブルね~」

 とオーバーに長い両手を広げてララに言う。どことなくオラウータンの求愛行動に似ている。

「よ~し、メンバー、名前、練習場。オールOK! 明日からみんなで練習よ!」

 拳を上げて「オーッ!」と意気込むララ。

「オイオイ、セラフィンゲインはどうするんだよ?」

「曜日を決めてやればいいじゃん。それで良いでしょ? スノー」

 シャドウの質問にそう答え、ララはスノーに聞いてみた。

「え? ええ…… それに元はと言えば私が原因だし……」

 そう言って語尾を小さくするスノー。のりすに正直に言えば良かったと今更ながらに後悔が沸き上がってくる。

 なんだか大変なことになっちゃったなぁ……

 そう思いながら大きなため息をつくスノー。

「大丈夫よスノー。絶対成功するって。このメンバーなら向かうトコ無敵でしょ。サイコーに格好いいギグにしようよ!」

 と励ますララに微妙な笑顔を向けるスノーだった。

「さ~て、バンド結成式しなくちゃ。あ、おね~さ~んっ、こっちにビネオワ7つおねが~いっ!!」

 と少し先のテーブルの間を歩いているNPCの定員にビネオワを注文するララ。

「あ、あの…… あのねララ。一つ問題が…… その…… 私は……」

 とスノーがおずおずと言った様子で言った。

 そう、重大な問題が残っているんですぅ……

「スノーはキーボードでしょ? 確かに目が見えなくても弾けるってのは頷けるわ。盲目のピアニストなんてカッコイイじゃない。流石お嬢様って感じ」

 とスノーの言葉を先回りしてララが言う。

 ああ…… や、やっぱり…… 

 そのお嬢様ってのも止めて欲しいけど、どうしてこう『ピアノやってる』って標準装備的な考えになるかな……

「あのね、私…… じ、実はキーボードって弾いたこと無いんです」

「えっ、そうなの? でも大丈夫よきっと。ピアノと似たようなもんでしょ?」

 とすかさずララが言った。

 だ、だから、とりあえず一端ピアノから離れてください―――っ!

「でも、ピアノより鍵盤が軽いから最初はちょっと戸惑うって聞くぞ」

 シャドウがララにそう言った。

「そんなもん3週間ありゃ慣れるだろ普通に」

 リッパーが問題なしって顔で答えた。

「いや…… あの、そうじゃなくて、ですね……」

 こまったよ~ 私がピアノ弾ける前提で話が進んでる~っ!

「ところでユー達、楽器は持ってるのかい?」

「俺はあるぜ。サモンは…… 普通持ってねぇか、ドラムのフルセットなんて」

「いや…… 確か寺の裏の倉庫に仕舞ってあるはずです。去年の大掃除の時に見ました」

 サモンはちょっと考えてから答えた。「マジかよ」とリッパーが驚く。

「俺も確か実家にあるはずだ。高校時代に使ったのがな」

 とシャドウも続いて言った。

「え? シャドウってホントにギター弾いていたの!?」

 スノーは驚いた様にシャドウに聞いた。完全なその場の思いつきで言ったのだが、まさか本当に弾けるとは思っていなかったようだ。

「高校時代にちょっとだけ…… かじった程度だけどな」

 スノーの質問にシャドウは苦笑しながら答えた。

 そうなんだ…… 意外だけど、見てみたいなぁ…… カゲチカ君が弾いてるトコ♪ 見れないけど。

「ララはヴォーカルだから良いとして、なあ、スノーはどうする? キーボード」

「えっ!?」

 頭の中でギターを演奏しているシャドウの姿を想像して、ちょっと違う世界に旅立っていたスノーだったが、リッパーの言葉で現実に引き戻された。

 そうだ、妄想トリップしてる場合じゃなかったんだっ!

「あ、あの、私……」

 と言いかけるスノーを遮り、ララが口を挟む。

「レンタルもあるけど…… どうせなら買っちゃえば? お金持ちなんだし」

 ラ、ララ! それ以前の問題なの~っ!

「となるとどこのが良い? コルグM50とかヤマハのS90あたりかな」

「初心者じゃないんだから良い奴の方が、長く使えるだろう。ローランドも結構いい音出るって聞いたぞ」

 とリッパーの言葉にシャドウが反論する。

 いやいやいや、思いっきりド初心者ですから!!

「思い切ってノードつー手もあるな。高けーけど」

 なんだかよくわからない単語が飛び交ってる…… 何でみんなそんなに食いつきいいのよ…… みんな結構音楽好きなんだ…… 私もクラッシックは好きだけどもっぱら聞くだけオンリーだし…… ってそんなこと考えてる場合じゃないってば!

