登場人物紹介~プロローグ
この物語は私の拙作であります『セラフィンゲイン』のサイドストーリーです。物語は前作のラストシーンから続く形で始まりますので、前作を読んでない方にはよくわからない部分があると思います。この話単体でもわかるように書いているつもりですが、所々リンクしているので、この話を読んで興味が沸いた方は、本編も読んでみてください。
この作品から読まれる方のために登場人物紹介をのせておきます。
登場人物紹介
世羅浜 雪乃【セラハマ ユキノ】(スノー)
この物語の主人公。セラフィンゲインでは『絶対零度の魔女』と恐れられるレベル40を越える最強魔導士『プラチナ・スノー』のプレイヤーだが、現実世界ではちょとおっとりとした盲目の美少女。二次元萌えギャルキャラがそのままリアルに居るような容姿を持つ。下に挙げるチームメイト『漆黒のシャドウ』のプレイヤー、景浦 智哉に密かな恋心を抱く。
景浦 智哉【カゲウラ トモチカ】(カゲチカまたはシャドウ)前作の主人公
雪乃がセラフィンゲインで主催するチーム『ラグナロク』の前衛を受け持つ元傭兵の『漆黒のシャドウ』のプレイヤー。ゲーム内では凄腕のキャラだが、現実世界では、完全な秋葉ちゃんで、ヘタレヲタ野郎。緊張したり、女子が2m以内に近づくとどもって言葉が上手く喋れない持病を持つ。しかし彼のゲーム内のキャラ名「シャドウ」と呼ばれると、現実世界でも『漆黒のシャドウ』を演じてしまう仮想二重人格者。現実世界では下に挙げるマリアに常に虐げられ、頭が上がらない。
兵藤 マリア【ヒョウドウ マリア】(ララ)
アメリカ陸軍突撃隊の父と日本人の母を持つハーフでチーム『ラグナロク』の前衛を受け持つモンク【武闘家】ララのプレイヤー。現実世界でもマーシャルアーツの使い手。智哉、雪乃が通う大学の同級生で、その大学のミスコンを2年連続、2位を大差でぶっちぎり優勝するほどの類い希なる美貌の持ち主。その容姿からか男子から交際を申し込まれ、中にはストーカーまがいなことまでする物が現れたが、そのことごとくを病院送りにしたことから『ビジュアル系悪魔』と呼ばれる。容姿とは裏腹に性格は悪魔出来サディストで完全自分中心主義者。ゲーム内ではシャドウに惚れているが、現実世界では智哉を『犬』または『奴隷』として扱う。
真藻鳥 竜平【マモトリ リュウヘイ】(マチルダまたはドンちゃん)
その巨漢とフランケンのような顔立ちにもかかわらず、ニューハーフと言う事から『二丁目ドズル』と智哉に賞される。新宿2丁目に『クラブ・マチルダ』というコスプレオカマバーを経営する。ゲーム内では『ラグナロク』の後衛を勤め、魔法弾を放つ巨砲『撃滅砲』を操るガンナー【砲撃手】マチルダのプレイヤー。その容姿に似合わず仲間内のイザコザには非常に気を遣い、しかも涙もろい。
庚庵【コウアン】(サモンまたはサンちゃん)
ゴルゴ13のデューク東郷似の現職の曹洞宗僧侶。『ラグナロク』の後衛を勤める、回復と守護、及びサポート魔法を得意とする僧侶【ビショップ】サモンのプレイヤー。ゲーム内では智哉とは逆に、ほとんど口を開かないお地蔵キャラだが、現実世界では話し上手で聞き上手。時々『クラブマチルダ』でお客やホステス達に説法を聞かせたり、相談に応じたりしている。もしかしたら『ラグナロク』内ではリアル・バーチャル合わせて一番まともな人かもしれない。
織我貴 臥璃雄【オリガキ ガリオ】(リッパー)
父親が経営する『織我貴精肉所』の2代目で、幼い頃から父親の手伝いで食用肉を捌いているうちに快感を覚え、普段町を歩いている最中でも肉を切りたくなる衝動が出てしまい、それを押さえるのに自分の皮膚を切り痛みでその衝動を抑えるという切り裂き癖を持った危ない男。セラフィンゲインでは不人気な『双斬剣』またの名を『ダブルブレイド』という2本1組の剣を使う二刀流の戦士で、ララやシャドウと同じく前衛を受け持つリッパーのプレイヤー。いつも素っ気ない言葉でツッコミを入れたり智哉をからかったりするのだが、意外に仲間思いな一面もある。
エポックビル・鷲尾アンダーソン・JR
日系のクオーターだが、智哉曰く『どう見ても日本人の遺伝子が混じってない』と言われるほど容姿が完璧な長身の黒人。一見するとNBAの選手のようだが、生まれてから一度も日本を出た事が無く、英語が一切喋れない。そのくせ和製英語を会話の端々に交ぜるので胡散臭いインチキ外人。極度な難聴であるにもかかわらず、何故かクラブDJをやっていて、その業界では結構有名。セラフィンゲインでは、その扱いにくさと熟練度の成長スピードが遅い事から、リッパーの使うダブルブレイドと同じく不人気装備『槍』を使う黒人の『槍使い【ランサー】』イーグルサムのプレイヤー。智哉がかつて所属していたチーム『ヨルムンガムド』で一緒だったこともあり、ゲーム内での智哉とはつきあいが長い。