「ちょ、ちょっとまってくださ~い、私ホントはキーボードもピアノも弾けないんです――――っ!!」

 その声に一同静まりかえってスノーを見た。

「マジで?」

 リッパーがスノーに聞いた。

「はい…… 鍵盤のある楽器なんて小学校のピアニカぐらいです……」

「でも、スノー昼間のりすに自分から言っちゃったんでしょ? キーボード担当って」

 スノーの言葉にララがそう聞いた。

「あ、あの時は、その…… 目が見えなくても出来そうな楽器って考えて、とっさにそう言っちゃったんです…… ゴメンナサイ……」

「そうだったのか……」

 そう言ってシャドウは長いため息を吐いた。聞いたララも困った顔でため息を吐く。

「じゃあさ、なんか他に出来る楽器ってあるか?」

 と言うシャドウの問いに、スノーはおずおずと答える。

「触ったことがあるのは、カスタネットとタンバリン、トライアングル…… それに小学校の時のクラス発表会でやったシンバルと…… あ、あと音楽の授業で使ったリコーダーぐらいですかね」

 スノーは自分の使ったことのある楽器を指折り数えながら上げていった。

「9割が単音打楽器か……」

 とシャドウがこぼした。

「ステージの隅っこにカスタネット持って立たしたらどうだ? マスコットみたいに」

 とリッパーが笑いながら言った。

「そんなのネタにしか見えん。第一スノーは「キーボード担当」って言っちゃってるんだぜ、友達に。まあ、幸いキーボードだ。最悪プログラム演奏をあらかじめ仕込んで、本番は弾いてるフリすれば何とかなるだろう」

 シャドウはそう言って考え込む。だがそこに、ララが口を挟んだ。

「そんなんじゃ面白くないわ!」

 ララがいつになく真剣な表情で言った。

 ちょ、ちょっと待ってララ! 『面白くない』とかって意味わかんないからっ! お願いだからもう余計なこと言わないでよ~っ!

「一緒にプレイしてこそ、感動があるんじゃないの? 自分で弾くから魂が籠もるんじゃないの? プログラムの演奏で、観客の心に何か伝わると本気で思ってるの?」

 そのララの言葉に一同静まりかえった。

「下手でも一生懸命、魂込めて演奏する…… バンド魂ってそう言うもんでしょ? スノーは絶対自分で弾くべきよ、それがアマチュアバンドが観客に曲を聴いて貰う最低限の礼儀だとあたしは思うんだ。『決して仲間を見捨てない。一人の願いはチームの願い』いつでも全開の本気モード! それがあたし達『ラグナロク』じゃないっ!!」

 テーブルの他のメンバーは、そのララの言葉に、雷に打たれたように痺れていた。

 か、かっこいい…… 

 ってそうじゃなくて、何こんなところで力説してるのよララ―――――っ!

「いや、あのですね、その、バ、バンド魂とかって……」

 一瞬意味無く感動してしまったスノーだったが、慌てて訂正しようとそう言いかけた時、リッパーの言葉で遮られた。

「悪りぃ、ララ。俺が間違ってた。ララの言うとおりだよ」

「ああ、そうだな。『とりあえず』なんて思ってた自分が恥ずかしくなった、なんか大事なこと忘れてた気がする…… たまには良いこと言うな、お前!」

 シャドウもリッパーの言葉にそう同意した。

 え? ええっ? シ、シャドウ! そこ恥ずかしくならないで良いからっ! このまま行ったら恥掻くの私なんだってば~っ!!

「フ~っ! 流石はララちん、ナイスソウルっ! ミーはベリーインプレシードしたネ」

「バンド魂…… 懐かしい響きだ……」

 サムのトーンの高い声に続いて、口数少ないサモンも目を閉じて頷く。

「あ、あのねみんな、わ、私は別に観客に何か伝えようとかって……」

 とスノーは何かを言いかけるが、スノーの言葉は誰の耳にも届かなかった。

「あたしも感動しちゃったわよ~ う~ん、青春って感じ! いいわね~! あたしもなんだか出たくなっちゃう。超合金かなんかで出来たギターとかってどっかに無いかしらね」

 ドンちゃん…… それもうギターじゃないからきっと……

「そう? いやあたしもね、今ちょっと自分でも良いこと言ってるかな~って思ったんだ」

 ドンちゃんの言葉にそう笑いながら答えるララ。日頃言動を褒められる事の少ない彼女だからか、少し照れたように頭を掻いた。

 みんな何でそんなに熱くなってるの!? 誰か止めてよこの流れ―――っ!?