北野森 のりす 【キタノモリ ノリス】
雪乃の同じ研究室の同級生で雪乃の入学当時からの親友的存在。目の不自由な雪乃の事を何かと気に掛けてくれる。智哉に密かに想いを寄せる雪乃に何かとアドバイスをする。彼女のツッコミに慌てた雪乃は反射的に嘘を付いて誤魔化してしまった事で、学生バンドを結成していることになってしまうのだが……
疾手 美由紀 【ハヤテ ミユキ】
世羅浜家のメイドさん。雪乃専属のお世話係で幼い頃から雪乃に仕えている。雪乃のお姉さん的存在。雪乃が智哉に想いを伝えるのに悩んでいるのを見て、助言を与える。一見クールな出来る女性の常識人っぽいが、世羅浜家の庭で放し飼いされているペット、ピューマであるジブリールとミカールを『大きな猫』と言い切ることから、常識人とは言い難い。本編ではさわり程度しか出てこなかった彼女だが、今回はその変人ぶりがカミングアウト予定。
折戸 英寿 【オリド ヒデトシ】
世羅浜家の専属運転手。以前は英国のとある良家のお抱え運転手だったのだが、4年前に当主が他界したのを期にそこを辞めて日本に帰ってきた。在志野とは旧知の間柄で彼の誘いで世羅浜家の運転手となる。非常に温厚な性格だが、若い頃はラリードライバーでパリダカールにも参加した経歴がある。
在志野 元康 【アリシノ モトヤス】
世羅浜家に仕える使用人。執事長。一見品の良いロマンスグレーだが、きらりと光る細長眼鏡から覗く眼光には、何者も逆らえない迫力がある。雪乃と共にやってきた智哉に、何かと怖いツッコミを入れ智哉の恐怖を誘う。幼い頃から雪乃、朋夜兄妹を世話してきて、家にいることが少ない父親に変わって、2人の父親代わりを勤めてきた経緯もあってか、智哉が雪乃の『想い人』と感じ、何かにつけて智哉を吟味しようとする。雪乃曰く『気に入られている』とのことだが、どう考えても嫌われているとしか思えないプレッシャーを感じ、智哉にとっては超苦手な人でしかない。
世羅浜 朋夜 【セラハマ トモヤ】(鬼丸)
かつて、シャドウやサムが在籍していたチーム『ヨルムンガムド』のリーダー。Lv40を超える最強魔法剣士で伝説の『太刀使い』鬼丸のプレイヤー。智哉を『仲間』と呼び、リアル、バーチャルひっくるめても友達の居ない智哉自身『友』と慕った人物。『ヨルムンガムド』の解散を期に、その愛刀『童子切り安綱』をシャドウに託し行方不明になる。
本編では超重要キャラだが、今回は名前程度しか出てこない。現実では1年半前に死亡している。
屋敷戸 拓也【ヤシキド タクヤ】(オウル)
秋葉原のゲーム・フィギアショップ『耳屋』の角野卓造似の店主でセラフィンゲインの古参のプレイヤー。シャドウと同じ傭兵で職業はドンちゃんことマチルダと同じくガンナーのオウルのプレイヤー。かなりの情報通で色々な方面に不思議なパイプを持ち、時々智哉に情報や助言を与える。智哉にセラフィンゲインの存在や傭兵に誘ったのもこの人。智哉の過去やかつての『鬼丸』を知る数少ない存在。
本編で『耳屋』以外でも、実はとても重要な場面で本名で登場している。本編でそれに気が付いた人が果たして何人いるかな? つーか気が付いた人は凄い! そう、彼は○○なんですよ♪
~プロローグ~
「またね…… 智哉君」
私は見えるはずのない目で、座席の横にある窓の方を見てそう呟いた。
私を乗せた飛行機はゆっくりと旋回しながら高度を上げていった。
さようなら…… 楽しい日々……
私は心の中で、大変だったけど思い出に残る楽しかった時間と、その思い出を一緒に過ごした仲間達に別れを告げた。
「智哉君…… それはどなたですか? 雪乃様」
不意に隣の座席に座っていた私のお世話係、疾手美由紀がそう質問した。私はクスっと自分に笑いながら答えた。
「カゲチカ君です。本当は景浦 智哉【カゲウラ トモチカ】って言うんですって。マリアが縮めてそう呼んでいただけ。私はてっきり下の名前なんだと思って呼んでいたんです」
「まあ? マリア様もお人が悪い……」
美由紀は呆れたようにそう言った。
「うふふ、ほんとにね…… でも、そんなに悪いことばかりじゃなかったわ。だって彼をそう呼べるのは、私とマリアだけ…… 私は最初から彼をそう呼べたのだから」