 そう心の中で絶叫するスノーに、ララがポンと肩を叩いて言った。

「じゃ、スノー、そう言うことだから」

 どういう事ですか――――っ!

「ちょ、ちょっと待……」

 そう反論し掛けるスノーに、まるで計ったかのようなタイミングで彼女の密かな想い人から声が掛かった。

「俺、リアルじゃさ、たぶん言葉にならんだろうから今言っておくよ。急な話で最初は戸惑ったけど、他ならぬリーダーの為だ、俺も久しぶりだし、一緒に頑張ろうな、スノー!」

 そういってスノーに笑いかけるシャドウの顔に、昨夜の夢で見た顔が重なり、スノーはドキドキして見つめ返した。そして結果的にこの言葉が彼女にとどめを刺すことになる。


『俺はスノー……いや、雪乃の事が……好きなんだ……愛してる』


「あ、は、はい、私も……」

 あ、あれ? 私今なんて言われたんだっけ…… 

 あれ―――――っ!?

「よく言ったわスノー、さっすが『白銀の魔女』根性あるよ~ よ~し、なんだか燃えてきた、特にスノーは猛特訓になりそうね!」

 な、何でこんな事に……っ!

 思えば昨日の夢から変なことばかり…… ううぅっ…… ララに相談するんじゃなかった……

 後悔先に立たずの意味を噛みしめる雪乃だった。

「決意も固まったことだし『沢庵』名物、『ビネオワ乾杯』決めようよ! あ、すいませ~ん、さっき注文した46番『ビネオワ』7つまだ来ないよ~っ!」

 と歩いているNPCの店員に先ほど注文したビネオワを催促するララ。程なくしてビネオワがやってきて、皆に杯を回した。

 一同妙なテンションで盛り上がる中、一人放心状態のスノーにララが声を掛けた。

「じゃ、リーダー、『ラグナロク・ニア』の結成を祝って乾杯宜しくっ♪」

 あはは…… ほんとのお酒だったら酔っぱらって忘れちゃうんだけどな……

「みなさん…… がんばりましょうねぇ…… はは……」

「「かんぱ~いっ!」」

 力のないスノーの声とは裏腹、嫌にテンションの高い乾杯コールが響き渡った。スノーは泣きそうな気持ちでその光景を見ながら、やがて「どうにでもなれっ!」と思い、手にした酔えるはずのない酒を一気に飲み干すのだった。

 今日のクエスト、中止にしよう…… グスンっ


初めましての方は初めまして

おなじみの方は毎度どうも。鋏屋でございます。

セラフィンゲインのキャラ遊び、『雪乃さんのバレンタイン?』をお届けいたします。

このお話は私の前作の『セラフィンゲイン』のキャラクター『絶対零度の魔女』の異名をとる美少女魔導士、プラチナ・スノーのプレイヤー世羅浜雪乃【セラハマ ユキノ】が主人公のドタバタコメディーです。

彼女は前作では、ゲーム内でのキャラである『プラチナ・スノー』の時は、冷静沈着にして冷徹な仮面を被った最強魔導士ですが、現実世界ではちょっとスローリーなしゃべり方をする、盲目の女の子です。『セラフィンゲイン』の本編では、たまに迷惑な『泣きキャラ』を演じたりもしましたが、鬼丸という最終標的の妹と言うことで、おおむねシリアスな立ち位置でした。

ですが、今回の彼女はひと味違います。自分が言ってしまったことが災いしてとんでもない事に発展して大慌てです。前作を読まれた方にはそのあたりのギャップを感じていただけると面白いかもしれません。

前作を読んで居ない方でもわかるように書いておりますが、出来れば前作を読んで頂いた方が良いかもしれません。

いやしかし、雪乃が主人公って結構大変だ。リアルじゃ目が見えないから…… なのに彼女視点ってなに?(オイ!)つっこみどころ満載な気がしますが、ソフトにお願いしますw つーか、作者が音楽知識10バイトぐらいなのに大丈夫か? ギタとかベスとかの知識、誰かプリーズですw

鋏屋でした。


次回予告

智哉のことを親友につっこまれ、その場しのぎで付いてしまった嘘のせいで『バレンタインコンサート』に出ることになってしまった雪乃。自分が主催するセラフィンゲインのチーム『ラグナロク』のメンバーを巻き込んでアマチュアロックバンド『ラグナロク・ニア』を結成する。雪乃の沈んでいく気分とは裏腹に、ノリノリのララことマリアを筆頭に妙にやる気のメンバー達。そしてメンバー達はサムのコネで借りたスタジオで『特訓』をすることになったのだが……


次回 『雪乃さんのバレンタイン?』 第2話 『仰天! 美由紀の変身!?』 こうご期待!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