私はそう言って笑った。また会えたら、またそう呼んでみよう。今度は確信犯で。マリアに負けないくらい気持ちを込めて……
私は心の中でそう誓った。
「さあ、雪乃様。到着まではまだまだ時間があります。昨日はあまりお休みになっておられませんから、少しお休みになられてはいかがですか?」
そうね…… 向こうに着いたら色々忙しくなるから、今の内に休もうかな。思い出に浸りながら眠るのも悪くは無いかも……
「そうします」
私は美由紀にそう答えて、ポケットからIpodのイヤホンを取り出し、耳にはめた。そして再生ボタンを押すと、曲が流れてきた。
初めに流れてくるギターのソロパートに、私は心を委ねた。
ああ、懐かしい…… それほどたってはいないのに、何故か遠い昔の事のよう……
そう思ったとたん、私はクスっと思い出し笑いをした。
「? 何を笑っておられるのですか?」
私の思い出し笑いに気づいたようで、美由紀がそう聞いてきた。私は「これですよ」と片方のイヤホンを美由紀に渡した。私の手から片方のイヤホンを受け取った美由紀は、すぐに納得がいったように答えた。
「ああ、この曲ですか…… 良い思い出ですね」
そう言って美由紀も笑った。
そう…… 本当に良い思い出……
ギターソロにやがてキーボードの音が重なり、リズムカルなドラムの音と、それを支えるベースの音が続く。そして、あの透き通るような透明感と彼女らしい力強さが合わさった歌声が流れてきた。
♪ ♪ ♪ ♪
あなたの耳に届く私の声は現実【ホンモノ】?
あなたの瞳に映る私は虚構【ニセモノ】?
きっとそれはどっちでも良いんだよね?
だって私たちはもう違う道を歩んでいるんだもの……
あなたが私にくれた言葉は真実【ホント】?
あなたが私の心を包んでくれたのは幻【ウソ】?
でも今ではそれを確かめる手段を忘れちゃったよ
だって私たちはもうあのころの2人じゃないから……
でもね……だけどね……
私があなたを見ていたのは紛れもなく現実なんだよ?
私があなたを想ってたのは幻なんかじゃないんだよ?
あの世界ではいつもあなたは輝いて
あのころの私には怖い物なんか1つも無くて
背中には羽があって
空は2人の物で
周りには光があふれてて……
きっと、絶対、本当に、あなたを想ってた
It is my desire of the real thing!
それだけは本当よAngel's desire!
あなたから伝わるぬくもりは現実【ホンモノ】?
あなたがあの日見せた涙は虚構【ニセモノ】?
きっとそれもいつかは薄れてなくなっちゃうんだよね?
だって私たちはもう会わなくなるんだもの……
でもね……だけどね……
私があなたを忘れたくないって思ってたの知ってた?
私があなたに見た夢を今でも持ってること知ってた?
あの世界ではいつもあなたは前を見てて
あのころの私はあなたの手を強く握ってて
あそこには天使がいて
風は2人に暖かく
目の前には未来があって……
きっと、絶対、本当に、あなたを好きだった
It is my desire of the real thing!
それだけは忘れないでAngel's desire!
そんな嘘はつかないで、あなたじゃないみたい
大丈夫、私は覚悟してるよ
だから、だから、前だけ向いて、振り向かないで
最後の最後の最後まで、夢見た私の騎士でいて……
きっと、絶対、本当に、あなたを好きだった
もっと、絶対、本当は、あなたを好きでいたかった
It is my desire of the real thing!
それだけは嘘じゃないよAngel's desire……
♪ ♪ ♪ ♪
心地よいギターのソロパートを聞きながら、私は眠りに落ちていく。
本当に大変だったけど、本当に素敵だったあの時を思い出しながら……
プロローグと第1話を同時に投稿したので、あとがきと次回予告はそちらにします。
あ、そうそう、このプロローグの最初に、雪乃が智哉の本名を知っていたり、マリアのことを呼び捨てにしている部分で、前作の投稿分のみを読んでくださった方には違和感があるかもしれません。これは前作のラストシーンでカットした部分で出てくる話で、私の個人ブログにアンサーストーリーとして『ライバル【好敵手】』というタイトルでUPしてあります。興味のある方は覗いてみてください。
http://blogs.yahoo.co.jp/hasamiya8338mk/
4月26日 登場人物紹介を追記